第38話 不法侵入者たち
「ワーオ! イッツジャパニーズバンブー! 『タケ』ビューティフォー!」
「な、なんですの……?」
竹をかき分けて行った先にいたのは、セリーヌのような綺麗な金髪に青い目の女性二人。
肩の出た服を着て、よくわからない言葉を興奮気味に交わしながら、竹を見つめている。
「コーデリア様、わたくしにはわかりますわ。あの方々が手にしているのは、『スマホ』というすごい装置ですわ」
「すまほ……? そないなもの、聞いたこともございませんわ」
「それに、何を言っているのかまるでわかりませんわ……!」
その時、喋り声に反応して侵入者たちは振り向いた。ゆう子を見て興奮して喋るも、ゆう子と言葉を交わすセリーヌたちを見て、表情は困惑気味になる。
「オーゥ! イッツ、ジャパニーズ……ピーポー…………?」
「外国人やったんか。えらい珍しいもんに遭遇したな」
「おばば様の知り合いでしたの? 何言ってるかわからないですわ!」
「いや、外国人に知り合いはおらんで」
セリーヌの問いにさらりと答えるゆう子。セリーヌは近くに転がった竹の枯れ枝を手に取った。数年前、多くのモウソウチクが寿命を迎えた。もちろんここの竹も枯れたので、枯れた竹がたくさん転がっているのだ。放置竹林だと危ないが、幸いにもここはゆう子たちが適度に手入れをしているので、セリーヌの手にあるのも程よい長さの竹だ。
説明が長くなったが、セリーヌは無言で竹を両手で構え、目の前に立ち尽くしていたコーデリアを軽く押し除けた。
「知らない人にはこうですわああああぁぁぁぁ!」
右手を竹ごと大きく振りかぶり、風を切って。
「アウチ! オーマイガー!」
「ワットドゥーユーミーン!」
外国人女性の一人の頭をすいか割りよりも軽く叩いた。唖然とするコーデリアとゆう子、対する外国人たちは軽くパニック状態である。
「……やっぱり、何を言っているかわかりませんわ。これだと出て行ってもらえませんの」
「セリーヌ様、叩かなくても良かったのではありませんの?」
セリーヌは考えた。スマホで彼女たちがヒロインとイケメン主人公よろしくツーショットをしているのが気に入らなかった。だからって確かに、やり過ぎだったかもしれない。
「オーゥ! イッツジャパニーズグランドマザー!」
セリーヌは、その甲高い声がかなり気に入らなかった。
「コーデリア様、これは正しい対応ですわ。お二人にはお帰りいただかないと、この大事な竹林がだめになってしまいますわ」
「そうは言っても……。言葉がわからない以上、どうしたらわかっていただけるのでしょうか? そもそも暴力はいけませんわ」
コーデリアにとって、これは難問だった。無意識に梅干しを食べたような顔になるコーデリアを、ゆう子は見守る。
「大丈夫ですわ! わたくしには『奥義』がありますの」
コーデリアがひとつ思いつく間もなく、セリーヌが自信満々に告げる。
「『あれ』を呼びますわ」
そう言ったセリーヌはひとつ、下手くそな口笛を吹いた。
「あ、あれ? どうやれば鳴りますの? 難しいですわ!」
困惑するセリーヌの目の前に、突如風が巻き起こった。




