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3人目


夏休みはあっという間に過ぎていった。

朝起きて宿題をし、蒼海ちゃんのお見舞いへ行く。そんな毎日を送っているうちに気がつくと夏休みが終わりを迎えていたのだ。

蒼海ちゃんの容態には変化はなく依然として眠り続けている。


夏祭り以降、僕は結局遊びに行くことはなかった。遊びに行くよりも蒼海ちゃんのそばにいて話しかけてあげたかった。

病室で蒼海ちゃんに話しかけているとどこか安心するような気がした。蒼海ちゃんの寝顔も心做しか微笑んでくれているような、そんな気分だった。


9月1日、始業式。

二学期始めとなる日僕は以前と同じように登校していく。

当たり前のように待っていてくれた舞桜ちゃん。


「おはよう舞桜ちゃん。久しぶり」


「うん、お久しぶり蒼空くん。」


夏祭りの花火が終わった後、僕達はあまり言葉を交わさずに帰っていた。なんだか気恥ずかしくて僕の方が話せなかった。

隣で歩いていた舞桜ちゃんは、薄暗くてよく見えない中でも上機嫌な顔をしていたと思う。

そのまま家に着き別れたあと、夏休み中舞桜ちゃんと会うことはなくおおよそ1ヶ月ぶりとなる対面だった。

しっかりと話せただろうか?以前と変わりなく接することが出来ていただろうか?

そんな事を思いながら通学路を歩いていく。


学校につき教室へ入る。

もう見知っているクラスメイト達は子供らしく日焼けをし夏休みを謳歌していたことを伝えてくれた。


「おう!野上久しぶりだなっ!」


「おはよう杉田くん、久しぶり」


人一倍黒く日焼けした杉田くんが話しかける。夏休み前と比べるとまるでオセロのような変わり方で杉田くんが夏休みをどのように過ごしていたのか手に取るようにわかった。


「いよいよ二学期だな!運動会に林間学校!楽しみだよな!」


「う、うん……そうだね」


テンションの高さに思わずたじろいでしまう。

そうか、二学期には運動会と林間学校があるのか。運動会という呼び方に懐かしさを感じる。

体育祭ではなく運動会。なんとも小学生らしいその呼び名がひどく懐かしく、同時に自分の今置かれている年齢を再確認させてくれる。


「はーい、みんな並んでー!体育館に移動しますよー」


扉をあけ入ってきた七海先生が号令をかけ始業式へと向かう。


体育館に着き始業式が始まる。

終業式とは違いこの後長い二学期が待っていると思うと気が重いのか、体育館全体はどんよりとした空気に包まれていた。

校長先生の話が始まるとより空気はどんよりとし、小声で不満を漏らす児童もいた。



翌日、長い二学期が始まった。

昨日とは違い今日からしっかりと授業が行われる。


クラス全体が夏休みから覚めないだらんとした空気で授業が進んでいった。

そして今日の最後、ロングホームルーム。


「今日は運動会の実行委員を決めます!やりたい人手を挙げてー!」


七海先生の声。


「はい!俺やります!」


杉田くんがいち早く手を上げる。


「杉田くんは学級委員もやってるから今回は残念だけど見送りね?」


七海先生の言葉に呆気なく落ちる杉田くん。悔しそうな、残念そうな表情だ。


「一応女子だけでもいいんだけど、うちのクラスには男子が三人もいるからできれば男女1名づつがいいんだけど……どう?ほかの二人は?」


そう言われて目線を合わせる僕と石川くん。

僕をみる石川くんの表情は助けてと言わんばかりに悲しそうな顔をしていた。

引っ込み思案な石川くんが実行委員なんて出来るとは思えない……。


「それじゃあ、僕やります」

こうなってしまっては僕が取れる行動はこれしかなかった。


「よし男子は決まりね。それじゃあ女子は―――「私がやります」


舞桜ちゃんが七海先生が言い終わる前にそう言った。


「え、ええっと他にやりたい人は……」


七海先生が周りを見渡すが誰も手を挙げない。いや、挙げられなかった。

私がやりますと言った舞桜ちゃん声に皆竦んでしまったのだ。


「じ、じゃあ実行委員は野上くんと岡部さんで……」


半ば強制的に決まってしまった実行委員。

二人でやれるのは嬉しいがなんだか申し訳ないなと思った。


「それじゃあ実行委員の二人は今日の放課後、集まりがあるからよろしくね?」



放課後、僕と舞桜ちゃんは実行委員の集まりに来ていた。

実行委員と言っても運動会のレベル。そこまで気負いするものでもないし遊び感覚のものだった。


集まっていたのは5年生と6年生の実行委員。他の学年の生徒は別の集まりで話をしたそうだった。

実行委員に来ているほとんどが女子。男子は僕以外に1人しかいなかった。

運動会の担当の先生が委員長を決めようと話始める。

当然最高学年である6年生から選ばれた。


掴魅蒼結(かくみ あゆ)です。よろしくお願いします。」


選ばれたのは女の子。

掴魅蒼結と自己紹介した彼女は小学生とは思えない真剣な眼差しだった。






私は全て手に入れてみせる。


遠慮なんかしない


欲しいものは全部自分のものにする


誰かが不幸になるとか知ったことじゃない


大切なのは自分の幸せ


それ以外は考えない


お金も地位も友達も全部全部手に入れてみせる


そしてなにより、あの子を……




ついに100部となりました。

今回でメインヒロイン全て顔見せです。



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