クレーム
「メル、アイツを好き勝手にさせて良いのか?」
「どうしたんだ?ザーサ。そんなに怒って。」
メルは新しく長として建てた住居で執務をしていた。
長の住居とあって皆が張り切り、城を造った経験もあって立派な建造物が出来ていた。
土紙が村全体に広まった事によって報告が口頭ではなく、土紙での報告に切り替わった事によって円滑に業務が進む様になった。
まだ、文字は全体に広まっていないため、報告書は読める人がいる場所にのみであるが、徐々に識字率も上がってきていた。
そんな時に執務室の扉が勢いよく開いてザーサがドカドカと入ってきた。
「どうしたもこうしたもない!リビィの奴をどうにかしろ!と言っているんだ!」
「どうかしたのか?」
リビィからは逐一一方的な報告がメルが暇なタイミング(何故分かるのか?)に飛んできていた。
それからはザーサが怒る様な事は無かったはずである。
「あの野郎!また無茶な注文をしてきやがった!」
そう言ってメルの机にザーサが手に持っていた果物を叩き置いた。
何であの勢いで果物に一つも傷がついていないのか不思議でならなかった。
さすが、水産担当代表と関心していた。
この村では水産には農作も入っていたというより分かる程規模が大きくなかった。
「この果物がどうしたんだ?」
それを見たメルは見たことのない実だなと思っていた。
多分、これが昨日連絡にあった果物だろうと予想していた。
「あの野郎!この実は高い山でないと育たないから。これが採れた島まで世話にしろなんて!こっちもそんな暇じゃないんだよ!」
ザーサも美味い物が増えるのは喜ばしいことだが、こっちにも仕事があり、村の食糧事情があるんだとキレていたのである。
それに自分が尊敬して仕えているのはメルであり、リビィではない。
それなのに我が物顔で命令してくるリビィが気に入らないのである。
「リビィにも何か考えがあるんだろう。」
「メルは!アイツに甘すぎる!アイツが有能なのは私も認めている!それでも、アイツはそれを他人にも要求してくる!それが無理難題っていうんだ!」
ザーサもリビィが優秀な所は認めているが、それを他人にも強要しないでほしいと思っていた。
確かにリビィが目覚めてから群れは急速に力をつけてきた。
戦力的にも、文化的にも、技術的にも発展してきた。
「確かにリビィは自分にも他人にも高い結果を求めて努力を強要する所はある。でも、身体を壊す様な無茶はさせていないよ。」
それもまた事実だった。
身体を壊しそうな者やそれを隠して頑張ろうとする者には強制的に休ませてたりしていた。
それでもそこまでの追い込みは凄まじいものだった。
「メル、それでも、私達はあいつの言うことを聞くのはもう限界なんだ。身体じゃない心がもう限界なんだ!」
「…………」
そう訴える者はザーサだけではなかった。
元からアンチリビィの者達が他にも訴えているのである。
これでは群れが二分する様な事態になると危惧していた。
「分かった。これからは俺がリビィの提案を聞いてから。ザーサ達に命令する。勿論、無理のない範囲でだ。」
「あぁ、それで良い。…………ありがとう。」
ザーサはメルの言葉を聞くと執務室を後にした。
「…………これも予想通りか…」
メルはここまでのザーサや他の者達の話は前からリビィがメルに言っていた予想された話だった。
一言一句とは言わないが、大半の言葉がリビィの予想通りとなっていた。
メルはリビィと練った予定通りに話を進めていただけである。
「全てリビィの手の平の上だな。」
日が経つごとにリビィの空気を読む技術が高まっている事に気がついていた。
アイツの最も化け物とする点はあの読心を疑うほどの空気読みである。
それが今では未来予知に匹敵する精度に上がっていた。
「このままで良いのか………」
今のままでは自分が長になった意味があるのかとメルは常々悩んでいた。
リビィを差し置いてなったは良いが、何も成していない様な虚無感もあった。
力…欲しい?
ふとそんな緩やかな声が聞こえてきた。




