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リビィクッキング〜恋を添えて〜

八月の投稿は8月3日から投稿します。

8月からは新しい作品も投稿を始めますので良かったらそちらも呼んでください。

「で、このイカで何作る気なんだ?」


「シンプルに焼くのが良い。」


「リビィ様は焼くのが好きですね。」


 夜になり、家畜用とは違う食事用に捕まえたジャックイカを調理して食べようとしていた。

 調理担当代表のメンラがリビィに微笑みながら言った。


「焼くのも良いけどまずは生で味見しないか?」


 メルの提案に応じて初めに皆で味見をすることした。

 いや、食べとけと思ってみた。


「良い弾力ですね。」


「あぁ、噛みごたえ抜群で噛めば噛むほど味が出てくるな。」


「生命力が溢れているな。胃の中で触手が踊っている感触が面白いな。」


 ジャックイカの触手は切れても数十分は動き回る生命力を持っている。

 これは触手を囮に使える様に発達した部分である。

 メル達の強力な胃液ににも負けない様にのたうち回る触手が胃で感じられてこれこそが新鮮と主張している様で面白かった。


「やっぱり、このイカはここが美味いな。」


「?リビィは何を食べているんだ?」


 メル達がイカの触手を味わっている横で、メルが何か触手とは違う白いものを齧っていた。

 ガリッ!と言う明らかに柔らかく弾力のある触手からしない咀嚼音がしていた。


「これはイカの甲だ。それをよく洗って干したものだ。」


 良い硬さにカルシウムの味が骨をより強くなる感覚がより一層甲を美味しくしていた。


「硬そうだな。」


「ジャックイカの甲はイカ界の中でも最高硬度を誇っている一つらしいからな。俺くらい歯が強くないと舐めて溶かすくらいしか出来ないな。」


 机に打ち付けてジャックイカの甲の硬さを分かりやすく示していた。

 そんな硬い物でもリビィの歯には傷が一つもついていなかった。


「この甲は煮込んで出汁を取りましょうか?」


「あまり取れそうではないがな。」


 メンラがリビィがおやつとして持ってきた大量の甲を見て、どうにかリビィが飽きないための調理法がないのかと思案し始めた。


「まぁ、甲はひとまず置いておいて今は触手だろう。さっさと焼くぞ。」


 このままでは今日の食事がイカの触手から甲の何かという自分らにとっては美味しくない食事になると思いメルは話を戻した。

 イカを焼く火は既に着けておいたので、取り敢えず串に刺して焼いてみる事にした。


「おぉ、美味い香りがするな。」


「磯香りと焼けた匂いのハーモニーが良いな。」


「此処に魚醤を垂らします。」


 この魚醤はメル達が陸に上がってすぐにメルが造りだしたものである。

 元日本人としては醤油が良いが、この島や近海の島にも大豆の様な豆が見つからなかったので、魚醤を造ったのである。

 今では数年の研究しかまだ出来ていないが、最初のものに比べたら天と地のほど味も、香りも違っていた。


「また、一段と香りが激変したな。」


「これにマヨと新しく見つかったスパイスを加えたこの特製ソースを付けてお召し上がり下さい。」


 焼けた魚醤の香りが鼻腔をくすぐった。

 皆がそっち注目がいっている内にメンラが事前に用意していたソースを出した。

 このスパイスはメルが嗅覚に特化した種で見つけた近海の島に自生していた種である。


「では、いただきます。」


 リビィは特製ソースをたっぷり付けて触手を食べた。


「ピリッとする辛味にこの電流が流れる様な刺激が魚醤のコクと合わさってまた新しい味を脳内を生み出して美味い!」


「確かに病みつきになりそうな味だな。」


「お気に召してくれた様で嬉しく思います。」


 いつも無表情で淡々と料理を作るメンラもリビィに褒められた時だけは頬を赤らめさせて嬉しそうにしていた。

 実はこのスパイスは他種からは毒として知られているのだが、メル達の強力な胃液の前ではそれも無意味だった。

 ただ多少のアドレナリンの様な脳内麻薬を強制生成させる効果が生まれるので、多量摂取は禁物である。

 その事をリビィは空気を読んで知っていたので、このスパイスは使用注意として特定の者にしか渡していなかった。


「これでは終わりません。」


「?まだ何かあるのか?」


 メルは今日の夕食はこれだなと確信していたのだが、そこにメンラかまだあるとストップをかけた。


「話の前にまずはこちらとこちらをお食べ下さい。」


 メンラが出した二皿には切られたイカの身がそれぞれを盛られていた。

 一見したら同じイカの身にしか見えなかった。


「こ、これは!」


「食感がまるで違うな。」


 一見同じイカの身は食べてみたら一目瞭然の違いが舌から伝わった。


「前にメル様が言っていた隠し包丁です。前は上手くできませんでしたが、あれから修行してここまで仕上げる事ができました。」


 感じる旨みも切り方一つでまるで違う事をしたメンラは暇さえ有れば包丁を磨いては練習していたのである。

 メルはよく石器でこんな事できるなと前世とはまるで種族的にも違う事を改めて実感した。


「よく頑張った。メンラ。」


「!私などまだまだです!いずれは最高の料理人としてリビィ様にこれがゴミに思えるほどの料理をお出ししてみせます。」


「それは楽しみだ。是非とも俺を驚かせてくれ。」


 メンラはリビィに初めて名前を呼んで褒められた事に感激して涙を流しながら誓っていた。

 そんな姿を見たメルはさっさと告白したら良いのにとメンラの恋心を知っているので、この長年の恋が報われてほしいと願っていた。

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