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第30話 UMAの実力



「はああぁ……」

「もっときびきび動かんかい」

 壊れたラジオの部品や布の端切れ、和菓子の楊枝を綺麗に洗ったものなどがごちゃごちゃと入った袋を、セリーヌは部屋から引きずり出してきた。キヨ子さんの車を借りてゴミ出しをすることになっているので、玄関から少し離れた車まで袋を持っていかなければならない。

 コレクションがおばばにばれてしまったため、おばばの監視のもと、全て捨てることになったのだ。

 隙あらば袋をすり替えようとゆう子を盗み見るも、歴戦のゆう子に隙などない。

「おっ、ばば様! ゆ、UFOがあんなところに!」

「見えもせんもん言うたって意味ないで。ほんまにUFO来たらどうするんや」

「くっ……ばれてますわね」

 セリーヌを見下ろすゆう子だったが、ふとコーデリアを呼んだ。

「コデリカ、ちょっと来んかい」

「コーデリア、ただいま参りましたわ」

 素早くおばばにカーテシーをするコーデリアは、やはり貴族の令嬢だ。

「セリナを見とってくれんか。便所行きたいわ」

「わかりましたわ、おばば様」

 セリーヌは目を光らせる。千載一遇のチャンス、到来。

「コーデリア様、わたくしの手伝いをしてくださらない?」

「……申し訳ありませんが、わたくしおばば様にセリーヌ様ががらくた? を隠したりしないよう、見張りを頼まれていますわ」

 セリーヌは青ざめた。なぜ、コーデリアは手伝ってくれないのか。

「わ、わたくしの手伝いをしたら、今日おばば様からもらう報酬のお菓子、全部コーデリア様にあげますわ」

「悲しいですが、わたくしはおばば様から報酬できのことたけのこのお菓子をもらいますわ。リスクを考えると、こちらが安全ですの」

 コーデリアがおばばに買収されていたとは。セリーヌは悔しげに唇を噛み締めた。が。

「あんたら無駄口叩かんと、はよやらんかい」

「おばば……様?」

 最初に気が付いたのはセリーヌだった。コーデリアの後ろに、おばばがいる。トイレから戻るには、少し早いような。

「あんたがようけ溜め込むからこんなことせなあかんのや。無駄な時間作らんとってほしいわ」

「……セリーヌ様? どうされましたの? おばば様が待っておられますわ」

 ゴミ袋を地面に置いて、セリーヌはゆう子を見つめていた。コーデリアに話しかけられたのに、反応すらしない。

「セリーヌ様……?」

「……っ!」

 突如、セリーヌはゆう子の胸元めがけて拳を突き込んだ。

「なんやセリナ、急に暴力とか危なすぎてしゃあないわ」

 急襲にもかかわらず、ゆう子は身軽に躱し、拳はただ空を切っただけだった。

「…………コーデリア様、先に戻っていてほしいですわ」

「セリーヌ様? わたくしはセリーヌ様を見張らないといけないですわ! あ、でもおばば様がいるからべっちょないんですわね? わかりましたわ!」

 少しだけ戸惑ったが納得したコーデリアは家に戻った。ややあって悲鳴と共にコーデリアが飛び出してくる。先読みしていたセリーヌは、その間何もせずに玄関を見ていただけであった。

「せせせセリーヌ様? おばば様が廊下におられますわ?」

 にこりと笑い、セリーヌは応える。

「コーデリア様、その通りですわ」

「じゃ、じゃあそこのおばば様は? どちらが本物ですの?」

「家の中にいる方ですわ」

「コデリカとセリナ、何言うとんねん。わしが本物に決まっとるやろ」

 セリーヌが偽者と示したほうのおばばが、慌てたように主張した。

「何ぞい。二人もおるとやかましくてかなわんな」

 するとそこに、本物らしいおばばが顔を出した。

「セリーヌ様? わたくしにはどちらもおばば様にしか見えませんわ!」

「そっくりさんでも連れてきたんか、セリナ」

 本物が偽者に気付き、じっくり眺めてからセリーヌに問う。コーデリアはもう完全に追いつけていない。

「コーデリア様、よく聞いてくださいまし。そもそもおばば様は、わたくしたちのことを『あんた』ではなく『あんたさん』と呼びますわ」

「……! 確かにそうでしたわ!」

「そ……それは、それはたまたま間違えただけや」

 偽者のおばばの目が泳いでいる。本物おばばは観戦するつもりのようだ。口を挟まないでいてくれるので、セリーヌは畳み掛けた。

「おばば様の一人称は『わたし』ですわ。そして二人いる時は名前ではなく『二人とも』と呼びかけることが多いですわ」

「そない言われても……。覚えとらんわ」

「そしておばば様はこういう時間を無駄だと言いつつも、なんだかんだ楽しそうにしているのですわ。本当に嫌そうに振る舞うのは本物ではありませんの」

「…………っ」

 逃げ場もなく、言い逃れも出来ないと悟った偽者は、みるみるうちに本来の姿を現した。

 グレーの肌、凹凸の乏しい顔、大きくて瞼のない目。

「これって……。本に載っていた宇宙人ではありませんの?」

「くそっ……! 小娘をひとりにさせて攫うつもりが! なんなんだここの女たちー!」

 宇宙人は鋭く口笛を吹き、頭上すれすれに飛んできたUFOに飛び乗り、去っていった。

「……ほら、あんたさんが言うから来てもたんや、UFOが」

「本当に来るとは思わなかったんですのよ」

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