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第24話 台所わちゃわちゃ



「コーデリア様の魔素虫は、まだ大丈夫ですの?」

「わたくしの魔素虫ですの? ふふん、私はですね、女神様から反対されたので、魔素虫は置いてきたのですわ!」

 セリーヌは驚いた。まさか、女神に先回りされていたとは。

「それならわたくしの魔素虫も帰してくれてもよかったですわ、女神様」

「きっとセリーヌ様の魔素虫は、手遅れだったのではありませんの?」

「そうかもしれませんわ……!」

 話していると、ゆう子が顔を出した。

「コデリカ、油売っとらんとこっち来んかい」

 コーデリアは首を傾げる。

「アブラウットラント? とはどういう意味ですの?」

「無駄話で盛り上がるっちゅうことや」

「アブラウットラントするなということですの?」

 おばばはひとつ小さなため息をついて、引っ込んだ。戻ってきた時には、紙とペンを持っている。

「アブラウットラントじゃのうて、油を売るっちゅう言い方や。こう書くんや」

 さらさらと紙に書きつけて、ふたりに見せた。

「おばば様……」

「なんや、セリナ」

「これ、全く読めませんわ……」

 複雑な線の塊にしか見えないほど、おばばは字が汚かったのである。

「まあええやろ。コデリカ、はよ台所行かんかい」

「わかりましたわ」

 ぞろぞろと、三人が台所へ向かった。


「ちょ、セリナ、あんたさんは向こうで待っとかんかい!」

「わたくしも手伝わなくては、ただご飯を食べる人になってしまいますの」

「それはあんたさんの都合やろ。こんなとこに三人もおったらよう動けんわ」

「セリーヌ様! わたくしそこにあるはかりを使いたいですわ」

「どれですの? これ、ですの?」

「それはざるでございますわ!」

「セリナ邪魔やから、向こう行って欲しいんや」

 わいわい言い合っていると、何かが割れる音がする。

「痛っ! 何かが足に……!」

「コデリカ、皿が割れたんや。セリナ! あんたさんがそこにおるから皿に手が当たったんやろが、はよどかんかい!」

「わ、わたくしですの……?」

「見たで、そんなとこでようけ手ぇふりふりしとうから、棚に手が当たっとったわ。コデリカ、手当てするから立つんや」

 三人はわいわい騒がしく台所を出る。最初に出てきたセリーヌが、振り返ってはたと気付いた。

「おばば様、フライパンが熱されたままですわ。大丈夫なんですの?」 

 ゆう子は油を引いて温めていたフライパンがそのままだったと思い出す。

「セリナ、ちょっとでええからフライパン見といてか……あー……」

 待て。セリーヌに見といてと言えば、本当に眺めるだけになりそうだ。ここはコーデリアに……いや、コーデリアが怪我しているから台所を出たのであって、そもそも台所には割れた皿の破片も落ちていて。

「セリナ待ち。フライパンはやるから、セリナはコデリカを」

「痛ぁっ! おばば様、いま、わたくし、フライパンをっ!」

「もうええから何もすな!」

 破片を処理しないと、自分も踏んでしまいそうだ。いやしかし、セリーヌはそのままさらに歩きかねない。コーデリアも痛がっている。どれからするか。

 その時、弱々しい声が傍から上がった。

「おばば、様……。わたくしは自分で破片を抜けますわ。セリーヌ様の傷の手当てを優先してくださいませ」

 なんと……コーデリアは、気を利かせられるいい娘ではないか。

「おばば様、痛いですわ」

「セリナ……! もう台所に入るんちゃうわ!」

 コーデリアとあまりにも差のありすぎるセリーヌに、ゆう子の怒りは爆発した。

 こうして無事、セリーヌとコーデリアの傷は手当てされ、割れた皿も片付けることができたのだった。

 しかしこれにより、夕食は三十分遅れてしまい、セリーヌはこっぴどくゆう子に叱られた。

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