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リハビリの始まり

こまめな保存しとかないと…


蒼空が眠ってしまったあと少しして渚と蒼海は帰宅した。


「あっおかえりー」


「ただいま響っ!」


「パパただいまー!」


帰ってくるなり興奮気味の二人を見て響は困惑する。


「ど、どうしたの2人ともそんな大きな声出して…」


「聞いて響っ!今日―――」


「お兄ちゃんが喋ったのー!!!」


渚が言おうとした所で蒼海が言ってしまう。


「あー!もぅせっかくママが言おうとしたのにー!」


「…それ、本当に?」


響はその言葉を聞いて固まりつつもそう口にした。


「本当よ!まぁ喋ったっていっても声を出しただけだけどね。でもあれはたしかに蒼空くんの口からでてたわ!ねー?蒼海ちゃん?」


「うん!お兄ちゃんちゃんと声出したんだよっ!すぐ眠っちゃったけど、すっごい綺麗な声だった!」


二人の話を聞いて響はようやく本当のことだと伝わる。


「こんなに…早く…」


「まぁ響には残念だったけど?久々に聞いたのは私達がってことになるわ―――」


響に少し自慢してやろうと意地悪な言い方をしようとした時、渚は響が涙を流しているのに気がつく。


「……うっ……ううっ……」


「……え?!ひ、響?!…ど、どうしたの?!」


渚は困惑した。この程度の意地悪なら今まで二人で一緒に過ごしてきた中ならよくあることだった。意地悪そうに渚が言って、それを響が悔しがってりして…立場は入れ替わることもあったが、何時も笑い飛ばしていたのは変わらないはずだった。

しかし、響は現にこうして涙を流している。


「あーー!!ママ、パパ泣かしたー!」


いつもと違う状況に陥りあたふたしている渚に蒼海が追い討ちを掛ける。


「ぐすっ…ぅうぅ…」


「っ!!ご、ごめんなさい響っ!私、浮かれてあんなこと言っちゃって……響だって本当に聞きたかったはずなのに私は…ごめんなさい…」


ついには謝っている渚本人も涙を浮かばせ始めた。


「…いやっ…渚のせいじゃないよ…ただっ…うれ、しくて……」


そう、響はなにも悔しくて泣いていたわけじゃない。蒼空の回復の早さに涙していた。

それを聞いた渚は響に近づいて優しく包み込む。


「…ごめんね響。わかってあげられてなくて。……思いっきり泣いていいのよ。今まで頑張ってきたんだもん。」


そう言って響の顔を胸に引き寄せる。

響は渚の胸に顔を埋めながら涙を流した。


「ほら、蒼海もおいで?一緒にパパぎゅーってしてあげよ?」


「うんっ!いい子いい子してあげる!」


そう言って二人は響の頭を撫でていく。


響はしばらくして泣きやんだが、自分の状況に顔を赤くしてしばらくの間胸に顔を埋めたままだった。




翌日、響は病室に行くと先生に呼ばれ医務室に来ていた。


「先生、はなしとは?」


「はい。蒼空くんのリハビリについてです。」


ついに始まるのかと響は思う。

意識が回復したのなら、次は動ける様になること。


「まずはじめは全身のマッサージから始めようと思います。」


「マッサージですか?」


「はい。まず、今の蒼空くんには筋力も手足の感覚もありません。いくら本人が動かそうと意識してもこれでは動かせません。」


「たしかに.」


「そこで、マッサージです。全身の血流を良くして血液を循環させます。そうすることによって今現在眠っている蒼空くんの神経を目覚めさせます。そして、直接手足に触れることでその感覚も戻りやすくしていくというわけです。」


「なるほど……その、マッサージは私達にもできることなんでしょうか?」


響は恐る恐る聞いた。出来ればやりたい。いや、可能なら頭を下げてでもやりたい。

響達三人は自分達の手で蒼空を支えていきたいと考えてた。


蒼空が眠っている間は声をかける事しかできなかった。そのため、些細なことでも自分達でやりたかった。


「はい、可能ですよ。始めの数回はトレーナーと御一緒してもらって、慣れてくれば全てお任せできるはずです。」


その言葉を聞いて響はホッとした。自分達でできることがあるのだと喜んだ。


「ありがとうございます。」


「いえいえ…それではさっそくトレーナーを紹介致しますので…」


そう言って響と先生は蒼空の病室へ向かい、先に来て待っていたトレーナーと面会する。

トレーナーにマッサージを教えてもらう響は真剣そのものだった。

何一つ聞き逃さないように集中しながら聞いていた。



それから1ヶ月程が経った。響達は毎日マッサージを欠かさず続けていた。

次第に肌の血色が良くなる蒼空をみて響達は喜んだ。

しかし、喜ばしい事だけではなかった。渚が蒼空の声を聞いたと言っていた日以降、蒼空は口を開こうとすらしなかったのだ。


泣くことも叫ぶこともしない。本来精神は赤ちゃんであるはずの蒼空にしては異常なことだった。


そんなある休日。

休日には三人で来ている響達なのだがこの日は先生に医務室に来てくれと言われていた。


医務室に入るなり先生は重い表情をしながら話始める。


「蒼空くんの障害のことでお話があります。」


障害。その言葉を聞いて響と渚は身構えた。ついに来たかと思う。


「蒼空くんは順調に回復していると思います。血流も安定してきましたし、肌の触感もほぼ通常に戻っているかと。手足を動かせる様になるのも近いです。しかし…」


先生は躊躇いつつも話を続けていく。


「…しかし、口を開かないというのが異常です。検査の結果蒼空くんの声帯は通常に機能できるまで回復していました。言葉を覚えていない以上、言葉を口にすることはできなくとも泣いたり、叫んだりはできるはずなんです。むしろ、赤ちゃんとしてならしてもらわないと困る。」


その言葉に響達は不安の色を強くする。自分達でも感じていた異常。

やはりプロである先生も当然感じていた。


「……おそらくですが、知的障害の可能性があります。」


初めて出た具体的な障害の名前。


響達は息を呑む。


「自身の体の変化にも感情の変化を見せず、声を出せるのに出さない。これは、脳がそれを認証できていないと考えられます。異常だと認知できないんです。」


「そ、それは…確定、なんですか?」


響は先生に問う。


「いえ、身体を動かせる様になってからではないと確実とはいえません。脳波から調べても知的障害の場合見つからない場合もあるんです。実際に身体を動かしてみて、しっかりと動かせているかどうかを見極めないと…」


「そう…ですか」


響はそれをきいて落ち込む。渚も同様に肩を落としていた。そんな二人をみて蒼海も不安そうな表情を浮かべる。


「知的障害にも様々なケースがあります。それに、知的障害ではなく言語障害という可能性も捨て切れません。…御家族の方には、今後リハビリが進むにつれてそういった些細な異常を見つけた場合私共にお伝えできればと。」


「はい…わかりました。」



響達は話が終わった後蒼空の病室へ戻っていた。

病室へ入ると蒼空は目覚めており、おはようと三人は蒼空に声をかける。


「それじゃ、マッサージしようか。」


そうして三人はいつものようにマッサージをはじめる。

障害があると言われ落ち込みながらも蒼空の前では平常を心がけていた。


渚が蒼空の手を揉みほぐそうとしたとき、ピクリと蒼空の手が動いた。

自分が動かしたのではないかと渚は一旦手を離す。すると、蒼空の手はピクピクと指先を動かしていた。


渚はそれを見て涙を流す。異変に気づいた蒼海と響も蒼空の指を見て驚く。


渚は蒼空の手を掴み涙を流して喜ぶ。心の中に障害という文字は消えてはくれていなかったが今はこの事実を喜んでいたかった。



これを書いてる途中に一回すべて消してしまった。泣きそうだった…こまめな保存しないとな。



そして最近いきなり数件ブクマ増えたりしてびっくりしている作者です。

「え?!また増えてルゥ?!」と喜んでおります。


見てくれてる人は一体どこから来てくれているのでしょう?私、気になります!

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