[これまでの登場人物まとめ]
聖カレリア学園襲撃事件:第14教室の生存記録
ジャンニ・ディシコ
第14教室を受け持つ、二十八歳の若さで「天才」の名をほしいままにする魔術教師。スラムの過酷な環境で生き抜くために無意識に行使していた魔術の才をディシコ家当主に見出され、当時家族同然に過ごしていた孤児の仲間たち八人の保護と平穏な暮らしを条件に、同家の養子となる道を選んだ。当初は「屠殺される豚」のような絶望的な心地で門を叩いたものの、意外にも健全で陽気な家風であったディシコ家で愛情深く育てられ、その稀類なる才能を健やかに開花させた。かつて彼が命を懸けて守った仲間たちは、今や街でそれぞれの家庭や職を得て自立しており、ジャンニは教師となった今も、彼らとの温かな交流を何よりも大切にしている。
モニカ
かつては大人しく引っ込み思案な平民出身の目立たない少女であったが、その内側には、窮地に立たされた瞬間にこそ真価を発揮する強固な意志と勇気を秘めていた。現在は冒険者ギルドの受付嬢として勤務しており、その凛とした佇まいは街の荒くれ者たちを惹きつけてやまない。日々寄せられる無骨な男たちからの勘違いじみたアプローチも、持ち前の聡明さとスマートな身のこなしで完璧に受け流す「ギルドの看板レディ」として、多忙ながらも充実した日々を送っている。
エンニオ・シャンドリ
シャンドリ伯爵家の第六子。かつては平民に対して極めて傲慢な振る舞いを崩さず、強い選民意識を隠そうともしない少年であったが、その刺々しい態度は「常に勝者であれ」という苛烈な家訓に押し潰されぬよう必死に身を守るための盾でもあった。しかし、学園が未曾有の危機に晒された際、恐怖に震える仲間たちを前にして、家訓の根底にある真意が「力を持つ者こそ、弱きを助ける者と成れ」という高潔な騎士道精神であったことを理解する。自ら先頭に立って学友たちを鼓舞し、彼らを絶望の淵から救い出した。現在は騎士団に身を置き、平民も貴族も関係なく高め合える仲間たちと共に、誇り高き近衛兵を目指して日々熱き鍛錬に励んでいる。
聖カレリア学園襲撃事件:実験棟における「魔物博士」の行動記録
エディ
学生時代から魔物に対する異常な執着を抱き、法や倫理を嘲笑う狂気の改造魔術によって、若くして国境を越えた悪名を轟かせた「魔物博士」。分厚い眼鏡の奥で常に微笑を浮かべているような小柄な少年だが、その本質は「天才とは頭のネジが抜けているほど完成されている」という言説を体現する混沌そのものである。かつて、己の欲望の集大成として「エロトラップダンジョン」の造営を試み、完成間近まで漕ぎ着けた。しかし、年の離れた妹が誕生した瞬間、「うちの子がミリでも被害に遭う可能性を考えたら気が狂っちゃう。何これキショすぎる誰だよこんなの作ったやつ……」と、それまでの全研究成果を迷わず焼却処分した。現在、最愛の妹を溺愛している時だけは辛うじて「まともな人間」の皮を被っているように見えるが、彼に関わった者の運命が良くも悪くも激変することに変わりはない。
ロッサノ・ロポポロ
子爵家の十四男として生を受けた、獣人の系譜を引く青年。大家族の末っ子として愛されて育ったが、種族特有の極めて鋭敏な聴覚を持ち、過度な音圧に晒されると気絶してしまうという繊細な体質の持ち主でもある。魔物の中でも特に植物系に深い愛着を抱き、かつては危険視されていたマンドラゴラの安全な量産・品種改良に心血を注いできた。十年後の現在、成果は凄まじく、今やマンドラゴラが一般家庭の冷蔵庫に欠かせない食材として普及しているのは、ひとえに「ロッサノ博士」の執念の賜物である。学生時代から先輩後輩の間柄であったエディとは、いつの間にか彼の助手のような立ち位置に収まっており、狂気的な暴走を唯一制御できる希少な人物として、軍や研究機関など多方面から絶大な信頼(と切実な期待と懇願)を寄せられている。
聖カレリア学園襲撃事件:裏庭の三人組の奮闘
カミル
座学では優秀な成績を収めながら、召喚術においては実体の伴わない「ハリボテ」しか呼び出せない少年時代を過ごした。卒業後、その明るく誠実な人柄をジャスク男爵令嬢に見初められ婿入り。現在は三人の男児の父親として賑やかな家庭を築いている。かつては欠点とされた「実体のないハリボテドラゴン」も、今では愛する息子たちの安全で巨大な遊び相手として、一家の団欒に欠かせない存在となっている。
アーロン
武術においては学園でも優秀な成績を収めていたが、召喚術においては常に「見た目の愛くるしさと、内に秘めた凶悪な強さが全く噛み合わない」という特異な性質に悩まされていた少年。その性質は大人になっても変わることはなかったが、現在は航海士として世界中の荒波を越える日々の中で、自らの召喚術に独自の価値を見出している。「船の上で嵩張らないし、海賊が襲ってきても油断してくれるしで便利」と語る彼の肩には、今日も恐るべき破壊力を秘めた「可愛らしい何か」が鎮座している。
クレマンティ・ドラム
ドラム缶やドラム式洗濯機の普及で名を馳せた偉大なる発明家、スネア・ドラム氏の一人娘。学生時代は生命体を一切喚べず、無機物ばかりを呼び出す「召喚術の劣等生」と目されていたが、その本質は召喚術の常識を覆す稀代の才女であった。彼女は後に、召喚した無機物たちを独自の工学知識で組み上げ、新たな発明へと昇華させることで王国の科学技術を飛躍的に進化させた。その代表作こそ、あの日偶然から産声を上げた自動走行兵器「パンジャンドラム」である。この鉄の車輪はその後、魔族による大規模な侵攻を三度にわたって完封し、彼女の名を救国の英雄として歴史に刻ませることとなった。
聖カレリア学園襲撃事件:麗しき薔薇の乙女たち
ヴァレンティナ・サンドレッリ公爵令嬢(後のヴァレンティナ妃)
王国の至宝、あるいは神が地上に落とした「慈悲」そのもの。微笑みひとつであらゆる不浄を浄化し、荒ぶる獣さえも敬虔な子羊へと変えてしまう暴力的なまでの神々しさを湛えている。王国随一の魅了魔法の使い手であり、彼女の魅了に囚われし者は「生ける女神」を前にした恍惚と畏怖に魂を焼かれることとなる。学園襲撃事件においては、牙を剥く襲撃者たちを無慈悲な魔力の奔流で飲み込み、彼らの粗野な人格を「信仰」という名の白光で完全に漂白・再構築するという、まさに人知を超えた聖域の守護を見せつけた。現在は、かつての敵さえも狂信的な近衛兵として傅かせる、王国史上最も美しく、最も恐ろしく、そして最も愛される「王国の薔薇」として、その栄光を永遠のものとしている。昨年、第一王子を出産して以降は、溢れ出す母性の増幅とともに魅了魔法が制御不能なほどに深化。謁見した魔力耐性の低い者が、悪意なき「愛の波動」に当てられ昏倒・覚醒する事態が頻発したため、現在は魔力耐性が高い高位貴族以外の謁見が厳重に制限される「触れ得ざる聖母」となっている。しかしその慈雨の如き王妃の愛は、変わることなく王国全土に遍く届いている。
【緊急告知】『ドキュメント428 ― 聖カレリア学園攻防録』休載のお知らせ
ジジ・デ・メモラ記者
二十歳の若さで大役を任された、期待の敏腕記者。先輩たちの手厚いバックアップ(という名のリテイクの嵐)を一身に浴びながら、聖カレリア学園襲撃事件の熱狂を現代に蘇らせるべく東奔西走している。実家は由緒あるリンゴ農家だが、本人はリンゴを忌み嫌い、好物はぶどうという徹底した反抗心を見せる。都会の喧騒と複雑な人間模様をこよなく愛する一方で、静かな田舎を「前世で罪を犯した者が瞑想をするために居着く場所」と、決して書面に残してはいけない言葉で嫌悪しており、言動の端々に実家との深い確執を感じさせるが、本人は至って明るく都会派のプロフェッショナルとして生きている。趣味の人間観察が過ぎるあまり、王妃の聖域に踏み込みすぎて「魂の漂白」を経験したが、それさえも記事の糧にする不屈のジャーナリズム精神の持ち主である。
聖カレリア学園襲撃事件:闇を蹂躙せし至高の剛拳 その名はリョーオー
陵王
身長198cm、体重145kgという、そびえ立つ巨岩の如き体躯を誇る巨漢の老人。その肉体は老いてなお猛々しいマッスル。ただ佇むだけで周囲の空気を圧する。武術に関しては神域に達しているが、一方で文字を読むことができないという意外な一面を持ち、そのため自分がモデルの書籍が巷に溢れ、果ては日刊で自身の行動記録がバラ撒かれているという異常事態にも一切気づいていない。命を狙う「殺気」には針の先ほどの乱れも逃さず反応するが、純粋な敬愛や好奇心といった「悪意のない視線」には極めて疎いという、不器用な武人の気質を持つ。現在は、拳を交えた唯一無二の友人と共に、文字通りの意味で大地を揺らしながら、のんびりと温泉巡りの旅を楽しんでいる。
オッタビオ・バーナー
ストーカー気質の厄介ファンボーイに、異常な文才と「追跡」に特化した異常な魔術技能が備わってしまったがゆえに誕生した化け物。殺気以外の視線には疎いというリョーオーの唯一の隙を突き、魔導による遠隔観測と執念の尾行でその一挙手一投足を記録し続けている。彼にとってリョーオーの私生活はすべてが聖典であり、文字の読めない本人に代わってその伝説を勝手に成文化・出版し続けることが至上の喜びである。その筆致は読者を熱狂させる魔力に満ちているが、リョーオー関係の原稿を他者が書く時のリテイクに関しては対象への愛が強すぎるあまり一切の妥協を許さない、出版業界にとっても別の意味で恐れられる怪人である。
聖カレリア学園襲撃事件:時計塔の恋人
トニ・ランド
身長158cmと小柄ながら、宝石のように整った中性的な美貌で多くの女性を虜にする青年。生まれつき「魔力認知過敏症」という極めて希少な難病を抱えており、十歳までの生存率は三割以下と宣告され、幼少期のほとんどを病床で過ごした過酷な過去を持つ。病状が和らぎ始めた学生時代、あまりの恋心ゆえに「アニータの気を引きたい」という幼稚な試し行為から浮気を装う奇行を繰り返していたが、交流のあった少女たちは単に距離感の近い友人ばかりであり、その実、彼の心は常にアニータ一人のものであった。襲撃事件から十年後、医学の進歩による新薬の恩恵で病は寛解しており、現在はその美しさに落ち着きを加え、最愛の妻と共に穏やかな日々を謳歌している。
アニータ・ランド(旧姓:ウェルテナ)
175cmの長身と豊満な肢体、そして波打つ銀髪が目を引く、圧倒的な存在感を放つ女性。その魅力ゆえに彼女を求める男性は後を絶たず、誠実に断り続けた結果として泣かせた男の数は指の数では足りないほどだが、彼女の瞳には幼馴染であるトニ以外は一切映っていなかった。学生時代、トニの幼稚な試し行為に怒りを覚えつつも、彼の病弱な魂を守るために襲撃事件の混乱を「自らの怒り」として演じきり、彼の精神を崩壊から救い出すという強靭な愛の持ち主である。十年後の現在はアニータ・ランド夫人として、寛解したとはいえ未だ繊細な夫を慈しみ、その豊かな包容力で家庭を、そしてトニの人生を力強く支え続けている。




