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地獄と天国

「成功だ。」


「どう言う事だ?進化なのに卵になっていない?」


 メルはマルクがリビィによって進化させられたことには正直、あまり驚いていなかった。

 昔から常識が通じなかったリビィが進化したことによって更に異常性に磨きがかかっていた。磨かれた異常に何があっても表面的な驚きしか湧かなかった。


「卵の役割は進化する土台作りと進化の間の無防備状態を守る役割がある。この子には既に土台は出来ていたうえに、無防備を晒しても大丈夫な状況だから。殻はいらないんだ。土台が出来ているのに今まで進化が出来てないのが問題なんだ。」


 マルクに何か問題があるのではと卵になっていない事を心配しているメルを懇切丁寧に説明して安心させた。

 でも、問題な点はそこではないと訂正もした。


「強制進化させて分かった。この子には土台があるのに進化が出来ない先天的異常性があった。進化の条件も満たされていなかったが、それはあくまで人より遅くする要因でしかなかった。この子は元から進化が出来ない運命だった。」


「そんな事あるのか?」


 メルはそんな欠損があるのかと驚きと同時に今まで知らなかったことに疑問が生まれていた。

 進化条件が満たせていないだけなら何年掛かったのかは分からないがマルク自身で解決できる問題だったのだが、この問題はマルクには一生をかけても解決しない問題になる。

 つまり、一生自力での進化は不可能という事だ。


「そんなのは簡単だ。分かる前に死んでいた。この海で進化が出来ずに大人になれない個体はあっさり淘汰される。こんな欠陥は生存において致命的だ。」


 リビィは珍しく深刻そうな顔をした。

 自分になら解決できる問題だが、それ以外の個体でこの問題を解決することは現状不可能である事は分かっていた。

 如何にかして解決法を見つけないと俺たちの繁栄に支障が出るとリビィは考えていた。


「でも、この子は生きていた。それはこの群れがそれだけ強大な力を持っている証拠だ。」


「それはそうだが………」


 まだ、納得できていないようなメルに少し疑問を持ったが、そんな些細なことはマルクの光が強まったことによって霧散した。


「そろそろだな。」


 マルクの様子を読むことによって進化完了がもうすぐである事を確認した。

 そして、どんな姿になっているのかも分かった。


「羽?」


「あぁ、面白い()()が選ばれたな。」


 光に慣れたメルも中身がどうなっているのかが薄らと分かった。そんなマルクの姿が意外だったのかリビィは薄く笑っていた。


「ふぅ、まるで生まれ変わった気分です。」


「気分ではなく、文字通り生まれ変わったんだよ。進化とはそういうものだ。」


「本当にマルクなのか?」


 全てから解放されたような感覚に包まれたマルクの顔は晴れやかだった。

 そんなマルクの姿に本人かをメルは疑ってしまった。


「そうだよ。お父さん。私は生まれ変わったんだよ。もう数分前の自分とは全く違うの。」


 満面な笑顔でメルに告げたマルクはすぐさまリビィの前で跪いて謝意を述べ始めた。


「ありがとうございます。リビィ様。このご恩はこの力をもって必ず貴方の牙となり、翼となって役立てます。」


「ふーん。期待はしておくよ。でもね。これだけは言っておくね。俺の力になると言ったからには地獄を見ることになるよ。それでもいいならそのまま忠誠誓っていい。天国に居たいならメルにその力を使え。俺には元からいらないものだからな。」


 マルクの覚悟と忠誠を高めるように威圧と殺気をもって忠告した。こんな事をするのは親友の娘だからだ。


「おい!リビィ。それはあまりにも………」


「大丈夫です!覚悟は出来ています!!私は貴方だから!忠誠を誓うのです!地獄を見ようが!友を!家族を!捨てることになっても貴方様のために私は力を使います!」


「そうか。お前の覚悟は分かった。」


 メルはあまりにも凄まじいリビィの殺気に子供には酷だと言おうとしたが、マルクが遮りリビィに宣誓した。

 リビィはその覚悟を受け止めた。

 この言葉にマルクは心の底から歓喜を上げていたが………


「だが、これだけは言っておく。俺は親友の娘だからと言って裏切りは許さない。それがお前にとって俺の裏切りだと思えない事だったとしてもだ。」


 面を上げたマルクの心はリビィの顔を見て一気に冷えた。そこには何も感情が読めない顔があった。

 無表情というわけではないのに何も読み取れなかった。その異様な表情に歓喜の炎は一瞬にして冷え切って消えた。

 リビィに忠誠を誓った事に後悔はない。

 でも、自分の考えていた地獄は天国だったと自分の無知を恥じ改めた。


「脅すのもそこまでにしておけ。」


「そうだな。ではマルク。その力、ちゃんと使えるようにしておけ。今までとは身体の使い方から全く違うぞ。」


 そう言ってメルとリビィはその場から離れた。


「お父さんも化け物だな。」


 力をもって初めて父の偉大さを知ったマルクはまた以前の自分の力の無さに呆れていた。

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