頬を染めて
「ねぇ?どうして話したりしたの?」
少女はそう言いながら近づいてきた。
「蒼空くん?もう、話せるんだよね?」
そう口にする少女は既に目の前に来ていた。
僕は言い様のない緊張を味わいながら答える。
「と、父さんに、分かってもらいたかったから…」
本当のことだ。ありのままを伝える。
この少女に嘘や誤魔化しなんて効かないと本能的に感じた。
「…ふぅーん。そっか。」
少女は短く返事をしたあと、また質問をしてきた。
「ねぇ?なんでそんなに頑張ってるの?足が動かなくたって大丈夫だって両親も言ってくれてたんでしょ?」
それに、と少女は続ける
「リハビリだって大変じゃない。あんなに苦しそうにしながら汗たくさんかいて、おまけに身体だって筋肉痛でたまらないほど痛いんでしょう?」
少女は僕のことを見透かしたように言ってくる。
確かに当たっている。父さん達は歩けなくてもいいと言ってくれた。
リハビリだってとても苦しい。腕は毎日のように悲鳴をあげてるし脚は言うことを聞いてくれない。
でも、
「それでも、僕は歩きたい。父さんや母さん、蒼海ちゃんと一緒に。それに、君…舞桜ちゃんとも…」
僕はそう告げた。
「そっかぁ…やっぱりまだ蒼空くんは蒼空くんだよね。……うん。頑張っちゃうよね蒼空くんは。」
「……うん?」
少女はよくわからない事を言っていた。僕が僕なのは当然だ。頑張っちゃうって一体…
「いいの。気にしないで。……それより、リハビリこれからもしていくんでしょ?頑張ってね?応援してるから」
少女は話を逸らすとそう僕にエールを送ってきた。
「あ、ありがとう……あっ!ねぇ!それより聞きたい事があるんだ!」
僕はこの前から気になっていたことを聞こうとする。
以前は僕が話せなかったから聞けなかったが今はちがう。
「ど、どうして君は僕のことをそんなに知っているの?僕が考えてる事とか、身体のこととか。それにっ!父さん達のことだっ――」
最後まで言えなかった。少女の指が僕の唇を抑える。
「そんなにいっぺんに聞かれても答えられないよ?それに、あんまり話してると蒼空くん疲れちゃうもん。」
少女はそう言って僕が話すのを静止させるとニコリと笑い…
「私はね、蒼空くんのことが好きなんだ。」
そう、僕に告白してきた。いきなりの事で僕は何も答えられない。
「蒼空くんが好き。大好き。好きな人のことは何だってわかるの。女の子ならみんなそうだよ?」
少女は笑顔のまま話し続ける。
「だから私は蒼空くんのことならなんだってわかるし、蒼空くんの周りのことも理解してる。今だって、蒼空くん驚いて頭の中よく分からなくなってるの伝わってきてるよ?」
少女はクスッと笑いこちらに顔を寄せてくる。
「それに」
……それに…
「私は」
……私は…
「蒼空くんの」
……蒼空くんの…
『王子様だからっ!』
頭の中で声が重なる。
目の前で話していた少女の声と、頭の中で聞こえてくる声が。
ふわりと唇が重なる。
重なっていた声に気を取られていて僕は気がつくと唇を奪われていた。
僕が目を丸くして呆然としていると少女は少し頬を染めながら話し出す。
「……これですこしは思い出したかな…?」
そう言ってこちらを見る少女の顔はほんのり赤く染まっていて、期待に満ちた目をしている。
「…えっと……ぼ、僕は…」
訳がわからず僕はどもってしまう。
「…ううん。いいの!私ったらまた先走っちゃった。いきなりごめんね?蒼空くん。嫌…だった?」
先ほどとは違い今度は不安そうな目をしていた。
「い、いや…嫌じゃなかった、けど…」
そういうと少女は顔を明るくさせてよかったと息を吐く。
「よかったぁ…もし嫌なことだったら私どうなってたかわかんないもん。ありがと!蒼空くん!」
嬉しそうにしている少女を見て僕は先ほどの感触を思い出す。
とても柔らかくて、暖かくて、それに…桜のいい匂い。そんなことを思い出して僕は顔を赤くしてしまう。
「あははっ。蒼空くん照れてる!変わらないなぁ……」
そう言うと少女は後ろを向き扉の方へ歩き出す。
「それじゃあ私そろそろ行くね?もうすぐ蒼空くんのお父さん帰ってくるし。」
僕はそう言う少女のほうを見るがどうしても唇が目に入ってきてしまい赤くなってしまい言葉が出せない。まだ知りたい事があるのに…
「じゃあね蒼空くん。また今度。……次会うのは小学校でかな?…ちゃんと、待ってるからね。」
そう言って少女は病室を出ていく。
僕はそんな少女の後ろ姿を見ながら頬を赤く染めて呟いていた。
「………まお………ちゃん…………」
ヒロインによる主人公籠絡作戦
ある程度主人公目線で書いてきましたがそろそろリハビリ中のパパ目線とか入れた方がイイのかなって思ってます。
いるかいらないかコメントくだされば多い方にしようと思います




