第35話 お手伝い
まずは空っぽの瓶をひとつだけ用意する。今温めているお湯が沸いたら、そこに入れて煮沸消毒するのだ。
そしてお湯が沸くのを待っている間に実をざるへ入れて洗う。セリーヌがじゃりじゃりするといっていたとおり、細かい砂が沈んでいる。水を入れ替えて、もう一度洗っておく。
「おばば様、ここにいたんですの。……その実で何か作るんですの?」
「なんかや」
「何ですの?」
「色々作るんや。やからもっと実ぃ持ってき」
セリーヌには、少し大きめのボウルを渡しておいた。
「わかりましたわ、溢れるくらい持ってきますわ!」
ゆう子は、ざぶざぶ実を洗い続けた。
「おばば様! もうそんなに残っていませんでしたわ!」
一時間ほどして、やっとセリーヌが帰ってきた。
「なんや、ようけ時間かけて何やってたんや」
「まだ水遣りが終わっておりませんでしたの。トマトもトウモロコシもナスもししとうも、ぐったりしておりましたわ」
「もう夕方やで……? あんたさんもっと早うせんかい」
「たっぷりかけたので、大丈夫ですわ!」
今更水をやったって、午前中にしないと意味がないだろう。それとも、幾許かましになるのだろうか? 考えたところでもう手遅れな気もして、ゆう子は考えるのをやめた。
「……ところで、これは何ですの?」
「ああそれか、それはな」
セリーヌの目線の先には、コップがある。そしてその中には、明るい赤色の液体が入っているのだ。
ゆう子は答えかけて、笑った。コップを差し出す。
「不味くないから、いっぺん飲んでみ」
「でもそれでさっき、不味かったですわ……。わたくしだって学びますわ!」
あれは砂が残った実を食べたからというのもあるだろう。
「これは味見しとうから大丈夫なんや」
「おばば様が、そこまで言うなら……」
そろりとセリーヌはコップに手を伸ばし、口に含んだ。
「…………なんですの? これは」
かっと、目を見開いた。
「美味しいですわあぁぁぁああ⁉︎」
ヤマモモの酸っぱさに砂糖の甘さが加わり、さらに炭酸割りをすることでしゅわしゅわも加わり、セリーヌにとって新鮮な感覚になったのだ。
「それな、ヤマモモの実でジュースを作ったんや。美味いやろ」
「わたくしが採ってきた実で、もっといっぱい作るんですの?」
セリーヌはこのジュースが気に入ったらしい。
「それでもええで。そんでな、その残りかすで、ジャムも作れるんや」
「ジャム……。あれも、やはり作るものなんですの」
お嬢様だったせいで、ジャムを作るという発想はなかったのだ。
「当たり前やん。あんたさんも手伝って……いや、やっぱええわ」
「わ、わたくしも言われなくても手伝いましてよ!」
「ええんや、あんたさんがやるとなんか食器とか割りそうや」
軽く手を払うゆう子に、セリーヌは頬を膨らませた。
「わたくしだって、少しくらいなにか出来ますわ。そこまで役立たずじゃなくってよ」
「もうええからそれ飲んで待っとき」
「わたくしだって、たまには役に立ちたいですわ……」
「何もせんのが一番ええんや、あんたさんは」
セリーヌは、台所から押し出された。そして一分も経たずに、ジュースのおかわりをねだりに戻ってきた。




