表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
35/42

第35話 お手伝い




 まずは空っぽの瓶をひとつだけ用意する。今温めているお湯が沸いたら、そこに入れて煮沸消毒するのだ。

 そしてお湯が沸くのを待っている間に実をざるへ入れて洗う。セリーヌがじゃりじゃりするといっていたとおり、細かい砂が沈んでいる。水を入れ替えて、もう一度洗っておく。

「おばば様、ここにいたんですの。……その実で何か作るんですの?」

「なんかや」

「何ですの?」

「色々作るんや。やからもっと実ぃ持ってき」

 セリーヌには、少し大きめのボウルを渡しておいた。

「わかりましたわ、溢れるくらい持ってきますわ!」

 ゆう子は、ざぶざぶ実を洗い続けた。


「おばば様! もうそんなに残っていませんでしたわ!」

 一時間ほどして、やっとセリーヌが帰ってきた。

「なんや、ようけ時間かけて何やってたんや」

「まだ水遣りが終わっておりませんでしたの。トマトもトウモロコシもナスもししとうも、ぐったりしておりましたわ」

「もう夕方やで……? あんたさんもっとはようせんかい」

「たっぷりかけたので、大丈夫ですわ!」

 今更水をやったって、午前中にしないと意味がないだろう。それとも、幾許かましになるのだろうか? 考えたところでもう手遅れな気もして、ゆう子は考えるのをやめた。

「……ところで、これは何ですの?」

「ああそれか、それはな」

 セリーヌの目線の先には、コップがある。そしてその中には、明るい赤色の液体が入っているのだ。

 ゆう子は答えかけて、笑った。コップを差し出す。

「不味くないから、いっぺん飲んでみ」

「でもそれでさっき、不味かったですわ……。わたくしだって学びますわ!」

 あれは砂が残った実を食べたからというのもあるだろう。

「これは味見しとうから大丈夫なんや」

「おばば様が、そこまで言うなら……」

 そろりとセリーヌはコップに手を伸ばし、口に含んだ。

「…………なんですの? これは」

 かっと、目を見開いた。

「美味しいですわあぁぁぁああ⁉︎」

 ヤマモモの酸っぱさに砂糖の甘さが加わり、さらに炭酸割りをすることでしゅわしゅわも加わり、セリーヌにとって新鮮な感覚になったのだ。

「それな、ヤマモモの実でジュースを作ったんや。美味いやろ」

「わたくしが採ってきた実で、もっといっぱい作るんですの?」

 セリーヌはこのジュースが気に入ったらしい。

「それでもええで。そんでな、その残りかすで、ジャムも作れるんや」

「ジャム……。あれも、やはり作るものなんですの」

 お嬢様だったせいで、ジャムを作るという発想はなかったのだ。

「当たり前やん。あんたさんも手伝って……いや、やっぱええわ」

「わ、わたくしも言われなくても手伝いましてよ!」

「ええんや、あんたさんがやるとなんか食器とか割りそうや」

 軽く手を払うゆう子に、セリーヌは頬を膨らませた。

「わたくしだって、少しくらいなにか出来ますわ。そこまで役立たずじゃなくってよ」

「もうええからそれ飲んで待っとき」

「わたくしだって、たまには役に立ちたいですわ……」

「何もせんのが一番ええんや、あんたさんは」

 セリーヌは、台所から押し出された。そして一分も経たずに、ジュースのおかわりをねだりに戻ってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ