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話が進まない。

「了解。こちらは早速、家畜化を開始する。」


「リビィから報告?」


「あぁ、植民地化は無し、その代わり家畜化するらしい。」


「家畜化、ね。」


 メルはリビィから送られてきた音話(おんわ)と会話していた。

 音話とはリビィから一方的に送られてくる音である。こちらからは正確にどころか、自分でも解読不能な意味不明な音を垂れ流すだけだが、リビィはそれに僅かに含まれる空気を読んで返信を送って会話を成立させる遠隔対話方法である。

 相互会話が成立しているが、リビィ以外で使えない魔法な為、リビィ以外でも使えるように改良に努めている。


「それで何を家畜にするの?俺たちの方針としてはやっぱり美味い種にするの?」


「あぁ、それが決めていた俺たちの国の特徴だからな。」


 メル達は自分らの群れを国にする為に何に力を入れるのかを話し合っていた。

 武力を上げるのは勿論だが、それを除いた場合に何を特色にするのかを話し合い決めた。


「世界一美味い飯が食える国。それが俺たちが目指す国だ。」


 リビィが突出して食欲が強く食べることが好きではあるが、他のみんなも食べる事が好きなのだ。

 だから、この10年、建築や魔法の研究より料理が発展したのはその原点があるからだ。


「試しにこの近海の全種類食べてみて決める?」


「そこら辺は他のみんなにも聞いてみよう。何か家畜向きな種がいるかもしれない。」


 家畜にするために必要なものはまず飼育するスペースである。

 島の土地はそこまで大きくないので、家畜に使うわけにはいかない。


「となると、海か。」


「だが、海には家畜を閉じ込める柵がない。」


 メルとビレイが話していると、後ろから女性に話しかけられた。


「サビス。築城の現場監督は終わったのか?」


「一通り指示は出した。それよりこっちの手伝いをしろというお達しだよ。」


 少し不満そうにサビスは言った。


「相変わらず、サビスはリビィが嫌いか?」


「嫌いだ。いきなり私達の群れに入ってきてメルをトップにしたのに我が物顔でいるのも気に入らない。」


 メルが苦笑しながらサビスに聞いたら、凄い直球で返されて更に残念そうに言った。

 メルとしては群れのみんなにはリビィとも仲良くしてほしいのだが、リビィの高圧的な態度とリビィやビレイ以外を見下しているような目線が気に入らないようで馴染めていなかった。

 リビィ自体も他の個体と仲良くしようとする気がないのだ。


「サビス達は頑固だな。そして、意味が分からない。」


「何が意味が分からないんだ。ビレイ?」


 ビレイがサビスを見ながら首を傾げて本当に理解できないと言うのを仕草で表していた。

 メルには純粋な賢さならこの群れで誰よりも賢いビレイが理解出来ない事がある事が驚きだった。


「この群れでは一番優秀な奴がトップとなる暗黙了解になっている。今は人望が一番あるメルがなっているが、それはリビィが全面的に補佐する前提条件があるからだ。それなのに歳が下な者達はメルこそがトップになるべきとずっと言っていた。それが分からない。」


 ビレイもメルがトップになる事に異論はなかった。

 皆からの人望があり、この群れで誰よりも群れ全体の者達の事を知っているのはメルだ。

 リビィが提案してビレイが微調整する。

 そして、その最終案で誰が適任かをメルが決める。

 それがこの群れで最も安定した統治だと結論付けた。

 ビレイはリビィの能力ならリビィや自分がいなくても同じ最終案も采配も同じかそれ以上の速度で決定する事が可能だと思っている。

 リビィがトップにならなかったのは、それの方が群れに利益があるからだ。

 それなのにサビス含めたリビィが卵になった後に産まれた連中は元からメルがトップになるべきで、リビィを邪魔者扱いしている。

 その事が理解出来ないのである。


「サビス、いい加減理解しろ。この群れにはリビィが必要だ。もし、この群れで誰も勝てないのなら俺たちは死ぬ気でリビィを逃す。俺たちが死んでもリビィが生きていたら群れの再建は余裕だ。」


 そして、リビィに復讐や仇討ちなんて考えはない。

 生き残った後も無駄死にする事なんてない上に、最終的には喰らい尽くしてくれる潜在能力がある。

 だから、ビレイは何も悔いる事がなく死ねると考えている。

 多分、それはリビィや歳が上の連中もそうである。

 それが無いのは下の連中である。


「私達はメルこそが生き残るべきだと思う。」


「あはは、嬉しいけどその時はリビィを残して欲しいかな。」


 メルはそう言っているが、ビレイ達と違ってもしそんな事になってもリビィが生き残る事はないと思っている。

 アイツは誰よりも俺とビレイを大事にしている。

 その上、アイツは食欲を無視しない。それこそがアイツの唯一のポリシーだと思っている。

 だから、どれだけ自分達がリビィを逃がそうと頑張っても無理だと内心諦めていた。

 そして、自分だけが生き残るなんて事はしない。逃すとしたら若い人達と考えていた。


「まぁ、リビィに文句があるならリビィに勝つ事だな。」


 リビィは強い者、賢い者、優秀な者には敬意を持ち、好感を持つ。

 だから、文句があるならリビィを倒せとビレイは言った。


「それは不可能だろう。」


「………………」


 リビィが産まれた場にもサビスも戦っていた。

 だから、サビスもリビィの強さは知っている上に自分達では束になっても勝てない。

 リビィも手加減を知っているが、リビィの手加減は喰い殺さないであり、リビィに勝負を挑むなら腕の一本を食べられる覚悟を持たないといけない。


「まぁ、そんな事よりまずは家畜をどうするのかを考えないと、リビィが怒る。」


 どうでもいい論争で作業が遅れたなんて流石のリビィも怒るだろうとメルは話の軌道を無理矢理戻した。

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