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白騎士様のパンツが黒だったので婚約破棄します。~これはもはや国家反逆罪にあたりませんか?~  作者: ブヒ太郎


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第一幕 黒パンツと追放処分

ネタ振ったら、お前が書け。って言われて、書いたネタです

 純白を尊ぶアルビオン王国。

 我が王国では、白とは清廉潔白の象徴であり、国民すべてが敬うべき色とされている。

 とりわけ、王国最強の騎士に与えられる『白騎士』の称号は、その象徴とも言える存在だった。


 白銀に輝く鎧。

 風になびく純白の外套。

 そして、民を守る高潔なる精神。


 私は、そんな白騎士様を心からお慕いしていた。


 だからこそ、許せなかった。


 あの日、偶然知ってしまったのだ。

 白騎士様が、黒いパンツを履いているという衝撃の事実を。


 黒。

 よりにもよって、黒である。


 ああ、なんということでしょう!

 これは由々しき事態ですわ!


 私はその日のうちに婚約破棄を宣言し、王宮へと駆け込んだ。

 そして、玉座に座る国王陛下に向かって、声高らかに訴えたのである。


「白騎士様のパンツが黒だったのです! これはもはや国家反逆罪にあたりませんか!?」

「…………は?」


 国王陛下は、何とも間の抜けた声を漏らした。


「……いや、待て。今、なんと言った?」

「ですから! 白騎士様のおパンツが黒だったのです!」

「……うむ。聞き間違いではなかったか」


 陛下は深々とため息をついた。


「……別にパンツくらい黒くたっていいんじゃないか? 純白というのは制服の話じゃろ?」

「なりません!」


 私は毅然と言い放った。


「アルビオン王国たるもの、すべて純白でなければ民に示しがつきません!」

「示しって……」


 陛下は困惑した表情を浮かべた。


「……そもそも、民にパンツを見せる機会などないじゃろう?」

「見えないところにこそ、真の騎士道が宿るのです!」

「……そういうものなのか?」

「そういうものです!」


 陛下は何か言いたそうに口を開いたが、結局、何も言わずに閉じた。

 そして、しばらく考え込んだあと、再び私へと視線を向けた。


「……んな、追放しなくてもいいんじゃないか? お前だって白騎士のことをあんなに好いておったろうに」

「私は彼の純白な姿に惚れたのです! それが黒パンツがいいなどと妄言を申すような男。もはや興味ありません!」

「……んじゃあ、白パンならいいんか?」

「もちろんです!」

「……男が白パンねぇ……」

「……なんですか?」

「……いや、それだとブリーフ……」

「黙りなさい」

「……わし、一応国王なんじゃが」


 何を仰るのでしょうか。

 国王であろうと、白騎士の純白を軽んじる発言は看過できません。


 陛下は、助けを求めるように傍らの宰相へ視線を向けた。


「……なぁ、宰相」

「……とは言いましても、国王」

「なんじゃ、改まって」

「……私も男のパンツの色に興味はないのですが……」

「……そうじゃのぉ。わしも白騎士の下着など、どーでもいいし」

「……なんですか、その言いぐさは」


 思わず、私は眉をひそめた。


「まるで私しか彼のパンツに興味がないような言い方をするじゃないですか」

「……いや、実際」

「……そうですし」

「黙りなさい、売国奴!! 追放処分にしますよ!!」

「だから、わしが国王なんじゃって!?」


 国王陛下が玉座から腰を浮かせた。

 その隣で、宰相が呆れたように口を開く。


「……私、一応あなたよりも位が高いんですけど……」

「心の問題です!!」

「…………」

「…………」


 二人は顔を見合わせた。

 そして、揃って深いため息をついた。


「……なぁ、宰相」

「……はい、陛下」

「……これ、何の会議じゃったかの?」

「……白騎士のパンツの色についてです」

「……そうじゃったのぉ」


 なんということでしょう。

 この国の最高権力者たちは、事態の深刻さをまるで理解していないのです。


 こうなれば、私が動くしかありません。

 そこで私は、王国に古くから伝わる法典を持ち出した。


「陛下。こちらをご覧ください!」

「……なんじゃ、それは」

「建国時代に制定された王国騎士法です!」


 かつて、アルビオン王国は黒曜帝国と呼ばれる敵国と戦争を繰り広げていた。

 その際、敵国の間者が白騎士に成りすまし、鎧の下に黒い布を身につけて仲間を識別していたという事件があった。


 その再発を防ぐために制定されたのが、次の条文である。


『白騎士は肌着に至るまで純白を貫くべし。敵国を象徴する黒き衣を身につけ、王命による是正を拒む者は、王国への忠誠を放棄したものとみなす』


「ご覧ください! やはり国家反逆罪ではありませんか!」

「……いや、そんな古い法律、まだ残っておったのか?」

「残っております!」

「……宰相よ」

「……はい。残念ながら、正式な廃止手続きはなされておりません」

「……なんでそんなものを放置しておったんじゃ」

「……まさか、下着の色で適用される日が来るとは思いませんでしたので」


 国王陛下は頭を抱えた。

 しかし、法律は法律である。


 私は公爵家に認められた騎士団監察権を行使し、正式な審問を請求した。

 こうして、白騎士様のパンツを巡る問題は、王国の法的手続きへと発展したのである。


 そして、数日後。

 王宮に呼び出された白騎士様に、最後の機会が与えられた。


 黒いパンツを捨て、純白のものに改めること。

 ただそれだけで、すべては不問となるはずだった。


 けれども、あの方は首を縦に振らなかった。


「……なぁ、白騎士よ」


 国王陛下が、疲れ切った表情で尋ねた。


「……本当に白いパンツでは駄目なのか?」

「申し訳ありません、陛下。ですが、それだけは譲れません」

「……なんでじゃ」

「私にも、譲れぬものがあります」

「……パンツじゃろ?」

「はい」

「…………」


 国王陛下は天井を仰いだ。

 そして、ついに正式な王命への拒否が記録されてしまった。


 古い王国騎士法に従えば、これは王国への忠誠を放棄したとみなされる行為である。

 国王陛下は最後まで処罰に反対していたが、正式な審問によって成立した罪を無視することはできなかった。


 それでも、死罪だけは回避させた。

 白騎士様に下された裁定は、称号剥奪および国外追放。


 かくして、王国最強の騎士は、たった一枚の黒いパンツによってすべてを失ったのである。


 そして、王都を去るその日。

 城門の前には、私も見送りに来ていた。


「……白騎士様」


 私が呼びかけると、あの方は静かに振り返った。


「最後に、何か言い残すことはありますか?」


 白騎士様は、しばらく私を見つめていた。

 そして、揺るぎない決意を込めて、ただ一言だけ告げた。


「俺は、パンツは黒がいい」


 それだけを言い残し、あの方は去っていった。

 私は、その背中を見送ることしかできなかった。


 ……なんということでしょう。

 最後の最後まで、黒。


 この方は、どうしてそこまで黒にこだわるのでしょうか。

 私には、まるで理解できませんでした。

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