おばあちゃん亀
「それで何を知りたいんだい?坊や?」
お久しぶりです。おばあちゃん。
リビィは他の人型生物を探す為、超音波ビームの練習をしていたあの練習場に来ていた。
リビィの中でこの近海の事を知っているのはこの方しかいないと思い来たのだった。
「そうかい、今回の審査を通ったのは坊やかい。」
審査?
知らない単語を聞いたリビィはおばあちゃん亀に聞き返した。
「神と話したんだろう。ワシもね、神の眷属なのよ。」
強いと感じていたが、まさか神の眷属がこれほどとは思っていなかった。
「安心して良いよ。ワシは強い方さ。この辺りの眷属の中ではね。」
おばあちゃんの強さは世界で見た場合は平均レベル。
でも、海に限定したら上位に食い込むそうだ。
「まだ、眷属じゃない坊やには分からないと思うけど、神に選ばれた個体には神と眷属にだけ分かる印があるのさ。」
印と言っても見たり出来るわけでなく、何となく感じるマーキングだと説明していた。
それは他の神への牽制と自分にこの者と交渉する優先権があると知らせるものだ。
「その印は最大で五付けることが出来る。それ以上つける事もできるみたいだけどそれ以上つけるのは無駄だって誰も付けなくなるっておっしゃっていた。」
神に許された印の数は一つだけ。
複数の個体と交渉するのは無理という決まりとなっている。
だから、五くらい印が付いている個体に時間をかけるより他の優秀な個体を探した方が有効だとして付けないんだそうだ。
「そして、坊やが付けられている印は五個。それは坊やが優秀な個体であるとの印でもあるんだよ。」
喜んだら良いのかな?
「別に喜ぶ必要はないよ。眷属の中には将来的に強大な敵になる可能性がある個体だとして眷属になる前に殺そうとする弱虫な奴もいるからね。」
眷属の面汚しだと声しか聞こえないが、声の抑揚でどれほどそういう眷属を嫌っているかがリビィには理解ができた。
「坊やなら底辺レベルの眷属なら勝てるだろうけど気をつける事だね。そういう奴に限って正面から掛かってくるなんて事はしない。」
おばあちゃんも眷属になる前にそういう輩に狙われた事があるらしい。
だから、嫌いなのだ。
「話がそれたね。人がいる場所かい。」
えぇ、戦力を集める必要があるので探しているのです。
「懸命な判断だね。坊やがいくら強くても、1人では守れる数には限りがある。」
若いのに大した知性だとおばあちゃん亀は感心していた。
「悪いけどこの海には人型は居ないよ。いるのは大陸の中さ。」
おばあちゃん亀が言うにはこの海の名前はリヴァイーン洋。通称死海。
四つに分割される海域にそれぞれ強力な眷属がいる上にその上の存在が中央の海溝に棲んでいる。四眷属のうちの一体がこのおばあちゃん亀である。
その上、嵐が頻発する場所や海底火山が頻発に噴火する場所など船で渡れない理由がわんさかある。
その為、この辺りを通る船は皆無であり、海の付近では津波がよく襲う為誰も住まない無人の地となっている。
「坊や達が住んでいる場所も津波が襲っている筈なんだけど、よく住んでいるね。」
津波の時は海に隠れている。建造物とかは水をよく通して津波を受け流してくれる様に工夫しているから安心なんだ。
「海洋生物ならではだね。そんな素材、他の人型には入手できない建材だね。」
そこそこ深い海底の地中にしか存在しない粘土なので水中で活動できない種には獲得できないものだった。
「一番近い人種でも大陸の奥さ。征服に行くなら相応の準備しないと制圧は厳しいね。」
それは面倒だな。
「手頃な種を捕まえて地道に進化させた方が早いさね。」
?そんな事出来るの?
「あぁ、出来るさ。ワシの手下もワシが地道に強い個体や賢い個体を厳選したりして育てたのさ。でも、人種に進化させるのは骨が折れるけどね。」
今まで水棲生物で人種がメル達以外で生まれなかったのは水中で人型が役に立つ事は少ないからだった。
メリットのない進化先なんて無意識下で即切りである。
「だから、坊やの種から人種が産まれた時はこの海域ではそれなりのニュースになったさ。」
おばあちゃん亀は比較的最近の記憶を思い出していた。
「あの個体は異質だね。異質さで言ったら坊や以上さ。」
メルの異常性にはとっくの昔からリビィは気がついていた。
でも、そんな事友情の前では些細な事だった。
「育てる種で迷っているなら海神様に会いに行ったら良いさね。」
海神様とは海溝に住んでいる眷属の上位種であり、この世で神に最も近い個体の一体だった。
その強さは海中で勝てるものはこの世にいない程だった。
「あの方はワシより物知りさね。ワシでも知らない情報を教えてくれるかもしれない。寝ぼけて買われるかもしれないけどね。」
その場合は一口でも味わってみせますよ。
「あははは!期待しているよ。ここ数百年であの方の元に行って帰ってきたものはいないけどね。」
じゃあ、記録更新はまた数百年先になりますね。
「あぁ、そろそろワシも世代交代したいからね。生きて帰ってきてくれよ。」
それは切実なおばあちゃん亀の願いだった。




