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私の中で冷たくなっていく先輩。
虚ろな目をしてその命が潰えようとしている。
真っ赤な血溜まりの中で私は先輩に叫び続ける。
ふと、先輩の後ろを見る。
遠くにはじっと先輩を見つめるそいつがいた……。
私がそいつだと確認すると同時に身体が動いた。
「先輩っ!」
お兄ちゃんと呼ぶことを忘れ私は叫ぶ。早くそいつから先輩を離さないと。
「先輩っ!離れてっ!」
「う、蒼海ちゃんっ?!」
先輩の手を取り私の後ろに庇う。
「なんで!あなたがいるんですかっ!!」
先輩を庇いながら私はそいつに叫ぶ。何故、どうして、どうやって?なんであなたがそこにいるのか私には理解できない。
私の投げかけにそいつは答えない。動揺している素振りもなく、黙って私を見据えている。ただそれだけなのに、どうしようもなく私を焦らせる。
先輩を掴んでいる手には汗が滲み瞬きするのを忘れるくらいに私はそいつに注意を注ぐ。
「だ、黙ってないで答えて!どうして先輩と一緒にいるの?!また先輩のこと───」
「蒼海ちゃん?落ち着こう?」
私の言葉に被せるようにそいつは声を出す。
「落ち着いて?蒼空くんがびっくりしてるよ?」
そう言ってそいつは私ではなく私の後ろにいる先輩に声をかける。
「大丈夫?蒼空くん?」
「う、うん……蒼海ちゃん?どうしたの?」
後ろの先輩が不安そうに私に聞いてくる。
先輩、覚えてないんですか?忘れちゃったんですか?先輩はそいつに……
「せ、せんぱっ───」
「蒼海ちゃん、蒼空くんの手離して?痛そうだよ?」
「っ!」
怖かった。そう言ったそいつの声が。
明らかな敵意を含んだ声。荒らげた声の驚きとは全く違う静かで重く恐ろしい。
「ね?」
私は動けなくなった。声が出ない。身体が強ばり力が入らない。自然と先輩を掴んでいた手は解かれ、先輩が私の前に来て不安そうに私の肩を揺さぶる。
「大丈夫?蒼海ちゃん、落ち着いた?」
「あっ……」
「大丈夫だよ、蒼海ちゃん。僕も舞桜ちゃんも蒼海ちゃんには何もしないから。」
そう先輩は言いながら私を抱きしめてくれた。あぁ、そいつの前でなければどれほど嬉しかったか。私は先輩の感触を楽しむ余裕なんてなかった。視線をそいつから離せない。蛇に睨まれた蛙のような状態だ。
「……ねぇ、蒼空くん?蒼海ちゃんはどうして蒼空くんのこと先輩なんて言ってるの?」
「え?えっと……先生曰く記憶の混濁らしいんだけど……」
「そうなんだ。ねぇ、蒼海ちゃん?先輩って蒼空くんのこと?」
「な、何が言いたいンですか……」
「兄妹なのに先輩ってどうしてかなって思っただけだよ。どうしてお兄ちゃんじゃないのかなって」
「どうしてって……!そんなのあなたが一番知って……」
そこまで口にして私はハッとする。この人はほんとにあの人なのだろうか?私は何故目の前のこの人をあの人だと決めつけたんだろうか?
自分でも理解できていなかった。
頭が勝手にあの人だと決めつけていた。絶対に間違いないと。しかし、目の前のこの人の言動を聞いてみて不思議に思う。
あの人なら私がお兄ちゃんではなく先輩と言うのに疑問を持つだろうか?いや、もし私を私だと理解していなかったら?
可能性を考え始めると余計に混乱し始める。
「あ、あなたは……?」
「私?覚えてない?小さい時からの知り合いなんだけどな」
小さい時から……私が私に生まれ変わる以前の事を知っている?
「一緒に遊んだ事何回もあるんだよ?」
「……」
思い出せない。いや、私は体験していないのだから思い出せないのは当然か。
少なくとも以前の私とは仲がよかったのかもしれない。
しかし、疑いは晴れてくれない。身体が拒否している。危険だと伝えてくる。
「ごめんね、いきなり会いに来て混乱させちゃったんだね。今日は私帰るよ。」
「うん、まだ早かったのかもしれない。ごめんね舞桜ちゃん。僕が早計だった……僕は蒼海ちゃんが落ち着くまでそばにいるから、また明日だね。」
「気にしないで蒼空くん。」
私のことを気遣ったのか、この人は帰るみたいだった。
心配のし過ぎだったのか?私の思い違いだったのかもしれない。
以前のあの人と同じ名前だったから、警戒してしまったのかもしれない。
そう、安心しかけた私にこの人は声をかけて病室を出ていく。
「それじゃあ、またね?美羽ちゃん。」
仕事終わって更新頻度上がるんじゃ^~




