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犯罪?風潮?


「男の子が選んじゃダメってどういうこと?」


僕は思考を巡らせながら聞いた。


「なんでって…なんでだ?」


「よ、よくわからないよね…でも、小さい時からお母さんに言われてきたし…」


「お母さんに……」


理由を知らないということは男性自身には伝えられていないことなのか?それともまだ幼いから?

もし本当に犯罪になるのだとしたら大変な事だ。


「そうそう、母ちゃんからずっと言われてたもんなぁ?『女の子は厳選しなよ!貴方は選べない立場なんだからねっ?!』てな?」


「そ、そんな強めの言い方だったんだ正人くん…」


「え?一輝はなんて言われてきたんだよ?」


「ぼ、僕は…『一輝は男の子なんだから、ちゃんと待ってなきゃ駄目なのよ?幸せになれる女の子をちゃーんと、選んでね?』って…」


2人はそれぞれ母親に言われてきた事を語ってくれた。

しかしどちらも駄目ということだけで明確な理由を言ってはいなかった。

……もしかすると、これは殺人のようなものなのかもしれない。

子供に人をなぜ殺しちゃいけないのかと聞かれても詳しく理由なんて話せない。

そして理由を聞かれなくても子供には人を殺しちゃだめなんてことは当たり前のように教えるし、子供もそれを飲み込んでいく。

常識という言葉で括ってしまえるほどに、これは当たり前なのかもしれない。


でも、それは人権問題に発展するのではないか?

男性がもし女性を好きになってもその人に自分の思いを伝えることができない。

その女性から告白してくるのをひたすら待たなければいけないのだ。

果たしてそれは自由恋愛と言えるのだろうか?


「なんだよ野上?もしかして好きな奴でもいるのか?」


「……え?あっ違うよ?ただどうするのかなって気になっただけだよ。」


「ふーん。でもまぁ好きになったら告白しちゃえばいいんじゃね?俺には絶対むりだけど」


「…えっ?ちょっと待って、告白するのは犯罪じゃないの?」


「あっ…ご、ごめんね野上くん…さっきのは、犯罪みたいって意味なんだ…」


「そうそう、別に告白したからって逮捕されちゃうってことじゃなかった気がするぞ」


犯罪ではない。しかし常識として男性からは告白しないのが周知されている。

この世界が歴史を刻む過程でそのような風潮が出来上がってしまったのか?

法律にするまでもないくらい当たり前で、自然で、当然のこと。


僕はこの世界は前世と男女の価値観が入れ替わってしまっただけだと思っていた。

でも、これは完全に違っている。前世の女性にそのような風潮は存在しなかった。

受身であり続けろと言われることなんてなかった。

現代…この世界の今の時代は前世の戦国時代の穢れた風潮を残しているのだ。

男性の出生数が違うだけでここまで…。


僕はこの世界を認めたくなくなっていた。

僕の思い描く…いや、なりたい男性像にこの世界はならせてはくれない。

それは残酷に僕へとぶつけられてくるのだった。


「あっそろそろ昼休み終わっちゃうぞ!はやく教室もどろーぜ!」


「う、うん……いこ?野上くん…」


2人に声をかけられ、半ば気のない返事をしつつ教室へ戻っていく。

僕の隣の席には舞桜ちゃんがいる。

僕が席に着くと「大丈夫?顔色悪いよ?」と


「大丈夫だよ…ちょっと遊びすぎたのかも」


「ほんとに?……何かあったのなら言ってね?私が守ってあげるから…ね?」


「ッ…………ありがとう…」


舞桜ちゃんのその言葉に僕はまた打たれる。

守ってあげる。

違う、僕は守ってもらいたいんじゃない…守りたいんだ…

だってそれが、僕の……男としてやらなきゃいけないことだから……



次の日


今日から体育がプールとなっていた。

朝から教室中は体育の時間が来るのを今か今かと待ちわびた雰囲気。

体育の前の時間の終了チャイムが鳴ると同時にクラスの女子は一斉に着替え始めた。

少しでも早くプールに入りたい様子。

僕と杉田くんと石川くんは足早に教室を出る。

このまま教室にいると着替えられないだけじゃなく、女子が裸を見せびらかしてくるのだ。

杉田くんから聞いた話だと、女子は


「ほらほら、おっぱいアタッーク!」


「うわっ!今コイツ私の股見てきた!ずるいぞそっちのも見せろ!」


といったように見せびらかしながら嫌がらせというか、セクハラをしてくるらしい。

幼い興味がそういった事をさせるのだろうか?それにしても恥ずかしい


更衣室に入りてきぱきと着替え始める。


「お!今日はちゃんと持ってきたんだな」


「あーうん。さすがに掃除の時で思い知ったからね…」


「や、やっぱりないと入れないよね…」


舞桜ちゃんに怒られたせいもあってしっかりとパッドを持ってきていた。

しかしながらこのパッド、つけ心地が悪い。

悪いというか慣れていない。いつもつけているブラジャーとは違ってしっかりと固定されている訳でもないし、なにより水着の下になにか付けるというのに違和感。


水着の上着というのもあまり慣れていないのにパッドまでつけているのだから違和感があって当然だった。

そしてつけてみてわかったのだが、ブラジャーと違って胸がかなり強調される。

今僕が私服で使っているブラジャーはスポーツタイプのもので着用しても胸のサイズに変化はなく平ら。

それに比べてこのパッドは胸が盛り上がってしまう。

ニップレスは目立たないだろうが、その代わりバストアップされてしまった。

これはこれで恥ずかしい。



着替え終わり以前のように隠れながらではなく並んでプールサイドへ向かった。

プールには綺麗な水が溜まっていて、日差しが反射してきらめいている。

ほのかに消毒の塩素が香っていて、僕は懐かしく感じていた。この塩素の匂いこそプールという感じがする。

次第に女子達も揃い、七海先生が来て授業が始まる。

整列して、準備運動。

女子は早くプールに入りたいと呟きながら準備運動を行っていた。


準備運動が終わったあとはシャワーと塩素消毒。

冷たいシャワーを浴びて黄色い声がこだまする。塩素消毒曹に腰までつかり数を数えてから出てまたシャワー。

クラスのみんなは冷たくて苦手だとか、こんなことより早くプールに!と言っていたが僕はこんな準備ですら楽しかった。

ひとつひとつがとても懐かしく、心地よかった。


「はーい、それじゃあみんなゆっくりプールに入るのよー?飛び込んだ人は泳がせないからねー!」


「「「「はーいっ!」」」」


待ってましたというように皆笑顔でプールに浸かっていく。

太陽で温められたプールの水は先程のシャワーより暖かく、少しぬるく感じた。


「あはは!あったかーい!」


「見てみて!私プールの底に手がつくんだよ!」


「私だってそれくらいできるし!」


各々プールを楽しんでいた。


女子が楽しそうに声を出している中、僕達3人は固まってプールに入っていた。

何となく…固まっていないと女子に囲まれそうだった。


「なぁ…なんで女子ってあんなプールが好きなんだろうな?」


「さ、さぁ……でもすごいよね、あんな元気で…」


「え?2人は楽しくないの?」


2人が女子を遠い目で見つめながら話いるのに疑問に思ってしまった。


「楽しくないっていうか…普通?」


「う、うん…恥ずかしいってのも、あるかな…」


「えー。こんなに楽しいのに…」


そんな二人とは違い僕は珍しくテンションが上がっていた。

久々のプール。前世でも好きで、毎回楽しみにしていた。


「野上は楽しそうだな…」


杉田くんが呆れたように言うが、それに対して「うんっ!」と元気に返事をしてしまうくらいにはテンションが高かった。


「はーい、それじゃあみんな泳ぎの練習始めるわよー?レーンに並んでねー」


七海先生の号令にみんな並びはじめる。

横15mをみんなで泳いでみるのだ。

しかし、これが大変だった。泳ぐのが大変なのではなく、列で待つのが大変だった。

先程までとは違って男女混ざってレーンに並ばなくてはならなかった。

その為僕達3人は離れ離れ。当然周りに並んでいるのは女子ばかり。

何気なく並んでいると不意にお尻を触られた感触。

振り返ると「あ、ごめーん当たっちゃった」と女の子がいう。

「大丈夫だよ」と声をかけ前を向くと今度は太ももをサワっと感触がよぎる。


「ごめーんちょっとバランス崩れそうになったから掴んじゃった」


「い、いや大丈夫だよ…」


ごめんというその子の顔はあからさまにニヤニヤしていた。

確実にわざとだった。

水中ではいかに自然に触ってやるかというセクハラ合戦が繰り広げられていたのだ。


正直なところ身体を触られるのに不快感はなかったのだが、このまま好きに触らせてエスカレートしてくると僕以外にもその行き過ぎたセクハラが牙を向いてしまうのではと危惧していた。

注意するにも、こんなこと面と向かって言ってしまっては言われた女子はかなり傷ついてしまうだろう。

それに、気づかれないように誤魔化しながらやっているのだ。シラを切られる場合もあった。


どうしようかと考えてると、女子達が僕から少し離れた。

どうしたのかと後ろを振り向くと、そこには舞桜ちゃんが立っていた。


「蒼空くん、大丈夫?」


「うん?大丈夫だよ?」

セクハラのことに気づいているのか分からなかった為、知らないふりをする。


「ごめんね、遅れちゃって。怖かったよね、ごめんね…」


そう言って舞桜ちゃんは僕に抱きついてきた。女の子の感触が僕を包む。


「ねぇ……蒼空くんに変な事してたり……しないよね?みんな?」


僕を抱きしめながら舞桜ちゃんは周りにいた女子にそう声をかけた。

僕は抱きしめられていて舞桜ちゃんの表情を確認できないが、その声だけで怒っていると感じることができた。


「……ふぅ。ごめんね蒼空くん。ここからは一緒にいてあげるからね?」


その声にまた優しさを乗せて話しかけてくる舞桜ちゃん。


僕はまた舞桜ちゃんに守られてしまっていたのだった。




小学校のプールを思い出しながら書いてます。


妹に聞いたところ今ってシャワー浴びないんだってね……ははは……(´・ω・`)

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