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7月はじめの土曜日。梅雨は明け日差しが痛いくらいに眩しい季節になった頃、蒼海ちゃんは退院となった。
「ねぇ蒼海ちゃんっ!退院祝いに何か欲しいものある?!ママ何でも買ってきちゃうわ!」
「……」
「そ、そうだ!せっかく退院できたんだから今日は豪華な食事にしないとね!何か食べたいのあるかい?!パパが腕によりをかけて作っちゃうぞ!」
「……」
「う、蒼海ちゃん……。あっそうだ!どこか行きたいところある?僕が一緒に……」
「ほんと?!お兄ちゃんデートしてくれるの?!」
「え?あ、うん。せっかく退院できたんだしそれくらいなら………」
「やった!えへへ。あーでも行きたいところありすぎちゃうかも……うーん、ちょっと考えてもいい?最高のデート考えるから!」
「あ、あはは……」
退院しても両親二人に対する蒼海ちゃんの態度は変わってはいなかった。まぁ、目覚めたばかりの睨みつけるような事がないだけましになったのかもしれないけど……
「「はぁ……」」
一方の両親はというと目に見えて落ち込んでいる。待ち望んだ退院。おそらく二人は沢山のお祝い計画を立てていたんだろう。先日母さんは何やら色々なプレゼントを買ってきていたし、父さんも数日前から料理の仕込みをして気合いを入れていた。
その事を思い出しながら、僕は二人に頼まれていたダメだった場合の行動にはいる。
「あーでも蒼海ちゃん。今日は退院したばかりで疲れちゃうから出掛けるのはまた今度ね?今日は家の中でお祝いしよう?」
「うん!」
「何か食べたいのある?」
「お兄ちゃんが作った料理が食べたい!」
「あー……ごめんね蒼海ちゃん。僕あんまり料理ができないんだ。せっかく蒼海ちゃんが退院したお祝いなんだから蒼海ちゃんの好きな料理をしっかりと食べさせてあげたいんだ。……教えてくれる?」
「……ハンバーグがいい」
「うん、わかった。ハンバーグだね?それじゃあ今日はハンバーグでお祝いだ。教えてくれてありがとう蒼海ちゃん」
おそらく蒼海ちゃん自身も僕の言葉の意味を理解しているんだろう。回りくどい事をしているとわかっていても蒼海ちゃんは二人に直接何かを願うということはしなかった。
キッチンではそれを聞いた父さんが「絶対美味しいハンバーグ作るぞ!頑張っちゃうぞ!」と気合を入れて料理に取り掛かっていた。
「ねぇお兄ちゃん?私お兄ちゃんの部屋見てみたい」
「僕の部屋?」
荷物を片付けたあと、料理ができるまでリビングでテレビを見ていると蒼海ちゃんがそう話しかけてきた。
「うん、お兄ちゃんの部屋。だめかな?」
「いや、大丈夫だよ?でも特に何もないよ?」
「いいの!」
「まぁ蒼海ちゃんがそういうなら……それじゃあ行こっか?」
そう言って蒼海ちゃんを部屋に連れていく。
部屋の中に入ると蒼海ちゃんは目を輝かせながらなぜか深呼吸。
「えっと……臭かった?」
「全然!むしろいい匂い!!!」
「そ、そっか……」
「あ!ねぇあれ本棚?見てみてもいい?」
「うん、いいよ。好きな本読んで」
「やった!ありがとう!」
蒼海ちゃんは本を選び始める。すると、なにか困ったような表情をし始めた。
「……ねぇ、お兄ちゃん?絵本おいてあるんだけど……なんだか変じゃない?」
「え?変?どこが?」
「いや……なんていうか、逆というか……女が男?」
「えっ?」
「ううん、私が覚えてないだけかも。」
変……どこがだろうか?並べられていた絵本は母さん達が昔僕に読ませようとしていた本で、たしか蒼海ちゃんも読んだことのあるものだった。
完全に思い出せていないせいで違和感を感じてしまったのか?
「うーん……あれ?でも一冊だけ……あれぇ?」
蒼海ちゃんは本を見てなにか悩んでいるようだった。
「大丈夫?気になるんならなんでも聞いてよ?」
「うん、ありがとう。……そうだ!お兄ちゃんの洋服が見たい!」
「え?洋服?」
「うん!お兄ちゃんの洋服いつも綺麗だから!」
綺麗……父さんが選んでるから僕自身にはあまりピンと来るものはない。どちらかというと中性的な服装が多いためにもうすこし以前の"男らしい"服装も着てみたかったりする。
「そこのタンスに入ってるから、好きに見ていいよ」
「わーいっ!やった!」
蒼海ちゃんはタンスを開け服を吟味し始める。
ふむふむとか、やっぱセンスいいなぁとか、清楚系?なのかなぁ……とか呟きながら色々な服を出しては眺め仕舞っていく。
「あっ、その段は……」
「え?」
蒼海ちゃんが開いたのは下着が入っている棚。開く前に言えばよかったと後悔。妹とはいえ、下着を見られるのはなんだか恥ずかしい。
「……え?ぶ、ブラ?」
「うん?」
「こ、こ、これ、お兄ちゃんの?」
そう言って蒼海ちゃんが見せてきたのは父さんが中学に入ってから買ってきたブラジャー。広げるとまた一段と恥ずかしい。
「あーうん。僕のだよ?」
「えぇ?!お兄ちゃんブラ付けるの?!」
「え?うん。あ、派手だったかな?」
「いやっ!派手とかじゃなくて!!」
「あ!勘違いしないでね?!それ選んだの僕じゃなくて父さんだからね?!」
「はぁっ?!あの男が?!お兄ちゃんにブラ?!え?!付けろって強要されたの?!」
あの男呼ばわりされてしまった父さんに悲しみつつも答えていく。
「強要というか、常識というか……」
「常識?!ブラつけるのが?!お兄ちゃんなのに?!」
お兄ちゃんなのにって。なんだか悲しくなる
「あー、蒼海ちゃんまだ小学生だったからわからないのかも……中学行くとみんな大体そんな感じのブラみたいだよ?友達もそうだし」
「えええええ?!友達もブラ付けてるってこと?!?!」
蒼海ちゃんは混乱していた。まるで意味がわからない様子だ。
「うん、そうだけど……変……かな?」
「ええっ?!ええっと……変……じゃないんじゃないかな……常識なんだもんね?」
「あ、うん。マナーみたいなもんだって父さんが。」
するとまたぶつぶつと呟きながら考え始める蒼海ちゃん。
なんか尋問されてるみたいでドキドキしてしまった。
「と、とりあえずっ!」
「は、はいっ?!」
「お兄ちゃんっ!……ブラ付けてるとこ見たいです」
「……はい?」
「ほ、ほら!私あんまり昔のことまだ思い出せてないし!」
「えっと?」
「それに!お兄ちゃんの付けてるところみたら何かのショックで思い出すかもしれないし!それに私もいずれブラ付けなきゃいけないから!その付け方も教えて欲しいし!ブラつけた状態のお兄ちゃん見てみたいし!見たことなかったし!!」
「うーんと、とりあえず今も付けてるんだけど……」
「えっ?!」
「ほら」
そう言ってシャツをまくる。妹だし別にいいよね?そもそも隠さなくたって僕としては気にしないし
「?!?!?!」
「だ、大丈夫蒼海ちゃん?」
シャツをまくると蒼海ちゃんは衝撃を受けたように固まってしまった。先程までまくり立ててたのが嘘のようにフリーズ
「こっ」
「こ?」
「これはこれで……ありですよ……」
そう顔を真っ赤に染めて呟く蒼海ちゃん。
何がありなのか僕には理解できなかった。
ウェヒヒ感想美味しいです




