強制進化。
「それで断ったんだな。」
「あぁ、なんかムカついた。」
リビィは神と会った時を思い出して苛立っていた。
「で、神が言っていた俺の群れにいる眷属候補がお前の娘だってわけ。」
「それ、本当なのか?」
メルはマルクが神の言っている眷属候補者とは思えなかった。
だから、リビィに何を根拠にそう判断したのか?聞いてみた。
「纏っている空気が俺に似ている。それだけだ。」
「?」
メルにはリビィが言っていることを理解することができなかった。自分からしたらマルクとリビィが似ているところがあるように見えなかった。
どちらかと言うと別の娘の方が似ていると考えた。
「お前は外見しか見ていないから。分からないんだ。コイツ、まだ進化していないな。」
「はい…………」
その事を気にしているマルクは落ち込みながら返事した。
同年代で進化が出来ていないのはマルクだけで年下にも抜かされる有様だった。
別に進化=優秀と言うわけではないが、それでも進化した方が優れいると言う認識が広まり始めていた。
「何を落ち込む必要があるんだ?それはお前が潜在能力を引き出せていないからだ。」
「潜在能力?」
「どう言う事だ?メル。」
「…………………はぁ。」
メルとマルクの反応に進化の必要条件を知らない事を理解して呆れていた。
てっきりこの10年で理解しているものだと考えていた。
「まさか、進化のことに関してここまで知らないとはな。」
「逆にお前はどこまで知っているんだよ。」
「全てだ。」
「はぁ?」
リビィの発言にメルは目を丸くしながら唖然としていた。
「一回経験したことだぞ。俺の身体だ。理解するなんてお手のものだ。」
当然の事だと言うふうに言うリビィはこの10年何していたと不思議に思っていた。
「いいか、進化にはまず、潜在能力を知ることが肝心だ。空気を読むのが下手なお前にそっくりなお前の娘はそれを知る事が出来ていない。」
普通なら過ごしているうちに無意識下で理解されることがこのマルクには一切出来ていなかった。
それこそが進化の妨げになっている事をリビィは一発で看破した。
「じゃあ、メルビランが進化しづらい種になっているのは。」
「空気が読むのが下手な種だからだ。潜在能力、つまり己の事を理解出来ないから進化できない。」
メルビランとはメル達人型種のことである。
最初にこの種に進化したメルに因んで命名された。
「だからかは知らないが全体的に潜在能力が高くなっているのはお前の種だ。」
群れ全体のメルビランとビライシンを見た時に潜在能力が高かったのはメルビランだったことから進化がしにくいデメリットに対してのメリットだとリビィは結論付けていた。
「その中でもコイツはピカイチだ。俺が保証する。」
リビィがこれほど断言すると言うことはそれだけマルクの才能が凄いことを表していた。
「宝の持ち腐れだ。………………やってみるか。」
「っ!おい!待て!」
「お父さん?」
リビィがマルクに触れようとした瞬間メルが間に入ってリビィの妨害をした。
「こんな時だけは読むのが上手いな。」
「隠そうとしていないくせによく言うよ。俺の娘にないをしようとした。」
親友に向けるにはおかしい程の剣幕でリビィを問い詰めた。
「コイツの潜在能力を呼び覚ます。」
「なに?」
「そんな事が出来るんですか?!!」
「お、おい!マルク!」
二人の間に入ったメルを押しのけてリビィに嬉々としてマルクは尋ねた。
己にそんな潜在能力があるなら呼び覚まして欲しかった。馬鹿にしてきた奴らを見返したいその気持ちがマルクの中に溢れていた。
「あぁ、俺ならそれが可能だ。だが、これは外法であり邪道だ。真っ当な進化が出来る保証はない。それでも良いのか?」
さっきまで問答無用でやろうとしたのに丁寧に聞いてくるこの状況に今のやり取り自体がリビィの掌の上である事をメルは理解した。
「構いません!どんな姿になったとしても貴方に忠誠を誓います。」
「そんなものはいらんが、そこまでの覚悟があるならやってやろう。」
「待って!」
「止めないで!お父さん!私は進化がしたいの!それがこの先の人生を犠牲にすることになったとしても!!」
メルは進化ができないことをマルクが気にしていることには気が付いていたがここまで思い詰めていたには気が付いていなかった。
「さぁ!やって下さい!」
「じゃあ始めよう。潜在開放、表層。」
リビィがマルクに触れた瞬間、光が溢れてきた。
「こ、これは!進化の光!!」
「さぁ、新種の誕生だ。」
マルクは卵になる事なく、進化した。




