リビィクッキング 化石料理
「ここら辺だな。」
リビィは村のある島の隣島に来ていた。
隣と言っても十数メートル以上は遠い島である。
その島でリビィはエコーを地中に向かって出し続けてある物を探していた。旅に出る前に確保しておきたいものが有ったのだ。
「あった。エコー全開。最大出力。」
エコーの端に目的のものらしき物体が見つかったので、より詳細な情報を得るために出力を上げた。
「これだな。海底で見たのと酷似している。」
魔石取りに深海に向かった時に魔石化していない化石を発見していた。
海底で取った時はその場で味見として食べてみた。
「あまりに美味すぎて全部食べてしまったんだよな。」
メルやビレイにもお土産として持って帰るつもりだったのだが、思っていた以上の旨味で夢中になって食い尽くしてしまったので有る。
「メルならより美味しくする調理法を知っているかもしれないからな。」
メルは調理という餌をより一段階上のステージに上げる方法を知った為、この美味い餌もメルなら何か思いつくのでは無いのかと考えたのである。
「それにしても地中800メートルか、思ったより浅瀬にあったな。」
リビィは1000メートル以上の深海の中の更に数百メートル下に眠っていた化石だった為、何百メートルで見つかった事が意外だった。
「メルはこれ食うかな?」
魔法で地中から無理矢理掘り返しているリビィは美味しい餌を持って帰れると喜んでいたのだが、そもそも、メルは骨まで食べたか?と疑問に思った。
村に過ごして色んな料理を食べて美食を堪能していたリビィだったが、思い返してみると骨付きで出てくる料理は少なかったと気がついた。
「そういえば、骨まで食べるのは少数派だったな。」
この10年で昔の事をあまり細かい事を覚えていなかったリビィは他者に興味が元々なかった事も相まって骨食が主流ではなかった事を今になって思い出したのである。
「あぁ、どうするかな?」
今夜の酒のつまみは俺が用意すると言ってしまった手前、今更、皆が食えない物だったとは言えない状況になっていた。
「美味いんだがな?……………!」
ここでリビィに天啓が降りてきた。
天啓といってもただ単にリビィがひらめいただけだが、それに酷似するような完璧なタイミングで思いついたのである。
「硬いから食えないのなら柔らかくしたら良いんじゃないか?」
骨が美味いのに食べないのは硬くて食べれる顎と歯がないのが問題なのである。
その上、この化石は骨自体が巨大で今までリビィが食べた骨の中でもトップクラスの硬さである。
同じく骨食の母でも食べれるのかも疑問なものだった。
「確か、メルは圧力をかけることによって肉を柔らかくする方法があると言っていたな。」
正確には密閉して加熱することで圧力が上がり、柔らかくする調理法なのだが、メルはその事を知らなかった。
「一回してみるか。」
本命の骨が圧力に負けてバラバラになって砂になってしまったら困るので近くあった違う化石を使って試してみる事にした。
「地面を操作して全方位から優しく潰さないように圧力を上げていくイメージ。」
言葉にすることによってイメージを補完しながら魔法を使っていった。
普段はパワーに、パワーを掛け合わして力押しで戦っていた為、ある程度は勘とセンスで調整していたのだが、今回のような難しい調整は一切してこなかった。
「ふぅ……ふぅ…」
卵から孵って初めて汗をかき息を整えないといけない程の疲労と集中をしていた。
産まれて初めての苦戦が圧力調理とはリビィらしい苦戦だった。
「…………コレ、どれくらいするんだ?」
メルからなんとなく言葉と空気で読み解いたが、正確な時間はそもそもメル自体が知らない為、推測でやるしかなかった。
「このままだと何時間では効かないな。」
試した化石は本命より二回りほど小さい物だが、それでも何時間はかかると空気を読んだリビィは、本命の調理時間を考えると今日の酒飲みには間に合わないと考えた。
「それでは意味ないな。」
酒飲みのつまみにするために調理しているのに間に合わないのでは意味ない上に、間に合わなかったと言うのはリビィのプライドが許さなかった。
この化石を代役として持っていくのは食を尊ぶリビィには選択肢としてなかった。
そもそもこの骨が美味い保証はない。
「より圧力を上げるのは無理だしな。…………」
此処である結論に至った。
圧力以外の力を加えたら良いのでは無いのかと。
「此処に地熱をさらに加えたら時短出来るのはないか?」
思い立ったが吉日と試しの化石を更に地中へと埋めて行った。
焦げたりしたらいけないため、魔力で温度を調整しながら更に地中へと埋めて行った。
「美味くいきそうだな。」
エコーと魔法を多用しているため、この試しが失敗したら本命の骨を使わないと調理時間より体力がもたないと判断した。
「確か、穴を開けていたな。」
前に調理場に入った時に煮込みをする時に食材に穴を開けて中まで火が通るようにしていた事を思い出した。
「そして、穴からも圧力をかける。」
骨がバラバラにならないように慎重に細かい穴を開けた。
その中からも圧力をかけることによって時短することに成功した。
「良し!これなら間に合う。」
試しの骨が柔らかくなったことを食べて確認したリビィは休憩しながら骨を食べていた。
そして、今夜の酒飲みに件の化石を出したところ、柔らかく食べやすくなったが、メルが鍋で煮込んでスープにした方がいいんじゃないかと発言したことによってあの苦労はなんだったのだとガチ目にへこんだリビィだった。




