27話 少女の遊園地その④
「すぅ……ふぅ……」
私はモンス親方のジャングルフライヤーの前で消えそうな覚悟を再度取り戻すために深い深呼吸をする。
「ようこそ!モンス親方のジャングルフライヤーへ!ここはモンス親方が愛したモンキーランドの全景を見るために作られた巨大観覧車です!今日は特別!モンス親方の許可が降りたので!モンス親方の愛した全景をお楽しみください!」
テンションが最高潮でこちらまでテンションが勝手に上がるようなキャストによるアトラクションの説明も今の私にはテンションを下げる材料にしかならない。
「ジャングルフライヤ~♪ジャングルフライヤ~♪」
対照的に翔真君の機嫌はうなぎのぼりで上がっており、キラキラした目をこちらに向けてきている。
「ほんとに大丈夫なのか?無理しなくていいんだぞ?」
どんどん緊張していく私を秋羅さんは心配してくれる。
「大丈夫です!!翔真くんと約束しましたから!!絶対乗り切って見せます!!」
私がそう言って体の前で両手の拳を握ると、秋羅さんは心配するような顔つきのまま軽く微笑む。
「どうぞ!!足元きおつけてお乗りください!!」
なぜだろう……楽しみなアトラクションに並んだ時にはあんなに長く感じる待ち時間がこういうときだけ一瞬に感じる。
「おい!彩華ちゃん!乗り遅れるぞ!」
私が考え事をしていると、いつの間にか翔真君は観覧車に乗っており、秋羅さんが急いだ様子で私の手を掴んで私の体を観覧車内部に入れる。
「……ッツ!!」
「ごめん!痛かったか?あのままじゃ乗り遅れると思って!」
「いや……いや別に!!大丈夫です。」
私は初めて触れられた……そしてまだ掴まれているその手に目線をやって……改めて感触を確かめて体中から蒸気が噴き出すんじゃないかと思うくらい熱くなる。
「えっと……手……」
やばい……いつもみたいに話せない……手のことしか考えられない。
「あっ……いや……手を繋いでいたほうが怖くないかと思って……嫌なら放すよ」
こんな言葉……普通だったら惚れちゃうところなんだろうな……でも、秋羅さんの顔を見ればわかってしまう……この行動や言葉に下心がないことが……だって……優しい、理想のお父さんみたいな顔でこっちを見るんだもん。
そんな現実に私の浮かれていた鼓動が正常に波打ち始め、体の熱が冷め始める。
あーでも……怖くないように手を繋いでいてくれるなんて……やっぱり優しいな……。
怖くないように?何が?怖い?
その時どこの趣味の悪い親方が考えたのかわからない観覧車の足元のガラス張りの部分に視線を送ってしまう。
そこからははるか下にある地面が見えて、私の心を恐怖感が浸食してくる。
私の体に恐怖心から力が入り、秋羅さんと繋いでいる手に力が入る。
「っと……ごめんなさい!!……あの……手……繋いだままにしてもいいですか……」
「あぁ!いいよ!!」
わたしが弱弱しくお願いすると、秋羅さんはとても嬉しそうに了承してくれた。
そんな子供のような嬉しそうな表情に私の心臓がトクンと跳ねる。
「ねぇ!!パパ!!彩華お姉ちゃん!!そろそろ見えるよ!!」
自分の心臓の鼓動に……やっぱり私は秋羅さんのことが好きなんだなって改めて自覚してると、私たちの前で命知らずにもずっと外を見ていた翔真君が興奮したように外を指さしている。
翔真君が私に見せたい景色がそこにある……そう思って私は勇気を出して翔真くんが指さすほうへ視線を送る。
「……っえ?」
翔真君が指をさす方向にあるのは下のほうに広がるモンキーランドでも左側に広がる海でもないそこにはただの街並みがあった。
「はぁ……翔真……やっぱりお前!これが見たかったのか……」
わたしは訳が分からなくて混乱していると横からおでこを叩くようにして頭を抱える音がする。
「あのね!!彩華お姉ちゃん!前ね!パパとママとジャングルフライヤーに乗った時にね!ママがここからみて「意外とこの高さから見ると普通の景色も見えるのね」って言ってね!そしたらパパが「確かに!!でもこうやって高いところから街並みを見るとみんなちっぽけで……こうやって全体を見るとなんだか幸せそうに見えるなって!」それ聞いてから僕この景色好きなんだ!!」
翔真くんの話を聞いて私はもう一度……外に広がる景色を見たいと強く感じて勇気をだして外に目をやる。
「はぁっ……」
私はさっきと同じ景色を見ているはずなのに自然と息が溢れ視線が景色に吸い込まれる。
そこにある景色はさっきまでいたジャングルチックな非日常ではなく私は住んだこそないが、親しみやすさのある普通の街並み。
「幸せそうに見える」その言葉は断言する訳ではない……でも何故かその言葉を聞くと心の中に共感が満たしていく。
満たされた共感が視界にリンクされたのか、普通の街並みがまるで夜景や絶景のように輝いて、そして何より暖かく見える。
この解釈が当たっているかは分からない……実は治安が悪くて犯罪ばっかの場所かもしれない……でも、そんなことどうでもいいくらい共感に満たされた心が感動で押しつぶされていく。
「綺麗……」
私は今どうやって声を出したのだろう……口は動いた?喉は震えた?意識なんてしていない……ほんとに心からこぼれた言葉。
「えへへ〜そうでしょ!そうでしょ!僕もこの景色だーいすき……」
気づくと感動している私の隣まで来ていた翔真くんがキラキラと輝く笑顔を浮かべて私の心の共感に翔真くんの共感を重ねてくる。
私と翔真くんはその後特に言葉を交わすことなく風景を見続ける、そこには恐怖感なんてもうなく、観覧車が低くなって来たことで見えにくくなってきている景色を名残惜しいと感じている。
観覧車は時計で言う3時くらいの位置まで下がり、街並みは見えなくなり、モンキーランドのみが視界に入る。
私は景色が見えなくなってしまった寂しさを感じながらもこの大きな感動を誰かと共有し会いたい!そんな映画を見たあとの気持ちみたいになってまだ共有出来ていな私の隣に座っていふ秋羅さんの方に視界を送ると……。
そこには顔を両手で隠して耳を真っ赤にしている秋羅さんがいた。
お読みいただきありがとうございます!!
明日、朝6時に28話を投稿します!28話も読んでいただけるとありがたいです。
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