第39話 夕食はゆう子にお任せ
「あ、あれ? どうやれば鳴りますの? 難しいですわ!」
困惑するセリーヌの眼前に、風が渦巻く。
それはやがて小さな嵐となり、竜巻のように落ち葉などを巻き込み始める。
「セリーヌっ……様!」
「セリナ何やるつもりや! 危のうてしゃあないやろ」
セリーヌの謎行動に、心配の声を上げるコーデリアとゆう子。だがセリーヌは、あくまでも落ち着いて返事をする。
「大丈夫ですわ。きっとすぐにわかりますわ」
徐々に落ち着いていく嵐の中に、黄色いほのかな光が現れる。
そしてそれは塵が鎮まるにつれ、はっきりと姿を現した。
「あれは……あの時の!」
コーデリアが警戒する。そこに、緊張の欠片もない声が降ってきた。
「あんたらわしの話しとったんか。わしのこと、何やと思とんのや」
ゆう子の分身……ではなく、侵略に失敗した宇宙人。セリーヌは、自慢げに指差した。
「おば宙人を呼べば、無敵ですのよ!」
「なんやおばばと宇宙人ぐちゃまぜにしおって」
「おば……?」
さすがの宇宙人も、その命名は予想外だ。
「それで……。セリーヌ様は、おば宙人を呼んでどうなさいますの?」
「もちろん、あそこにいる方々と対戦させるのですわ」
「えっ……」
「オーウ! ユーフォー!」
外国人たちも、おば宙人とその所有のUFOに気が付き、スマホを向ける。竹林は少し暗いようで、いちいち焚かれるフラッシュに、セリーヌのやる気は最高値に到達した。
「行くのですわおば宙人!」
「ええぇなんでわしが行くねえぇぇぇん!」
そう言いながらもセリーヌに背中を半ば突き飛ばすように押されたおば宙人は、反動で二、三歩外国人たちに近寄る。
「あぁっ……!」
そしてよほど焦ったのか、ゆう子擬態がぽんと音を立てて解けた。
「ワッツ……?」
「おぉぉおお! この擬態疲れ☆#a@¥¥¥! ×△%?*□&○×@!」
目の前で姿を変え、不可解な言葉で喚くおば宙人を前に、外国人二人はみるみる青ざめた。
「オーウ……。イッツ……クレイジー……」
「セリナ」
ふふんと楽しげに見守るセリーヌに、ゆう子が呼びかける。
「帰り道教えな、そこの二人逃げられへんやろ」
もっともな指摘だ。しかしセリーヌは、首を横に振った。
「おば宙人に街まで送るように、頼んでありますわ」
「さすがセリーヌ様ですわ! なんちゃないような余裕が素敵ですわ!」
「あんたさん……それでええんか?」
褒めちぎるコーデリアと、ドン引きのゆう子。
そしてゆう子の心配した通り、外国人たちはおば宙人に捕まり、有無を言わせずUFOに連れて行かれ、泣き喚きながら去っていった。
「セリナ……コデリカ……。あんたさんたち心強すぎて、今の日本によう合わんやろ……」
ため息を吐くゆう子に、きょとんとするセリーヌ。
「心に強い弱いがあるんですの? わたくしはおばば様より強いんですの?」
「わたくしも、セリーヌ様のお役に立てるように、よーさん鍛えますわ、心も体も!」
「もうええわ……。セリナがここ涼しいかも言うたから来たんや。暑いやろ、はよ帰るで」
ぞろぞろと家に向かう。セリーヌは、蚊に刺された痒みも忘れていた。
「おばば様、夜ご飯なんですの?」
「あんたさん腹いっぱいになったら何でもええやろ。いちいち聞かんでもええやん」




