第11話 セリーヌとみどり
「——セリナ、こどもの日言うん知ってっか?」
おはぎ、草大福、プリンを爆食した翌日。セリーヌは唐突な問いかけにきょとんとした。
「こどもの日? なんですの?」
「こどもの日言うんはな、子どもの成長を祈って兜とか飾るやつや。そんでな、子どもはちまきをたべ」
「なんですの? 食べ物ですの?」
セリーヌは、兜の意味もわからないどころか、おばばの説明の「ちまき」のところしか聞いていなかった。
「せやけど、昨日のツケ払ってもらわんとなあ?」
「くっ……! なんなんですのこのおばば様、手強いですわ……!」
「そんなん前からやったやろ」
手をわきわきしながら悔しがるセリーヌに、ゆう子は冷静に返す。
かくして、セリーヌの報酬を得るための戦いが幕を開けた。
「おばば様ぁ! この木ぐにょんぐにょんですわ?」
「そりゃ松の芽や。みどりって言うてな、それ摘まな見映え悪なるんや」
ゆう子の家は、昔ながらの家だ。門の上に松が被さり、和の雰囲気を醸している。
そしてセリーヌは、高い梯子の上でヘルメットをし、松に向かっている。
「教えたやろ? ちゃんと摘まな汚のうなんで」
「そんなっ……無理ですわぁ!」
「ちまき」
「や……やりますのよ!」
おばばはなぜ自分でやらないのか? そんな問いが脳裏によぎるが、それを聞いて、もしおばばが自分でやると言ってしまえば、セリーヌの仕事がなくなり、ちまきが手に入らない。セリーヌはそれを危惧して口に出さなかった。
「あいたっ! な、なんなんですの……。殺意剥き出しの木ですわね」
「ケムシには気いつけや」
「ひえぇっ! けけけけ、毛虫がいるんですの?」
「おったらハサミでちょんぎったればええやろ。ハサミちゃんと渡したで」
「ここ怖いですわ……!」
「じゃあもう」
「でもやりますのよっ!」
おばばの言葉を遮り、セリーヌは気合いを入れる。ところがその直後。
「ひえぇぇぇぉわあああ? は、ハチ! ハチですわ!」
みどりを一本ちぎったところで、セリーヌは梯子にうずくまった。耳の横を通り過ぎる羽音は、恐怖の対象だ。
「気にせんかったら刺されへんから、はよやりんか」
「でもでも! 怖いですわよ? おばば様は怖くなくても、わたくしは怖いんですのよ!」
「刺されてもすぐ死ぬわけちゃうで」
「もうおばば様がやればいいんですのよ!」
思わず出た言葉に、セリーヌははっと口をつぐんだ。
「言ったな?」
「これはちちちちちち違うんですの……! わたくしの仕事は、いかなるときも譲りませんわよ!」
「じゃあ座ってないでやりんかい」
「やりま」
タイミングよく、再びハチが通過する。
「ひゃあああ! ややややりまやりま」
「何言うとんねん」
「や、やりますわああぁ!」
セリーヌは散々叫んでおばばの家事の手を止めつつも、なんとか達成した。




