表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/125

理由


蒼空くんに会いに行ってから3年がたっていた。

あれからも隙を見ては蒼空くんに会いに来ている。


「蒼空くん久しぶり。ちょっと身長が伸びたかな?」

俺は数日ぶりに見た息子を見てそうつぶやく。

年齢にしてもうすぐ5歳となる頃。まだまだ成長期だ。

数日でもその成長を感じ取ることができる。しっかりと、生きていると実感できていた。


「早く、目を覚ますんだぞ。」


そう言って俺は病室から出ようとすると病室の前に一人の女の子がいた。

その子は松葉杖をついていて足を怪我しているようだった。年齢はちょうど蒼空くんと同じくらいだろうか?

扉の目の前にいたのでぶつかりそうになったのだが、すんでのところで止まることができた。


「おっと、ごめんね。大丈夫?」


「うん。だいじょうぶ」


「そう、それはよかった。…この部屋に何かご用があったの?」

そう女の子に問いかける。


「うん。わたしね、おみまいにきたの」


「お見舞い?…この部屋の中の男の子に?」


「うん!」

その子は笑顔でそう答えた。

お見舞い?なんで蒼空くんに?話すこともできないのに…


「おじさんは?おじさんもおみまい?」

今度は女の子が俺に問いかける。


「うん、そうだよ。実はね、この部屋の子のパパなんだ。」

俺は正直に伝えた。すると女の子は顔を輝かせて話し出す。


「ほんと?!それじゃあおじさんがそらくんのパパだったんだ!」

蒼空くんの名前を知っている…この子はいったい。

俺は名前を聞こうとしたが先に女の子が名乗ってきた。


「あ、おなまえいってなかった。わたしのなまえはおかべまおっていいます!よろしくおねがいします!」

そう顔を輝かせながら自己紹介をしていた。幼稚園で習ったのだろうか?とても自慢げに。


岡部舞桜…たしか、数年前蒼空くんと同じ病室に入院していた子供だったはず…。その子がなぜわざわざお見舞いに?

そう疑問に思っていると廊下の向こうから女性が二人歩いてきた。一人は先生で、もう一人は……


「舞桜!また勝手に動き回って……すいません、うちの子が何かご迷惑を……あら、もしかして野上さん?」


「えーっと、すいません。どちらかで面識ありましたでしょうか?」

野上さんと言われたが俺には覚えのない人だった。失礼だとはわかっていたがこう聞くしかなかった。

「あ!いえいえこちらこそ。四年ぶりになりますかね?近所に住んでいた岡部です。岡部正美。」


そこまで言われて思い出す。そうだ、たしか蒼空くんが生まれた時に病院で会っている。

近所に住んでいたらしくこれからも宜しくとなったがその後のごたごたや俺が外出できないのですっかり忘れていた。


「あぁ岡部さん!すいません、今思い出しました。お元気でしたか?」

当り障りのない言葉で話をしていく。


「いえいえ、お気になさらずに。私も二年前に引っ越して先月ようやくこっちに戻ってきたばっかりで。」


「そうだったんですか。それじゃあこの子はあの時の?」

そう。あの時。蒼空くんと1日違いで生まれた時。


「はい、そうです。もう、足を怪我しているのに動き回ってばっかりで…」


「動き回っていて大丈夫なんですか?」


「それが、怪我といっても後遺症なんです。怪我自体は3年前にこの病院で治してもらったんですけど、後遺症で足がうまく動かせなくなりまして…数年もすれば元に戻ると言われてるのでそのリハビリとして病院にきてるんです。」

後遺症か。たしか骨折したと言っていたもんな…


「そうだったんですか…。そう言えば、どうしてこの病室に?」

俺は気になっていたことを聞いた。


「ええ、それなんですが舞桜がお見舞いに行くって言って聞かなくて…理由を聞いたんですけど、行きたいから行くの!としか教えてくれなくて。」

行きたいから行く……どういう事だろうか?


「ご迷惑になると思ったので舞桜には行くなと言い聞かせてはいるんですが、リハビリの隙を見てはこうして会いに来てるんです。…ご迷惑をおかけしてすいません」


正美さんは申し訳なさそうにそう言ってきた。


「いえいえ、俺は大丈夫ですよ。息子も一人じゃ寂しいだろうし、お見舞いなら全然構いません。」

そう俺は言葉にする。理由はわからないが、お見舞いというのなら歓迎するべきだろう。


「いいんですか?すいません、ありがとうございます。ほら、舞桜もお礼いいなさい!」


「おじさんありがとー!」


「おじさんの方こそありがとうね舞桜ちゃん。来たくなったらいつでもお見舞い来ていいからね。」

そう舞桜ちゃんに話しかける。


「ほんと?!やったー!!」


そういうと舞桜ちゃんは嬉しそうにはしゃいでいた。


俺は舞桜ちゃんに直接お見舞いに来る理由を聞いてみた。


「ねぇ舞桜ちゃん?舞桜ちゃんはどうしてお見舞いに来てくれるの?」

なるべく優しい声で聞く。


「うんとね!そらくんだから!」

どういう事だろう?

舞桜ちゃんはさらに続ける。

「それでね、わたしはまおだからおみまいにくるの!ずっといっしょなんだよ!」


さっぱりわからない。子供にしかわからない何かがあるのだろうか。俺は聞き出すのを諦めた。


「そっか。ならしょうがないね。」


「うん!しょうがないしょうがない!」


舞桜ちゃんは元気にそう言っていた。






俺は病院を後にする。

なぜ彼女が蒼空くんのお見舞いに来たのかわからないまま。

彼女の言葉の意味を理解できぬまま。

ちょっと時が経ちましたね。

スローペースですがどうかお付き合いよろしくです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ