話そう
少女が病室を出て行ってすぐに父さん達は戻ってきた。
「ただいま蒼空くん。大丈夫だった?」
父さんは僕の頭を撫でながらそう言う。
「う、うん。大丈夫だよ…」
一方僕は未だに顔が赤いままだった。時間が経って余計に恥ずかしくなる。
「…なんだか顔が赤いぞ?ね、熱でもあるのかっ?!」
父さん僕が顔を赤らめているのに気づき熱があるのかと心配してきた。おでこに手を当てて熱を測る。
「……うーん。熱くはないと思うけど…蒼空くん、体調は大丈夫?」
父さんは心配してそう言ってくれているのだが、僕は余計に恥ずかしくなってくる。
「だ、だいじょうぶっ…だよ。ほ、ほんとに」
わたわたとしながら返事をする。
父さんはそれならいいんだけど…と一安心した様だった。
「念の為体温を測っておきましょうか 。」
そう言って今度は先生が体温計で熱を測るようにと言ってきた。僕は恥ずかしながらも脇に挟み熱を測る。
ピピッと体温計が測り終わる音。
「………うん。平熱ですね。特に熱というわけではないようです。念の為抗生剤を出しておきます。」
まさか顔を赤らめただけで薬まで飲む羽目になるとは…。
僕はこの話題を変えるために父さんに話しかける。
「ね、ねぇ父さん?先生となにをはなしていたの?」
僕ははっきりと言葉を出しながらそう聞いた。喉もだいぶ慣れてきてもう普通に話せるようにはなっていた。
「……うん。蒼空くんのことだよ。……えっとね、蒼空くんは寝ている間の事覚えてる?」
「寝てる時のこと?」
父さんは僕にそう聞いてきた。
「なんでもいいんだ。長い間寝ていた時のこと、なにか覚えてたりしたら教えてくれないかい?」
「うん……えっと、夢を見てたような気がする。」
「夢?……どんな、夢かな?」
うん。と僕は寝ていた時に見ていた夢の話を始める。
たくさんの泣いている声が聞こえた事。
たくさんごめんねという声が聞こえた事。
手を握られた感触。
僕を呼んでくれた声のことを。
「………そっか。ありがとう蒼空くん。話してくれて。」
そういうと父さんはまた僕の頭を撫でてくれる。
「えっと……何か分かったの?」
僕は少し不安になりながら聞いてみる。もし僕がおかしいと思われてしまったらどうしようと。しかし…
「うん。わかったよ。蒼空くんが俺の大事な息子に変わりないってことがね。」
そう、笑顔で父さんは言ってきた。
「うん。うん!蒼空くんだよ!……目覚めてくれて、ありがとうな。」
そういう父さんの目元にはほんの少しだけ、光が写っていた。
「それでな蒼空くん。ママと蒼海ちゃんには最初に俺から話をするから、それまですこし病室で待っててくれないかな?」
あの後先生に体調のチェックをされた後、病室に僕と父さんの二人だけになった。
そのタイミングで父さんがそう言ってきた。
「えっと、何を説明するの?」
「いや、蒼空くんが話せるようになったことをさ。……ママや蒼海ちゃんにいきなり蒼空くんが話しかけたら、多分さっきの俺以上にビックリすると思うんだ。多分ママなんか腰を抜かしちゃう。」
そう言って父さんは軽く笑っている。
「だからね、俺がまず二人に話すからそれまでは話しかけたりしちゃダメだぞ?」
「うん。わかったよ。」
そうか。確かに母さんは腰を抜かすかもしれないなと思った。蒼海ちゃんだってもしかしたらビックリしすぎて泣いちゃうかもしれない…
「そう言うことだからよろしくね。」
よしっと父さんは一声言うと手をパンっと打って話を変える。
「それじゃあ蒼空くん!パパとお話しようか!」
父さんはニコニコしながら僕にそう言ってきた。
「うん。僕も父さんともっと話がしたいな。」
「おお!そうかぁならたくさんお話しないとな!二人が来る前にいっぱいお話して自慢してやろう!」
子供のようにはしゃぎながら父さんは僕と話始める。
退院したらどこに行こうか。
一緒にどこへ出かけようか。
好きな食べ物。好きな色。
嫌いな食べ物。苦手な先生。
あとは、パパママって呼んで欲しいって事も。
そんな親子にとっては当たり前のような会話をした。
これまで話せなかった事を埋めていくように、僕と父さんは母さんと蒼海ちゃんが来るまで話続けていた。
次回から主人公が目覚めた後のパパママ目線書いていきます。
コメントとメッセージくれた人ありがとうございました。




