茶会
投稿が遅れてすみません。
「これが詳細な近海の地図だ。」
「流石、リビィ。仕事が早いな。」
1週間かけて作った地図は専用の器具なしの手作業で描いた筈なのに、それは前世で見た地図と遜色ない程の正確さで描かれていた。
そもそも、近海のみとはいえ1週間で書き上げるリビィの集中力と正確性がおかしいのである。
「こう見ると10年過ごしても知らない事が多いんだな。」
メルは10年過ごした近海に知らない島や食べ物があることに驚いていた。
「まぁ、言ってもたった10年だ。その内の大半がこの島の発展と基盤作りに費やしていたからな。」
ビレイは10年間を遡り、近海の調査を十分にできていなかった事を言った。
だからこそ、リビィが作った詳細な地図は一攫千金の値のものだった。
「これを使って防衛拠点と防衛システムを構築していく。」
メルが言うには人の発展は一定ではない。
何処かで革命的な発明が生まれて急速的な発展をしていく。
その為、他種族がいつ攻めて来てもおかしくない状況ではあった。
革命的な発明を促進させるものがあるこの世界ではより警戒を強める必要があるのである。
「リビィ様!ジャムが完成しました!」
防衛システムを練っているといきなりドーンと扉が勢い良く開いてマルクが大声でリビィに報告しながら入って来た。
「見てください!この艶!美味しいそうに出来ました!」
褒めて!褒めてとワンコロの様にリビィに近づくマルクを咳払いしながらメルが止めた。
「マルク、ジャムが出来て嬉しいのは分かるが今は大事な会議中だ。退室してくれ。」
「あれ?父さん、居たんですか?」
進化してからというものマルクはリビィと一緒にいるとリビィしか見えていないかの様になってしまう。(意識はリビィに集中している為、他を脳処理段階で消去しているのである。)
メルはマルクのそんな状況に実の父すら眼中に入らなくなっていることに少し寂しくなっていた。
「そうだよ。マルク、僕にも今回の成果を発表させてくれよ。」
「ハカセも来ていたのか?」
ビレイは珍しい奴がいるなとマルクに続いて入室して来た者に対して言った。
「ふふふ、僕も年がら年中研究室に篭っている訳じゃないよ。」
「津波の日にも避難を忘れて危うく壁に叩きつけられて死にそうになっていた奴とは思えない発言だな。」
ハカセは研究熱心すぎるきらいがあり、それが原因で死にかけた数も両手では収まらない程である。
「そんな事より見てくれ!この新しい土瓶を!」
土瓶とは食べ物を保管する為にメルのアイデアを元にハカセが研究、開発した瓶である。
ガラス瓶程透明度はないが、それでも従来の壺に比べれば片手サイズの小型と重さも軽減されて壺と同じ大きさにしても軽くなっているのである。
「良い時間だし、会議も一時中断して午後のティータイムにしよう。」
リビィはそう言うと席を立って茶を用意し始めた。
茶葉は海藻の中でメルが茶に似た味の出汁が出る海藻を海茶と読んで茶葉の代用品にしているのである。
「ふぅ、このジャムはお茶にも合うな。」
「だろう。今後は他の果実もジャムにして長期保存が可能だよ。毎日美味しいジャムが群れ中で食べれる日も近いよ!」
ハカセは食に関して熱烈と言うわけではない。
今回のジャムとその保存に関する開発をしたのも、今後はリビィが予算などに深く関わると確信しているための胡麻擂りである。
「そもそも、皆がリビィ様に協力的になれば群れはより大きく発展するのです。それなのにアイツらときたら!」
茶で心地良くなっている中でハカセが発展に近い発言をした事に起因してマルクが愚痴を話し始めた。
リビィ崇拝派のマルクはリビィに従わず、結果として長であるメルにも負担を敷いているリビィ否定派の連中を心の底から嫌っていた。
リビィの予想通り、群れは二分する形に近づいて来ていたのである。
中にはこの群れから離反してリビィを頂点にした新しい群れを作ろうと画策するものもいたが、それは事前にリビィがお灸を据えていた。
「そう言うな。皆、いろいろ考えがあっての事だ。その内治るさ。」
「父さんは楽観しすぎです!」
マルクを落ち着かせようメルは宥めいたが、それが逆効果となってマルクはより話し始めた。
「アイツらは父さんがリビィ様ばかりに構い勝手に奪われたと思っている連中です!」
確かにリビィ否定派にはそんな連中もいるが、それが全てではなかった。
「え?そうなの?」
この鈍感男はそんな事には一切気が付いていなかった。
てっきり躍進し続けるリビィへの嫉妬と妬みからくるものだと思っていた。
ただこれも一因ではある。
「この鈍感が……」
そんなメルの姿にリビィは呆れながらジャムを溶かした甘い茶を飲んでいた。




