いじめ終息
翌日も杉田くんのいじめは続いていた。
昨日と変わらずに女の子達が囲んでいる。
僕はその塊へと向かっていく。
「おはよう!杉田くん!」
「「「……え?」」」
女の子達がそれを見て疑問の声をあげた。
おそらく杉田くん自身も。
「おはようだよ杉田くん。今日もよろしくね!」
僕は元気に挨拶をしてから自分の席へと戻る。
女の子達は何が起きたのか戸惑っていたが、次第に理解していったのか僕の席へと問いただしにきた。
「の、野上くん!いいの?!」
「あいつにイジメられてたんでしょ?!」
「挨拶なんてする必要ないって!」
「もしかして杉田に無理やり?!」
女の子達は確認するように聞いてくる。
それに対して僕は答える。
「うん。イジメられてたよ?」
「「「……… 」 」」
あっさと認めたことにまたもや女の子達は戸惑っていた。
「確かに、僕は杉田くんにイジメられてた。酷いよね、杉田くん」
今度はこちらから聞き返す。
「で、でしょ?!」
「杉田さいてーだよね!」
「杉田なんかに挨拶しなくていいんだよ?!」
みんな思い思いの言葉を口にする。
イジメられてたのならなぜそんなことをするのかと。
「………でもね、僕許しちゃった。気にしないことにした」
「「「えっ……」」」
女の子達はぽかんとしている。
「だって、あんな小さい子供みたいな事気にすることないかなってさ。みんなはそう思わない?」
「「「……」」」
女の子達はふに落ないといった表情を浮かばせる。
当然だろう、自分達に助けを求めたであろう人物がもう助け入らない、むしろ助けてもらう様な事じゃなかったと言っているのだから。
女の子達は僕から離れてまた杉田くんの席へ向かう。
そう、僕が許したからと言って終わるわけではない。
僕1人では、意味が無い。しかし、杉田くんにはもう一人いる。
「おはよー正人ぉー。」
星野さんだ。
女の子達が杉田くんを囲む前に、星野さんは既に杉田くんのそばに来ていた。
「……話しかけんなよ。……お前、わかってんだろ……」
「んー?いじめのことー?知ってるよぉ正人ってばさいてーだよねー。」
「っ……なら、もう話しかけんなよ。…」
二人が話をしていると、女の子達の一人が星野さんに話しかける。
「ちょっと美奈ちゃん!昨日言ったじゃん!」
「あー正人のいじめのことー?」
「そうだよ!こいつっ!ほんとにっ」
「でもー私も正人のこと許しちゃってるからー」
「は、はぁ?」
「野上くんが許したよーにー私も正人のこと許したんだぁー。」
「ど、どうしてよ!」
「だってさぁー正人がいじめた理由きいたー?私たちが野上くんのことばーっか構うからなんだってさー。おかしいよねー。」
星野さんは女の子にいじめの理由を暴露していった。
杉田くんが僕に話したように。
「だからー怒るのもなーって。野上くんが許さないっていうなら違うけどーそうじゃないしー。」
はぁとため息をつく星野さんに女の子達はどうしようか悩んでいるようだった。
そうしている間に予鈴がなり皆席へと戻っていく。
妥協点を作ればいい。
僕が昨日考えたことだった。
今回の事で悪いのは杉田くんであることは間違いない。
女の子達は幼さゆえにその正義感を発揮してしまっただけだ。
それを真っ向から否定できるわけもなく、完全に止めることもできない。
間違っていたとなれば発信者である舞桜ちゃんが。
何もしなければこのまま杉田くんが駄目になる。
この二人を守り尚且つ、女の子達にいじめをやめさせる。
この条件をクリアしなくてはいけない。
ならばどうするか?女の子達に、もういいかと妥協させることだった。
女の子達を否定することもせず、真っ向から止めるわけでもない。
この辺にしとこうと思わせることだった。
僕1人が杉田くんを許すと言ったところで女の子達は止まらなかっただろう。自分達の中で、【杉田くんに僕が脅されている】といった理屈を生み出しいじめ続ける。
しかし、自分達の中からも許す人物が現れたらどうか。
それが星野さん。
許し方にも理由があった。
ただ許すのではなくその理由にいじめてもしょうがないと思わせられる理由が必要だった。
その為に僕はイジめられていた事を認め、星野さんはいじめの理由を暴露したのだ。
女の子達に、いじめてもしょうがない。
いじめるには幼稚すぎると思わせたのだ。
小学校高学年になる5年生。
この年齢の子供は背伸びをし始める。
もちろん身長的な意味ではなく内面的な事でだ。
ちょっとお姉さんぶってみたり、大人の会話に混じってみたり、服装なども幼稚な物からお洒落な物へと変わっていく時期。
その年齢の子供は子供っぽいと言われること、思われることを嫌い始める。
友達同士で遊んでいても、人形遊びやおままごとなどは友達に幼稚だと思われないように避け始めるのだ。
そして、今回のいじめの理由。
僕も星野さんもしょうがない、小さい子供といったように幼稚な事だとアピールした。
杉田くんのいじめは幼稚な事で、それを批難するのは大人気ないのでは…と女の子達に感じさせる。
いじめの被害者である僕が許し、女の子である星野さんも許した。
そしていじめの行為は幼稚だというイメージ。
こうなると女の子達の取る行動は決まってくる。
数日後には
「ま、まぁ野上くんが許したのならいっかなー」
「たしかに、子供っぽすぎて馬鹿みたいだし…」
「所詮杉田はまだまだ小さい子供ってことだねー」
といったように女の子達の数は少なくなっていき次第にいじめは終息していく。
よかった…僕はなんとかすることができた。
これを星野さんに話した時、星野さんにはピンときてもらえなかった。
それはそうだろう。同い年の子を子供っぽいだとか幼稚だとか思わせないようになんて、普通は考えない。
ピンときていない様子の星野さんだったが、これで正人がいじめられなくなるならと承諾してくれた。
「ねぇ?なんでこんなことしたの?」
いじめが終息し始めたある日のお昼休み、舞桜ちゃんが話しかけてきた。
「なんにもしないでって言ったのに。黙ってれば、あいつ居なくなったかもしれないんだよ?」
「舞桜ちゃん…」
舞桜ちゃんは未だに杉田くんを許していなかった。
「それに、もし女の子達が諦めなかったらどうしてたの?」
「その時は、残念だけど僕が学校来なくなってたと思うよ。さすがに僕の方が来なくなれば女の子達にも非が出始めるだろうし」
「それだと、残されたあいつは?多分、女の子達に八つ当たりみたいなことされるよ?」
「杉田くんには星野さんがついてるから大丈夫だよ。八つ当たりレベルなら耐えられる。石川くんだっているしね。」
「………蒼空くんは、まだわかってない。」
「うん?」
「蒼空くんはまだわかってないよ。……男の子は、そんなに強くないの。」
「…………」
「心も、身体も、強いのは女の子の方だよ。……蒼空だって、本当はしんどかったんでしょ?」
「僕は、大丈夫だよ。……杉田くんにとっての星野さんのように、僕には舞桜ちゃんがいたから。ありがとう、舞桜ちゃん。いじめのこと。」
「…………キス」
「え?」
「私は蒼空くんのこと守ろうとしたのに蒼空くんはそれを無下にした。そのお詫び」
「えっと?」
「私はほかの子みたいにしょうがないからって許したりはしない。………キスしてくれなきゃ、あいつも無下にした蒼空くんも許さない」
「………ほ、ほんとに?」
「うん。私、嘘ついたことある?」
ない。舞桜ちゃんが言うことは全て正しかった。
「こ、今度でいいかな?!こ、ここじゃ人いるし、恥ずかしいし…」
「今度っていつ?どこ?」
「えっと…あ!そうだ!今週の土曜日遊ぼうよ!僕の家で!」
「?蒼空くんの家?」
「う、うんそう!舞桜ちゃんには他にも今までのお礼したいし!と、父さんや母さんにも教えたいし
!」
「……いいよ。なら今度の土曜日、蒼空くんの家に行くから。……忘れないでね?」
「う、うん!」
苦し紛れになんとか先伸ばしにしようと言った。
後々考えるとなんて馬鹿なこと言ったんだろうと、僕は後悔していた…
舞桜ちゃんが家に来るっつーことはつまり響と渚に舞桜ちゃんが遭遇する訳ですね。
よーし、頑張って書いてくぞ!




