私の罪
ママ目線
私は目の前の子を知っていた。
蒼空くん。私の大切な子供。わたし達の愛の結晶。
何で忘れてたんだっけ?…そうだ。倒れたんだ。
蒼空くんは倒れたんだ…そして…っ!目が覚めないって!!
その事を思い出した時、私は叫ばずにはいられなかった。蒼空くんが目覚めない。そんな酷いことがあるのかと。
駄目だ。私にこんなこと耐えるなんて無理だ。……忘れてしまおう。こんな辛い現実は…そんな事思った時に声が聞こえた。
蒼海ちゃんはどうするんだって。俺はどうすればいいって。
俺…そっか。その声は響のものだった。私の好きな人の声だった。
蒼海ちゃん。蒼海ちゃん…そうだ。私の大切な娘。かけがえのない私たち夫婦の娘
駄目だ駄目だ。忘れるなんてできない。壊れるわけにはいかない。蒼空くんだけじゃないんだ…今はもう娘が、蒼海ちゃんがいるんだから。
そう考えることで私はなんとかその時耐えることができた。耐えることはできたが頭の中は色々な事がぐちゃぐちゃで…とにかく休みたかった。
響が私を運んでくれているとわかる。思考はぼーっとしてるけどそれはわかった。
ここはさっきと違う病室だろうか?気がつくと私はベッドで休んでいた。
次第に蒼空くんのことを思い出していく。
なんで今まで忘れてた?いくらひどいことがあったからと言って何年間も忘れていられたのか?
なんで…そういえば響は平気そうだった。蒼空くんを見ても私みたいになってなかった。
………響は覚えていた?…だったらなんで私に教えてくれなかった?
なんで…隠していた?
そう思ったとき響への怒りがこみ上げてきた。なんで、どうして教えてくれなかったと。響が教えてくれていれば私は――
深く考える前に私は行動に出ていた。さっきの病室に戻らないと。響に聞かないと気が済まない。どうして隠してきたのか。
病室につくと私は扉を開ける。そこには響と眠ったままの蒼空くんがいた。
響はどうやら先生が入ってきたと思ったのか私に先生と呼びかけて止まった。
そんな響に私は近づいて問いかける。なんで、どうしてと。
響は何か言いかけていたが口ごもり、そして一言ごめんと言った。
私はそんな言葉を聞きたかったんじゃない!どうしてあの時教えてくれなかったのか!…あの時…あの時?
私は次第に記憶が鮮明になっていくのを感じた。
あの時……そうだ。響はあの時先生に会っていたんじゃなくて、蒼空くんのお見舞いに来ていた?
私は思い出していた。響が浮気をしていたと疑った時のこと。
そうだ…そうに違いない。響は先生とそういう関係だった訳じゃないんだ。………じゃあ姉さんも……っ?!
頭の中でパズルが組み上がっていった。記憶がどんどん戻っていき、わからなかったピースがどんどん埋まって、繋がっていく。
あの時の姉さんは浮気を協力してたんじゃなくてお見舞いに行くための隠れ蓑だった?何故?………私に隠すため?
隠すためだとしたら、なぜ隠す必要があった?
そこまで考えて今自分が響にとった行動が間違いだったと気付く。
そうだ……言える訳が無い!だって今まで私は忘れていたんだから!
蒼空くんが目覚めないと聞いただけで私は記憶を消してしまったんだ…そんな私に同じ様に蒼空くんのことを伝えるなんてできる訳が無い!
現にさっきだって私は記憶を消そうとしていた。それを踏みとどまれたのは響の声と蒼海ちゃんのおかげ。
蒼海ちゃんが生まれる前の私に蒼空くんのことなんか話せるわけなかったんだ…。
徐々に私は青ざめていく。
私……記憶がないからって響を疑ってあんなこと……あんな、無理やり、犯罪紛いのことを…っ?!そうだよ、あれから私は響にどれほど酷いことをした?家に縛り付けて、外出も一切させないで、毎晩毎晩無理やり響を……
やだ…私、響になんてことを…!!
響……響!!
私は大丈夫かと声をかけていた響にすがりつく。
許してもらわないと…今までしてきたことを謝らないと…
嫌われる…捨てられる…やだ、やだっ!!
私は響に謝った。とにかく、捨てないでと。離れたくないと。
いま響を離すと2度と戻ってこない気がして、とにかくすがりついた。
そんな響は私に大丈夫だと言ってくれた。
離れたりなんかしないと……居なくなったりしないって。優しく、包み込むように私に伝えてくれた。
私がすがりついている時に先生が来ていたらしい。なにか話していたみたいだけど私は何も聞き取れなかった。
私は響に連れられて病室を出る。
廊下のベンチに座りなと響に言われて座らされるが、自然と手が離れて私は焦る。まだ私は怯えていた。
ギュッと響の手を引き隣に座ってもらう。しばらくは離れたくない、響を感じていたい。
次第に落ち着いてきた私は口を開き謝罪をする。
ごめんなさいと。しかし響は大丈夫だから後でゆっくり話そうという。
今は蒼空くんのことを先生から聞こうと。それから、二人の家に帰ってゆっくり話そうと。
そのあと私達は先生の話を聞いた。
話を聞いていても記憶が戻ったばかりの私には深くは理解できなかった。ただ、蒼空くんが今こうしているのが奇跡のおかげだというのは理解できた。
話を聞き終わり、私は響と一緒に家へ帰る。手には響の手が握られており、響の体温…暖かさや優しさが伝わってくる。
家に着いたらしっかりと謝ろう。許してもらえるかわからないけど、それでもちゃんと謝るんだ。
そう考えながら家に着く。
私も響もいっぱいいっぱいで忘れてたんだ。こうなったきっかけを………あの少女のことをこの時のわたし達はすっかり頭から消え去っていた。
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