僕の時と同じ
お待たせ致しました!ようやっと更新です!
蒼海ちゃんが集中治療室に運ばれてからどれくらい経っただろうか。
1時間か、2時間か。もっと経っていたかもしれない。
待っている間の長い時間、僕達は一言も発しなかった。僕を挟むように父さんと母さんが両脇に座り、手を握っている。
父さんの手は微かに震え、母さんの手は汗が滲んでいた。
長い沈黙を破るように治療室の扉が開く。中からはよく見知った先生。
僕が入院中、ずっと見てくれていた平沢りえ先生。
平沢先生は僕達に話があると別室へ案内した。別室へ移動する間も父さん達の手は強く握られている。
別室…平沢先生の医務室へ入ると蒼海ちゃんについての説明が始まった。
僕の時と同じだ、と。
原因は不明。しかしその容態は以前の僕と全く同じだと。
僕のことがあったからか、当時よりも迅速に対応はできたものの回復させるまでには至らなかった。
蒼海ちゃんの脳は深い眠りについたのだ。
父さん達は先生の説明を聞くと「わかりました」と一言いい外に出ていく。
二人からは重く深い絶望が伝わってきた。
何故、蒼海ちゃんまで僕みたいになってしまったのか?
結局のところ僕の時は原因がわからなかった。ただ奇跡的に回復できたという結果しかわからなかったのだ。原因の究明という点では何もできていなかった。
兄の僕がなって、次に妹の蒼海ちゃんが。
そうなってくると、親からの遺伝の可能性もでて来るがそんなことありえるのだろうか?
この世界に転生してから結構経つが遺伝でそんな病があるなんて聞いた事ないし前世でも存在しなかった。
そもそも突発的に脳が死ぬなんてことあるのだろうか?
医学の専門的な知識を持ち合わせていない僕でもそんな事ないと思ってしまう。
僕だけがこうなっていたのならある程度仮説を練れていた。前世からの記憶の混雑のせいだとか、そういった医学的な問題外での事だったのかもと。
しかし、蒼海ちゃんもそうなったのならその可能性は限りなく少ない。
蒼海ちゃんと一緒に暮らしてきて、蒼海ちゃんに前世の記憶があるように思えた事はなかった。
良く言えば、この世界を当たり前のように蒼海ちゃんは過ごしていたから。
色々考えているうちに家に着いた。
父さん達は二人で話をするからと僕を部屋に戻した。
子供である僕には話せない内容なのだろう。恐らく父さん達は僕の時のトラウマのようなものを思い出している。
僕の時は8年かかった。
蒼海ちゃんはどれくらいかかってしまうのか?いや、それよりも目を覚ましてくれるのだろうか?
兄の僕ですらそんな心配で頭がいっぱいになっているんだ。
僕を待ち続けていた父さんと母さんは僕以上に蒼海ちゃんのことを思いつめているだろう。
…………僕が、舞桜ちゃんと付き合ったなんて話したから蒼海ちゃんは眠ってしまったのか?
不意に、そんな考えが過ぎった。
蒼海ちゃんが眠る前の一連のことを思い出す。あんなに取り乱した蒼海ちゃんは初めてだった。
よほど精神的にダメージを受けたのかもしれない。もしそれが原因だとしたら、僕は…………
「先輩っ!」
「ん?どうしたの?」
「ねぇ先輩?先輩って、付き合ってる人とかいるんですか?」
「どうしたの突然?……い、いないけど……」
「いやいや、気になったもので……いないってことは、岡部先輩は彼女じゃないってことですか?」
「あー…うん、ちがうよ。」
「そっかぁ……よかったです、先輩!あっ!そうだ!先輩いい加減私のこと名前で呼んでくださいよー!」
「どうしたの今日は?突然だし、なんだか元気だし…」
「そんなのは些細なことです!とにかく、名前で呼んでください!ほらっ!はやくー!」
「はぁ、恥ずかしいから一回だけだよ?えっと、み――――」
ハッと目が覚める。昨日は色々考えているうちに眠ってしまっていたらしい。
ぼんやりと夢を見ていた気がするが薄まっていて内容はしっかり思い出せない。
ただ、恐らく前世のことだった。先輩なんて、この世界では呼ばれた事ないから。
リビングへ行くといつものように父さんが朝食を作っていた。
「おはよう、父さん」
「あぁ、蒼空くんおはよう。もうすぐご飯出来るから、先に顔洗っておいで」
そう言う父さんは昨日とは違いいつもと変わらない様子だった。
顔を洗いリビングへ戻ると母さんも起きてきていた。
「おはよう蒼空くん」
「うん、おはよう母さん」
「ほら、ご飯できてるから食べましょ?」
母さんもいつもどおり。
二人で話をしたみたいだったが、なにか決まったのだろうか?
ご飯を食べていると、父さんが口を開けた。
「蒼空くん、蒼海ちゃんのことなんだけどね。……昨日聞いたとおり、蒼空くんの時と一緒で眠っちゃってるみたいなんだ。」
「……うん」
「どれくらい眠ったままになるのかまだわからない。でもね、安心していい。」
父さんは僕の頭に手を置いて言い聞かせるように話す。
「蒼海ちゃんは蒼空くんと同じ俺達の子供だ。蒼空くんと同じように、必ず目を覚ます。」
「……うん」
「それに、蒼海ちゃんは女の子だ。男の俺や蒼空くんよりもずっと身体が強い。蒼空くんよりも早く目が覚めるに決まってる。だから、蒼空くん。父さん達は笑顔で蒼海ちゃんを待っていてあげよう?」
「………うんっ!」
「うん!いい返事だ。そしたら、今日から蒼海ちゃんのお見舞いだ!学校から帰ってきたら蒼空くんはママと一緒に行くんだぞ?」
「うん、わかった。父さんは昼間に行くの?」
「あぁ、そのつもりだよ。蒼空くんの時と同じだね。」
お見舞いの時間を決める僕達。
父さん達は元気を取り戻しているようだった。
親として、強く立ち振舞っているのかもしれない。それでもその強さに僕は尊敬の念を抱いた。
「それじゃ行ってきます!」
家から出る。
学校に通い始めてから初めてになる一人での登校。
今まではいつも蒼海ちゃんと一緒に登校していたからなんだか新鮮で、寂しい。
学校へ向かう道に少し行ったところで、後ろから声をかけられた。
「蒼空くん、おはよう」
「……おはよう、舞桜ちゃん。どうしてここに?」
「昨日のことがあったから、蒼空くんに早く会いたくて。………蒼海ちゃんは?一緒じゃないの?」
「……蒼海ちゃん、昨日から入院したんだ。」
「え?入院?………眠っちゃったの?」
「…うん、僕の時と同じだって。」
「そっか……元気、だしてね?蒼空くん?」
「うん、ありがとう。」
舞桜ちゃんはギュッと僕を抱き締める。
「寂しいこととか、貯めないでちゃんと話してね?」
「ありがとう、舞桜ちゃん」
舞桜ちゃんは僕を離すと、今度は手を握り歩き始める。
「それじゃあ今日から私が蒼空くんの送り迎えやるね?」
「えぇ?それは、悪いよ…」
「私がしたいの。それに、私は蒼空くんの彼女……なんだよね?だったら、エスコートするのは当然でしょ?」
「………なんか、ごめんね。」
「あやまらないで。私がしたいだけなんだから。さ、学校にいそご?」
舞桜ちゃんは僕の手を引き歩き始める。
斜め後ろから見える舞桜ちゃんの横顔はどこか嬉しそうだった。
僕はそんな舞桜ちゃんの顔をみて脳裏によぎっていた事を忘れてしまった。
何故、舞桜ちゃんは蒼海ちゃんが眠ってしまったとわかったのだろう……………
母親の容態落ち着きました!入院となりましたが命は取り留めてくれて一安心です。
そして更新お待たせして申し訳ありませんでした!
入院の準備だとか色々立て込んでしまい一週間以上お待たせさせてしまいました(´・ω・`)
今日からは以前と同じように毎日更新していきますのでどうかよろしくお願いいたします!




