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目が覚めてから1ヶ月ほど経った。

自分の置かれている状況も段々と理解し始めて、余裕が出てきた。

まるで物語のような出来事が自分に起こったのだと実感する。漫画やアニメとかよく見てなかったし、こんな非科学的な事がありえるのかとも思ったが自身の置かれている状況を感じて納得せざるを得なかった。


嬉しくない訳じゃない。むしろかなり幸運……いや、奇跡に近い事が嬉しかった。生きていた時、先輩に会うまでは地獄のようだった。それこそ希望なんてなく世界が滅びてしまえばとなんど恨んだことか。

先輩に会ってから一転して光を輝かし始めた私の世界。先輩に会えた奇跡で私は自分の運を使い果たしたと思っていたが、どうやら残っていたみたい。


先輩という光を失い暗闇に落ちていった私の世界は、また輝き始めていた。




「野上さん、点滴交換しますねー」

看護師さんが病室に入ってきた。

はい、と私は返事をする。1ヶ月も入院していて看護師さん達の顔と名前は覚えてしまった。

点滴を交換している看護師さんを眺めながら私は綺麗だなと思う。前の世界の看護師さんはおばさんばかりだったイメージがある。もちろん中には若い人もいたが美人と言える人は少なかった。

しかし目の前でてきぱきと仕事をしている看護師さんを含め、ここの病院の看護師さんは美人ばかり……いや、美人しかいなかった。

同性の私から見ても美人と言える人しかいない。以前それが不思議で質問したことがある。どうしてみなさん美人ばかりなんですか?と。


「えぇ?そんなことないですよ?私くらいのなんてそこら中に……むしろ残念過ぎて彼氏ができたことすら……うぅ」


と、地雷を踏んでしまった始末だった。

本人は残念といったが、そのルックスで残念というなら世のほとんどは残念という言葉をかけられない無残な物になると思った。


「それに、私なんかより野上さんのが美人さんですよ?お兄さんに似てとっても!」


私を褒めているのか、それとも先輩に褒めたいのかわからなかったがありがとうございますと返事をしておいた。

目を覚ましてから鏡は何度も見た。確かに私の見た目は自分でも綺麗だと言える。前の私のように痣だらけの傷ついた体でも、どこか暗い目でもない。

黒く艶のある髪は小さい頃から伸ばしていたのか腰までの長さがあるにもかかわらず枝毛や焼けもなく手入れが行き届いている。

肌も荒れや傷など一つもなく瑞々しいそれは自分でも触れていて気持ちがいい。

そして何よりその顔は先輩の面影を感じさせるそれは自分で綺麗だと言えるほどだった。


先輩の見た目は私の知っている時の面影を残しており、以前からも私からみて天使のような綺麗さに拍車がかかっていた。

以前なら色眼鏡にかかっていると言われていたかもしれない。私自身はそう思っていなくても周りの有象無象はそう判断していたかもしれないが、今の先輩は色眼鏡なしに綺麗なのだ。



10時頃になって両親が見舞いにやってきた。

甲斐甲斐しくも毎日毎日やってきては身の回りの小さな事までやっていく。はっきり言って、迷惑だった。

私は親というものに嫌悪感しかない。子供を道具かなにかだと思いストレスの捌け口として扱うクズだと。自分の思い通りにならなければすぐにサンドバッグとして使い始める。それが、私の中の親というものだった。

私はこの二人とまともに話そうとはしない。

いつ本性を表すかわからない相手に言葉なんてかけないし返すつもりもない。私が心を開くのは先輩だけ。


……二人は私が無視しているにもかかわらず常に話しかけてくる。家であった事や退院してからのこと。私はその中で先輩の話題だけに耳を傾ける。

今日先輩は何時に来てくれるのか。先輩は朝どんな物を食べて学校へ向かったのか。何を着て、何を話していたのか。体調はどうだったか、起きたのは何時だったのか。


私が先輩の話題だけはしっかりと聞いていることを悟った二人は細かに先輩のことを伝える。なにか、すがっているような二人に私はより一層の嫌悪感を抱く。

先輩のことを伝えたら早く出ていって欲しい。というより、二人よりも先輩にもっと長く、早くから来てもらいたい。そんなことを思ったところで先輩の今の生活を私のわがままで壊すわけにもいかず我慢する。

あぁ、先輩。私は貴方の為に生まれ変わりました。早く退院してずっと一緒に過ごしたいです。



二人は昼食前に帰っていった。

「蒼空くんは部活終わってから来るって言ってたから。安静にして待っててね?それじゃあ、また明日。」

そう女の方が伝えてから二人は出ていった。ふぅ。これでストレスなくこのあとが過ごせる。

私は先輩が来るまで1人病室で思いを馳せる。今日は先輩に何を話そうか?どんな話を聞かせてくれるかな?いっぱい、甘えさせてくれるかな?

甘い、甘い先輩とのひと時を考えながらベッドの上を過ごす。それが今の私の生活。



日が暮れ始める頃、病室のドアが叩かれる。ドキッと胸が打つ。

綺麗に保とうとしても口元が上がってニヤけてしまう。あぁ、今日も先輩が来てくれた。私の為に。私と会うためにわざわざ大切な時間を割いて来てくれた。そう考えるだけで顔はニヤけ身体は熱くなる。


「入るよ?蒼海ちゃん」


「うんっ!」


私は自分が出せる精一杯の明るい声で先輩を迎え入れる。

上擦ったりしてなかったかな?ちゃんと返事できてたよね?そんな心配をしつつ、扉が開くのをワクワクと待つ。

ゆっくり開かれていく扉に私は今か今かと待ちわびる。先輩、先輩、先輩。


「こんばんは、蒼海ちゃん。体調はどう?」

入ってきた先輩は必ずこう私に聞いてくれる。

「うんっ!お兄ちゃんが来てくれたからばっちりだよ!」

私は事実を伝える。嘘なんかじゃない。先輩に会えればどんな苦痛も快楽へと変わる。


「そっか、それは嬉しいな。あと……」


「どうしたの?お兄ちゃんっ」


「今日は蒼海ちゃんに会わせたい人がいるんだ。会ってくれるかな?」


「お兄ちゃんのお願いなら何でも聞くよ?」


先輩が笑えといったら腹を抱えて笑うだろう。

先輩が泣けといえば声を出して泣くだろう。

先輩が死ねと言えばすぐさま舌を噛み切って死ぬだろう。

先輩のお願いは私にとって決定事項。神様がそういえば、信者は迷いなくそうするように。


「よかった。それじゃあ、入ってきて?」



奇跡は良い事ばかり起こす訳ではなかった。奇跡的に良い事もあれば当然奇跡的に悪い事だってある。至極当然のことだ。

私は先輩に会えて浮かれていたのかもしれない。

その可能性があることを微塵も考えていなかった。

先輩が手を引いて病室に招き入れたそいつ。





先輩を殺した張本人が、私を見つめていた。

ヤンデレ書いてておらワクワクすっぞ

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