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運命の混紡者  作者: Ridge
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東部編7-1

 レオンとナレルは商人の別荘の一室で休息していた.ドアをノックして商人が入って来る.

「今よろしいですか?昼間のお話の件ですが」

「ああ,大丈夫だ」

「最近,川の水が悪化していることはご存知ですか?」

「…そんなこと言っている人いたな,ある食堂で」

「原因は鉱山開発と過剰な肥料です.それが原因で川に重金属が溶け出している」

「何?この辺りではどちらも禁止されているはずだ」

「そうです.上流域である東部は多くの地域で下流地域への深刻な汚染となることは禁止されています」

「その非合法で作った成果物はどうしているんだ?誰が売っている?」

「私たちではありません.彼らは持っているのです.自前の流通ルートを」

「そいつらは一体何者だ?」

「名はシュレオン組.聞いたことがあるでしょう?」

「あのならず者の集団か」

「俺は知らない.教えてくれ」

「ダウン一族みたいに血がつながってないけど,家族という形態をとっている集団で,刻印が体のどこかにある.道を外した者たちが集まって出来ている組織で遵法精神などない.大元は都落ちした一族で皆が嫌がる仕事を請け負っていたが,それはもう1000年は昔の話.今では麻薬を売ったり,脅して商談を成立させたりしていると聞く」

「東部政府としても中央政府としても解体したい危険な存在です.ただ,時間がかかるものです.今では社会から外れた者の受け皿がシュレオン組になっていますから,政策がうまくいかない限り消えない存在なのです.とはいえ,このまま放置するわけにもいきません」

「しかし妙だな.一地方ではなく国の広範囲で問題になるというのに,無理を通して鉱山開発などを行えるものなのか?」

「奴らのパトロンが存在するのです.東部政府を脅し,中央政府から庇わせるように仕向ける存在が」

「これはきっと魔族の仕業に違いない.行くぞナレル」

「もう日が沈んでいる.明日にしよう」

「…仕方ない.じゃあ明日」

 レオンたちは話を聞いて,次の日に備えて眠りについた.


 次の日,目印を辿ってその場所へ2人は向かった.鉱山の手前に小屋があった.そのまま近づくと何人かが近づいてきた.

「立ち入り禁止の看板が見えなかったか?」

「見えた.でも用事があったから」

「何だこいつら?」

「法律でこの地域の鉱山を掘ることは禁止されているはずだ」

「それが何だ?何か問題でもあるのか?」

「ある.川の水に重金属が溶出して下流域の人々に毒だ」

「大げさなんだよ.流れているうちに綺麗になる.複雑な地形が多くの種を生存させ,そいつらの浄化作用が働くって聞いたぜ」

「お前たちは鉱害を舐めている」

「はあ.下流域なんて知ったことじゃないろ?それに,あの法律は東部弱体化のために中央政府が作ったものだ.大体よお,こんなことなら国家統一なんか要らなかったんだよ.北部はボロボロ,南部と中部は富を持って行ってしまう.西部は独立阻止におだてないといけない」

「統一前は塩を買うのすら困難だったんだぞ.季節ごとの栄養の偏りもあって病気にかかりやすかった.挙げればキリが無いが…今の生活は壊させない」

「お前はまだ生まれてなかったのに,まるで見てきたように言うなよ」

「君らだってそうだ.知らないのに統一前が良かったなんて言うのはおかしい」

「ああーうぜえ.要するに邪魔したいんだな?死にたいんだな?」

 男は鉄棒をナレルに振り下ろす.ナレルは剣を抜いて相手の鉄棒を切断し,相手の鳩尾を蹴って後ろへ距離を取る.

「まあ待て2人とも.俺がここに来たのは君らと戦うためじゃない.いるんだろう?パトロンだか用心棒だか.そいつに会いたい」

「エムイチさんが出るまでもない」

「それが仕事なんだから邪魔してやるなよ」

「何言ってんだお前?」

「……」

「読みを外したようだなレオン」

「さてどうしたものか…」

 レオンとナレルは飛来物に気づいて,後ろに下がった.煙幕が広がる.

「こっち!走って!」

 後方からの女の声に従ってレオンとナレルは走る.暗い森の中へ入ると手を振っている女性が見えた.

「そのまま着いてきて」

 2人は女性の跡について進み,石造りの遺跡らしき場所に出た.

「ここまで来たら大丈夫.危ないところだった」

「危ない?何か見えていたのか?」

「相手が誰だったか分かってる?」

「何とかレオン組だろ.似た名前しやがって,ややこしいなあ.危険は承知だ」

「まさかお前,奴らの仲間か…?」

「違う!助けたのに失礼ねえ!私はエーヴェ.東部政府の書記官よ」

「…ああ,心配させてしまったか.すまない,そんなつもりはなかった」

「あなたたちは誰?何をしてたの?」

「俺はレオン.覚えておくと得だぞ.こっちはナレル.奴らの用心棒を倒しに来たんだよ」

「どこでその話を?」

「言う必要はない」

「恐ろしさは聞いた?」

「一応.その,エムイチだったか?魔界へと送り返してやる,肉体は消えてもらうが」

「え?魔界?できるの?」

「できるさ.俺はそのために狭間の世界から来た狩人」

「何を言っているのこの人…?」

「まあ要するに,倒す手段も持っているし,腕にも覚えがあるから大丈夫ということだ.な,レオン?」

「そんなところか.エーヴェはなぜここにいた?書記官の仕事は奴らの相手なのか?」

「仕事とは別….私の兄貴を救い出すために…」

「囚われているのか?」

「馬鹿な兄貴で…」

「(質問に答えろよ)」

「あいつらの手下になっている.あの用心棒がいるからシュレオン組は潰せない.剣も槍も通らない,当然石も矢も効かない.人を容易く引きちぎる恐ろしい奴….目を盗んで攫うしかない」

「その計画は無意味だ.俺が奴をこの世界から消す.君はその後でお兄ちゃん…と呼び戻せばいい」

「大した自信ね」

「じゃあ俺たちは行く.止めてくれるなよ」

「ああ,行ってしまった….なぜだろう,止められなかった…」

 2人の通った後をぼーっと眺めていたエーヴェは背中を棒でトンと突かれ,呼吸が乱れて気を失った.

「中々の上玉だぜ」

「連れてくぞ.目が覚めてから状況を理解するまでの顔が楽しみだ」

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