捕まえた
小学校を卒業して数ヶ月。
中学生になり、勉強する内容も以前より難しくなって来て入ると思うが僕にとっては退屈にしかならなかった。
不思議なことに学業の記憶ははっきりと覚えている。その為周りがわからないと苦悶している問題も僕からしたら復習に過ぎず退屈になってしまう。
記憶のおかげでこの前の中間テストでは学年2位になり正人達に驚かれてしまった。
「お前こんなに勉強できたのかよっ!」「こ、今度僕に教えてよ!」等々。
みんな僕の順位に驚いていたが僕自身はほかのことに驚いていた。
それは学年1位に載っていた名前が舞桜ちゃんだったこと。正直な所、勉強に関しては記憶のせいもありかなり自信があったのだがそれが打ち砕かれた。
やっぱり、舞桜ちゃんは何か違う。
退屈な授業が終わり僕は教室を出ようとする。
「おつかれ蒼空!今日も部活か?」
「ううん。今日はちょっと家の用事で部活には出ないんだ。多分しばらく休むよ」
「家の予定?なんかあったのか?」
「うーんと……蒼海ちゃんがね。」
僕がそういうと正人は気まずそうな顔をする。
なんて声をかければいいのかわからないんだ。
「……あ、大丈夫だよ?目が覚めたって病院から連絡があってさ。急変とかじゃないから安心して?」
「そ、そうだったのか!よかったな蒼空!」
気まずそうな顔をしていた正人はパッと明るくなり僕の肩を叩く。
「そ、それじゃあ僕は病院に行くから。また明日」
「おーう!また明日!」
正人と挨拶をし教室の外を出ると舞桜ちゃんが待っていた。
「今日から毎日病院?」
「うん。お見舞いに行くことになった。だから……」
「大丈夫。部長には私から伝えておくね。蒼空くんは蒼海ちゃんについていてあげて?」
「ありがとう。それと……」
「帰れないのは我慢する」
「あっ、うん。ごめんね?」
「蒼海ちゃんが良くなったらたっぷりデート連れていくから覚悟しててね?」
「あ、あはは……」
「うん。それじゃあ、私部活行くね?……蒼海ちゃんに、よろしく」
「うん。それじゃあまた明日。」
挨拶を交わし僕は病院へ向かった。
蒼海ちゃんが入院してから僕は数日おきにお見舞いへ来ていた。
本当なら毎日行きたかったのだが母さん達が部活や勉強にも時間を使ってあげないと蒼海ちゃんが目覚めた時に責任感じちゃうと言って断られてしまった。
行き慣れた病院への道を進み僕は昨日の事を思い出す。
取り乱した蒼海ちゃん。
僕の事を【お兄ちゃん】ではなく【先輩】と呼び、痛いくらい抱きついてきた。
あれはなんだったんだろう?先生は記憶の混乱といっていたけど、蒼海ちゃんはだれと僕を間違えたんだろうか?
先輩って……
病院へ着き蒼海ちゃんの病室へ向かう。
扉を開け中に入るとそこには点滴につながれたまま静かに眠っている蒼海ちゃんがいた。
「こんにちは、蒼海ちゃん。」
小さな声で挨拶する。
昨日とは違い、すやすやと眠っているその顔はとても安心していて何かいい夢でも見ているんじゃないかと思う。
僕の時と同じなら蒼海ちゃんは慣れるまで起きていられる時間は短い。
昨日目が覚めたばかりの蒼海ちゃんの起きている時間に僕のお見舞いの時間が被ることはほとんどないだろうと考えていた。
すやすやと眠る蒼海ちゃんのベッドの横に腰掛け髪に手をかける。
黒く長い髪は看護師さんの手入れのおかげかサラサラしていて触り心地がいい。
妹にこんな事してシスコンなんじゃないかと思うが、この髪ならしょうがないと言い訳する。
「……先輩?」
ふいに声が掛かる。
蒼海ちゃんだった。
「う、蒼海ちゃん?!目が覚めた?!」
まさか起きている時間に被るとは思ってなかったのでびっくりしてしまった。
髪に触れていた手を離そうとすると、がしっと掴まれた。
「……やっと、先輩」
「え、?」
「やっと……捕まえた……絶対離さないです」
そう言って力強く僕の手を握る妹の目は、光を失っていた。
久々ほんとすんません
仕事辛すぎワロエナイ




