入園
今日は蒼海ちゃんの入園式。
期待に胸を踊らせながら、ピカピカの制服をきて蒼海ちゃんは座っている。
そんな娘を俺と渚は後ろにある保護者席から見ていた。
入園式と言っても名前を呼ばれたら大きな返事をして立ち上がるだけというものだが子供達にとっては初めての舞台。
子供達の席はステージ側の前列に並べられているのだが保護者席とは微妙に距離が開いている。
初めての舞台、そして親から離れているという不安からか泣き出して親の元に駆け寄っていく子もちらほらいる。
そんな中でも蒼海ちゃんはしっかりと前を見て座っていた。
「ねぇねぇ響!やっぱうちの蒼海ちゃんが一番綺麗で恰好いいわよ!」
そう渚が話しかけてくる。
「な、渚ッ!もうちょっと声のトーン抑えて!…聞こえちゃうだろ…」
渚は我が子の晴れ舞台にテンションが上がっておりそれを抑えるのに一苦労だ。
式は進み蒼海ちゃんが呼ばれる番が来た。
「ひ、響!蒼海ちゃん!蒼海ちゃんが次呼ばれるわよ!」
「わかったから落ち着いて!………す、すいません皆さん…」
ついには周りに謝り出してしまう俺。
そして園長先生が蒼海ちゃんの名前を呼ぶ。
「星組さん。野上蒼海ちゃん」
「はいっ!」
蒼海ちゃんは名前を呼ばれると今日一番の大きな声で返事をし立ち上がる。
「たいへん、元気がいいですね。では、続きまして星組さん――」
園長先生が次の名前を呼んでいく。
蒼海ちゃんは席に着くと後ろを向き、やりきった表情をしながら俺達にピースを向けてきた。
「響~!蒼海ちゃんが!元気がいいですねって!ほら!ピースしてる!!蒼海ちゃん〜!ピースピース!」
そう言いながら渚もピースをし返していた。
まったく……まぁ今日くらいは大目に見てやるか。
式が行われていく中俺は蒼空くんのことを考えていた。
本当であれは去年入園式をしていたであろう蒼空くんを。
「妹のほうが先に入園しちゃったな……」
そうつぶやくように言葉を吐いた。
隣にいる渚は蒼海ちゃんに夢中で耳には入っていなかった。
入園式の翌日、蒼海ちゃんは早く早くと俺を急かしていた。
「大丈夫だよ蒼海ちゃん。時間はまだ大丈夫だから。それよりほら、髪とかさないと……」
「ねぇーパパー!髪の毛はいいからはやくいこうよー!」
そう言いながら早く幼稚園に行きたいと蒼海ちゃんはそわそわしていた。
「もう、ほんと女の子は元気なんだから…ほら、髪の毛できた。よし、じゃあママのところに行こっか!」
「うん!ママー!じゅんびできたー!!」
そう言って蒼海ちゃんは渚のところに駆け寄っていく。
「あら〜!蒼海ちゃん綺麗!それにかっこいいわよその制服も!」
「えへへ。ありがとママ!はやくいこっ!」
蒼海ちゃんを幼稚園まで送っていくのは渚がする事になっている。ちょうど仕事に行く時間と同じなのでついでというわけだ。
「よし!じゃあ行こっか蒼海ちゃん!パパに行ってきますのチューはした?」
「ううん!まだ!……はい!パパちゅー!」
蒼海ちゃんは俺の頬にチューをしてくる。なんとも可愛らしい。
「ママもパパにチュー!!」
そう言って渚はキスをしてくる。しっかりとした深いやつ
「…ぷはぁっ。…渚、朝から蒼海ちゃんになんて事見せるんだよ……」
「えー…だってほっぺにチューされて響デレデレしてるんだもん。だ、か、ら、そのお返し!」
全く…娘にまで嫉妬するとは…。でもまぁこの程度なら可愛いものかな?
「それじゃ響、行ってきます」「パパいってきますー!」
「はい、いってらっしゃい。気をつけるんだよー!」
こうして渚と蒼海ちゃんを送り出す。
今日から毎日の朝の光景になるんだろう。そう思いながら俺は家事にとりかかる。
「よし、やるかっ!午前中に終わらせちゃうぞー!」
予定通り午前中に家事を終わらせた俺は病院に向かう。
蒼空くんに蒼海ちゃんの入園を報告しなくちゃいけない。
最近は病院に行くのが楽しみになっていた。はっきりとわかる息子の成長に、目が覚めないとわかってはいても期待しながら話しかけてしまう。
こんな日常も幸せの一つなのかなと。数年前の俺からしたら考えられない感情の変化だった。
おそらく蒼海ちゃんのおかげだろう。
彼女がすくすくと成長していくにつれいつか蒼空くんもこうやって元気になってくれるんじゃないかと思ってくる。
そんな事を考えながら俺は病院につき病室の中に入る。
希望に胸を踊らせながら扉を開けるとそこには愛する妻と、ニッコリと笑っている女の子…岡部舞桜がそこにはいた。
舞桜ちゃんと蒼海ちゃんの名前を入力ミスしそうになる




