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怪我

ママ目線です

暖かい日差し


幼稚園へ向かう道の中私は幸せだなと考える。

朝起きるとキッチンから食欲をそそる匂いをさせながら愛する夫が朝食を作っている。

リビングにあるテーブルには既に焼き魚やおひたしなどが並んでおり実に美味しそうだ。

私は今すぐ食べたい衝動を抑え席に着いて待つ。その間にもキッチンからはトントンと心地のいい音色が聞こえてきて実に待ち遠しい。


がちゃり。と、扉の開く音。

最近一人で眠れるようになった娘の蒼海ちゃんが起きてリビングに入ってきた。

それに合わせてキッチンからはご飯とお味噌汁が運ばれてくる。ようやく朝食だと私は胸を踊らせる。蒼海ちゃんもご飯!ご飯!と笑いながら座っている。

ご飯とお味噌汁が運ばれてきた所で三人一緒に食事をはじめる。


リビングのテレビには朝の情報番組が流れており今日の天気を予報していた。

今週はずっと晴れるねなんて会話をしているうちに食事を終わらせる。


食事が終わると着替えに部屋へ戻る。

ピチッとアイロンがけされたスーツに袖を通す。蒼海ちゃんはその間に夫の響が着替えを手伝いながら一緒に準備をしていた。


先に着替えを終わらせた私は玄関で待っている。

蒼海ちゃんが準備を終わらせ玄関に走ってくる。私はそんな蒼海ちゃんに行ってきますの挨拶をと言い聞かす。

蒼海ちゃんはニコニコとしながら響の頬に行ってきますの印をつける。

それを見て私も印をつける。私だけの場所に。


「それじゃあ、行ってきます。」


そう言って私は家を出てきた。

隣には愛する娘がいる。家には愛する夫が。

特別な事はない朝ではあるが私には幸せだと感じることができる。


心の底には何か足りていないという感情が見え隠れしているがそれはきっと贅沢というものだ。

結婚して子供ができて、その子供が成長していって。毎日がイベントのようなものだった反動なのだろうと私は結論をだしていた。


幼稚園に着く。

蒼海ちゃんにいってらっしゃいとお別れをし私は会社への道へ戻る。

仕事は銀行員で収入も安定、同僚や上司も優しく頼れる人達ばかりでなんの不満も感じていない。

会社へ行くとなると嫌な気分になる人もいるだろうが私はそんなこと微塵も思っていないのだ。



会社へ行く途中にある公園で私は一人の女の子が倒れているのを見つける。


「大丈夫?!えっと、怪我はない?具合悪いの?!」


私は女の子に声をかける。女の子の倒れている横には松葉杖が転がっており、その子の右足には包帯が巻かれていた。


「う、うん。ママにナイショで外に出たらころんじゃったの」

と、女の子は起き上がり返事をする。

具体的には起き上がろうとした時ふらついたのだが私がとっさに支えた為倒れることはなかった。


「えっと、とりあえず病院まで行けるかしら?足をすりむいてるし、私が一緒について行ってあげるから安心して?」


「うん。ありがとう」


そう言って女の子は松葉杖をつきながら立ち上がった。


その子の見た目は蒼海ちゃんよりすこし大きいくらいか。おそらく一つか二つ年上なのだろうと考えながら病院へ向かう。

会社には向かう途中で電話をし遅刻すると連絡を入れておく。


病院へ着くと受付に事情を説明し女の子はすぐに診察室へと運ばれていく。

このまま帰るわけにもいかず私は女の子の治療俄終わるまで待つことにした。


しばらく待っていると診察室から女の子が出てくる。すりむいていた膝にはガーゼが貼られており女の子はニコニコとしていた。


「あのっ!ありがとうございました!」

そう女の子はお礼を言ってくる


「大丈夫よそんなの気にしないで。それより、ちゃんとお礼を言えるなんて偉いね。」

私はそんなことを言いながら女の子の頭を撫でる。蒼海ちゃんにもよくしていることで頭を撫でるのが癖になっているのかもしれない。


「ねぇ!お礼に私のたからものみせてあげる!」

女の子は私に向かってそう提案してきた。

「宝物?」と私は問いかける


「うん!たからもの!すっごいすっごいたいせつなの!とくべつにみせてあげるね!」

余程大切な物なのだろう。

私は少し興味をそそられた。

「うーん。じゃあ、見せてもらってもいい?」


「うん!こっちだよ!」

そういうと女の子は私の手をつかみ病院の中を進んでいく。

片方は松葉杖をついているのに器用だなと感じながら。


「宝物って病院の中にあるの?」私は聞く。


「うん!ずっと病院にいるの!でも、あと少ししたらでられるかも!」そう女の子は言う。


病院にいるとはどういうことだろう?そんなことを考えていると女の子の歩は止まり私の方へ振り返る。

「ここ!ここだよ!ここにたからものがあるの!」

そう女の子は言いながらある病室を指さしていた。


「この中にあるの?」


「うん!ね?入ろっ!」

そして私は女の子に言われるがまま病室へ入る。


病室の中には一人の男の子が寝ていた。

喉には人工呼吸器らしき物が繋がっており痛々しいものだった。


「えっと……ねぇ?これが宝物なの?」

私は聞く。


「うん!そうだよ!たからもの!」


女の子は答えるがさっぱりわからない。

「ねぇ?どうしてこの子があなたの宝物なの?」


私はもう一度女の子に聞く。


「だって!蒼空くんだもん!」


蒼空くん。女の子はそう言った。

その直後病室の扉が開く音がする。誰かが入ってきた。しかし私は確認することができない。


蒼空くん。そう呼ばれた男の子から目が話せない。

蒼空くん…蒼空くん…。蒼空くん…!



そして私は思い出す。

最愛の息子を。




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