渚のコミケseason4
「コミックマーケット!開催です!」
待機列からパチパチという拍手が聞こえてくる。
私も同じように手を叩き開催を祝う。
「ようやく始まったのね…っ!」
気を引き締め私は並ぶ。が、動かない。
「……開幕から20分……まだ6-3辺までしか動いてない…」
私は自分の列の動かさ無さに苛立っていた。
順番に案内されていく待機列。もちろん1-1から案内されていくのだが、未だに回ってこないのだ。
時間が来て列は立ち上がるように言われてはいるのだが、入場のための列圧縮すらまだされていない。
この待っている時間にも刻一刻と完売に近づいていると思うといたたまれない。
「クソっ!徹夜組がいなければこれより早く入場できるのにっ!」
私は不満をあげ始める。
本来徹夜というのは禁止されているのだが規模が規模なだけに徹夜している違反者を取り締まれていないのが現状。
サークル用のチケットを持った人、徹夜組、一般入場者という順番の構図が出来上がってしまっているのだ。
もしこれで徹夜組がいなければその分だけ一般入場者の入場が早くなる。今更そんなことを言ってもしょうがないのだが、今の私は虫の居所が悪くそんなことにも苛立ってしまう。
「あっそういえばTwitterを監視しておけってほっしゃん言ってたわね…」
Twitterには各サークルの作者や売り子がお品書きを上げたり、完売報告などがされていて開催中の大きな情報源となる。
つい最近までアカウントを持っていなかったが、webカタログを使う内に自然と登録していた。
「ええっと何なに……ええ?!島なのに列形成されてる?!どういうこと?!」
Twitter上では回る予定だった島サークルが『予想外のお客さんでまさかの列形成!最後尾札急いで作ってます(笑)』とツイートされていたのだ。
「そんな…事前情報ではそこまで人気なかった筈なのにっ!」
私は焦りを感じる。
計画がどんどん破綻していくのが自分でもわかってしまう。
「みなさーん!これから入場に移りますので、前に詰めていってくださーい!早くしないとどんどん完売しちゃいますよー」
スタッフによる列圧縮がついに始まった。
ジリジリと前に詰めて列を短くしていく。
「はーいよくできましたー!それでは移動になります!走らない様にゆっくり歩いてください!あ!忘れ物の確認もしてくださいねー!」
スタッフの案内でゆっくりと動き出す待機列。
徐々に近づいてくる会場を前に再度確認する。
(こうなったら仕方が無い…壁サークルは委託を信じて今日のところは島優先で回ろう…評論島から確実に買っていこう)
壁サークルも捨てる覚悟をし私はゆっくりと歩んでいく。
次第に入場ゲートが見えてきた。
「どちら側からでも入場できマース!空いてる方からどんどん入場してくださーい!中に入っても!ぜったいに走らないようにしてください!」
入口の前ではスタッフが声を大きく走らない様にと注意をする。
そして私は入場ゲートをついにくぐる。ここから先は待機列など比べ物にならないほどの密度。
気合を入れ直し私は入場ゲートをくぐった。
3時間後、時計が14時を回った頃ようやく私は買い物を済ましシャッター裏のスペースで休むことができた。
「ハァ……ハァ……な、なんなのよこの混みようは……」
私は疲れ果てていた。息を切らし、全身からは汗が吹き出す。
服からは制汗剤の匂いに混じり汗の臭いも香ってきていた。
「あ、あんなに東が混んでるなんて……ほんとに入場者増えてるのね……」
カバンからボディーシートを出して拭いていく。スーッとメントールが心地いい。
持ってきたスポーツドリンクをごくごくと飲みながら一息ついた。
「っぷはぁ!あーほんとあっつい……クーラーのある場所いきたい……」
疲れてきたのか口からは不満がどんどん出てくる。
「……とりあえず戦利品をしまわなくっちゃ」
トートバッグに無造作に詰められた本やグッズを整理しながらしまっていく。
「まぁ久々だし寝坊してきたと考えれば上々かな?新規開拓もできたし!」
仕分けしながらそうほくそ笑む。
入場後計画通り島サークルをまわりどんどん購入していけた。いくつかは既に完売していたが8割ほどは無事に購入することができた。
「あと20分早ければ新刊セット残ってたのになぁ……残念。」
「お!ナギーこんな所にいたんだ、おつかれーい!」
後ろからほっしゃんに声をかけられた。
その姿は最近のアニメキャラの格好をしておりいわゆるコスプレというやつだった。
「ほっしゃんもお疲れー。なに、その格好?コスプレなんてしてたっけ?」
「2年前くらいからするようになった!どうよ?!完成度高くない?!」
「いやーどうなの?私そのキャラ知らないからよくわかんない」
「えぇ?!知らないの?!ナギーアニメ見てないの?!」
「い、いやぁ家だと子供もいるし、それに響もいるし……」
「……あぁー。」
なにやら残念そうな目で私を見てくる。
「そっかぁ、確かに岡部くんと子供いるんじゃ見れないわよねぇ……ねね、岡部くん元気?」
「ええ、元気よー毎日子供の世話してくれてるし、料理も美味しいし何より美人だし」
「い、いやそれナギーの目線じゃん……岡部くん自身じゃないじゃん……」
「そう?でもほんとに元気よ?学生の頃から見た目もあんま変わってないし」
「へ、へぇ……ね、ねぇ?ナギー?今日ナギーの家に行っても……」
「だめよ。会わせないから」
「そ、即答ですよね…うん、わかってたけどさ。」
「そうよ。それに、同窓会で会えばいいでしょ?もちろん、私の監視付きだけど。」
「同窓会かぁ……懐かしいね、昔は三人でコミケに来てたんだけどねぇ……」
「………桜の事はしょうがないわよ。残念だったとしか、言えないわ。」
「うん、そうだよね。……それよりも!いもんち。の新刊買えた?!」
「残念ながら今日の私は島専だったので無理でした。それよりもほっしゃんサークル所や。買えた?!」
「もっちろんよ!ちゃーんとナギーの分まで買っておいたわ!」
「さすがほっしゃん!」
「いやだからほたるんって呼べと……」
友人と戦利品の受け渡しをしながら私のコミケ一日目は終わっていくのだった。
待ってなさいよ!二日目!




