星野さん
その後、星野さんに言われ女の子達は自分の席へと散って行った。
周りから人がいなくなり、1人項垂れている杉田くんに声をかける星野さん。
「正人ぉーおはよ。」
「…………」
「もぉー返事もできないのー?」
「………うるさい。あっち行けよ……」
「はぁーもぅまたなのー?だから直せって言ったのにぃー。それじゃあーまた後でねー?」
そう言って星野さんも自分の席へと戻って行った。
杉田くんと同じ学級委員の星野さん。
彼女は杉田くんに対していつもどおりに接していた。
イジめに加わることも、イジめを否定することもせずにただいつものように。
星野さんは杉田くんと何か関係があるのだろうか?
もしかしたら何か解決の糸口になるかもしれない。
僕はそう思い放課後、星野さんに聞いてみることにした。
「野上くんなにー?話ってー」
「ごめんね星野さん。えっと…杉田くんの事で聞きたいことがあって」
「正人のー?なにー?」
「えっと…星野さんは朝の事…杉田くんがされてた事、わかってた?」
「朝ー?イジめー?」
「う、うん。そうなんだけど…」
星野さんはなんだかゆっくりとした話し方をしている子だった。
のんびりというか、のほほんというか。
もしかしたらイジめのことがわかってなかっただけなのかもしれないと考えていたが違ったみたい。
ちゃんと朝のことは理解していた。
「あれがどうかしたのー?あっ野上くんごめんねー?正人がいろいろしてたみたいでー」
ハッとしたあと星野さんはペコリと頭を下げて謝った。
「あ、違うんだっ。謝って欲しいとかそういうんじゃないんだ…」
「んー?」
「えっと……僕はね、杉田くんのことを怒ってたり恨んだりしてるわけじゃないんだ。できれば仲良くしたい。…だけど、クラスの女の子達があんな状況で。それで、杉田くんに普通に話してた星野さんに話を聞いてみようかなって。」
「えぇーっとぉ?」
「うんとね、星野さんは…どうして杉田くんへの態度変えたりしなかったの?」
「えー?だって正人は正人だもん。イジめはー悪い事だけどぉ正人ならやりそうかなってー」
「星野さんは杉田くんと仲がいいの?」
「私と正人は家がとなりの幼馴染みだよぉー」
幼馴染み。
そうか、だから杉田くんと親しそうにしていたのか。
「正人はねー昔っから女の子みたいでーそのくせに女の子からモテたくてー」
そう言うと星野さんは杉田くんとの過去を話始めてくれた。
「正人ねーちょっと綺麗だから昔から女の子に人気でーいっつも女の子に囲まれてたんだー」
確かに、杉田くんは整った顔をしていると思う。
「それでねー小学校に入ったら、他にも男の子がいてねー。他にも綺麗な男の子居たから、正人の周りから人が少なくなってねー正人ショック受けてたんだぁー」
今回だけではなかったらしい。
入学した時も同じような状況が…?
「でもねー少なくなってもやっぱ女の子が周りに居たもんだからすぐに立ち直ったんだぁー。でもでもー二年生になった時石川くんと一緒のクラスになってぇー 」
石川くん。このクラスで僕と杉田くんの他に一人だけいる男の子。
よく杉田くんと一緒にいるのを見かけるけど…
「ほらぁー石川くんって、男の子って感じでしょー?正人と違ってしずかでお淑やかだから正人より人気でー。それを見た正人が石川くんにちょっかい出したりしたんだー」
そんな事があったのか。
ちょっかい……たぶん、イジめとまではいかないけどレベルだったんだろう。
「それでー石川くん、人見知りっていうか臆病なところもあるからー正人のこと怖がっちゃってー泣いちゃったんだぁ。…でもね、それ見た正人が悪い事したなって反省してー石川くんに謝ったのー。ごめんねってー友達になろってー」
「その時はクラスのみんなに泣かせたことバレてなかったしー石川くんもすぐ正人のこと許してくれたからー何にも起きなかったのー。あ、でもでもちゃんとわたしも怒ったんだよー?こんなことするなーって!」
ふんすっといった表情で星野さんは言う。手はガッツポーズ。
「それでねーそこから石川くんと正人仲良くなってー正人のそばに石川くんずっとくっつく様になってー女の子達も自然と正人の周りに戻ってきてー。石川くん、元々女の子怖かったみたいでー正人守ってあげてたみたいなのー」
そうか…杉田くんは、女の子達からのことだけじゃなくて…石川くんを守るって立場も僕のせいで失っていたんだ…
「そこから5年生になるまではー大体変わらずかなー。…それでねー」
声のトーンを落として星野さんは話す。
「野上くんが来てからー正人が不安そうにしてたの見ててー。正人が野上くんにイジめしてたのわたしも見てたんだー。それでね、わたし正人にやめなよーって言ってたんだけど、正人言うこと聞かなくてー。ごめんね、止められなくて。」
またペコリと頭を下げる星野さん。
「ううん。ほんとに、大丈夫だよ。……星野さんは、そういう杉田くんの事嫌いになったりはしないの?」
「んーしないかなー?だって、そういうところも正人だしー。あ、イジめは許せないよー?」
星野さんは、杉田くんのそういう幼い面も踏まえて友人であり続けると言った。
他の女の子達とは違っていた。
「…ねぇ?星野さん?……女の子達のこと怖くないの?」
「えー?どういうことー?」
「えっと…一緒にやんないとーとか、仲間はずれみたいな…」
「あーうんー。たしかにそういうのあるかもー。でも、わたしは気にしないかなー。だって…」
星野さんは目に力込めて言った。
「わたしが居なくなったら、正人のこと許してあげる人居なくなっちゃうからー。」
星野さんは……たぶん、杉田くんの事が好きなのかもしれない。
そして強い。しっかりと、星野さんは自分を持っている。
「……野上くんは、正人のこと許してくれるー? 」
「…うん。許してるよ。」
「ありがとー。」
「ううん。僕の方こそ、教えてくれてありがとう。」
僕は、話しているうちに考えたことを言う。
「…ねぇ?星野さん?お願いがあるんだけど…」
「んー?なにー?」
「このまま、杉田くんのそばにいてあげてくれないかな?それで、女の子達から守ってあげて欲しいんだ。」
「もっちろーん。当然だよー」
「ありがとう。……それと、僕も杉田くんと仲良くなりたい。石川くんのように。だから――」
僕は星野さんにいくつかお願いをした。
杉田くんを守るために。
そして舞桜ちゃんも守れる最善を、僕はとろうとしていた。
早く…早く日常パートまで行かないと…




