2話 歳の差の出会い
「12時45分ご臨終です。」
「ママ?」
冬の寒さが残る3月1日……俺の最愛の妻である吉田美穂は38歳という若さで天国へと旅立った。
この時、俺の時間は歪み、持てない実感と掴めない感情に困惑していた。
「パパ?」
その時かけられた息子の翔真からの言葉に止まっていた脳が動き始め、翔真にどう伝えるかを全力で考え始める。
翔真への言い訳を考えていたはずの脳は勝手に美穂との思い出が蘇り始める。
美穂と俺こと吉田 秋羅の出会いは10年前駅前の飲み屋まで遡る。
その日俺は20歳になったことでお酒が解禁されたので中学時代の友人と2人で飲みに来ていた。
「お兄さん達〜2人で飲んでるの〜?私達も2人なんだけどぉ〜一緒に飲まない〜?」
俺らが慣れないお酒に警戒しながらもカッコつけて勢いよく飲んでいると、綺麗系なお姉さんと可愛い系の女の子が話しかけてきた。
「いいっすよ!」
俺たちは物語とかでしか聞いたことがない展開への興奮とお酒の高揚感が混じりあって、今できるだけの格好をつけて返答した。
そこから記憶は無くなり、次の日重いまぶたを開け、頭痛に悩まされながらスマホで時間を確認する。
そこにはLeeNの通知が3つ来ていて、その中の2つの女性の名前に俺は心当たりがなかった。
その女性達からのメッセージを確認して昨日の2人だとわかった俺は無難な返事をしてそれから数日間連絡が続いた。
そんな時、2人の女性の内、綺麗なお姉さんの方だった美穂がまた4人で飲みたいと言ってきたのでグループを作り、俺が幹事をして数週間後に2回目の飲みが開催された。
それから1ヶ月に1回くらいのペースで俺たちは会い続けて、気づいたら俺の友人と美穂の友人が付き合いを始めていた。
その結果俺らが会う回数は少し増え、その度に俺と美穂は気を使ってカップルを2人にしてあげることで必然的に俺と美穂が2人になる時間が増えた。
「ほんとあいつら幸せそうでずるいですよね〜俺も彼女欲しいですよぉ〜」
「あはは〜ほんとずるいよねぇ〜最初は私が秋羅くんに一目惚れして話しかけたのにあの子が先に付き合っちゃうんだもん!」
その時の美穂の言葉に俺の頭が理解できなくて真っ白になったことを未だに覚えている。
「私みたいなおばちゃんじゃだめかな?」
確かに俺と美穂の年齢差は7もあったが、そんなこと気にならないくらい、俺も美穂のことを好きになっていた。
「年齢差なんて関係ない!俺の奥さんになって欲しい」
「うふふ……いきなり奥さんだなんて秋羅君は大胆だね!」
やばいやばいやばいやばい!!あまりの喜びに頭が真っ白になり、自分でもなにを言っているのかわからなくなり口を滑らしてしまう。
「いや……これは……その!」
「いいよ!」
「へっ!?」
パニック状態の俺の脳内に美穂の短くてはっきりした声が響き、俺の脳内はせわしなく変わり、困惑を浮かべる。
「うふふ……なんで自分で言っておきながらそんなにぽかんとしてるの?」
「いや……だって……どういう……」
平和な日常に侵され、緊張感なく、のほほんとしていた脳が急激な衝撃を受けたことで思考が理解するまで回転してくれない。
「もう!年上のお姉さんだからってプロポーズの返事を聞き直すなんて失礼だよ!あと1回しか言わないからね!」
「はっ!はい!」
美穂はリスのように頬を膨らませて俺の方を指さしながら俺に注意してくる。
その姿はとてもかわいく、すでに早い鼓動に拍車をかける。
「私を吉田 秋羅さんのお嫁さんにしてください。」
その後、宣言通り俺たちはスピード婚をし、それから八年、家を建てたり、新婚旅行に行ったり、ウエディングフォトを取ったり、翔真が生まれたり、俺の人生は幸せに包まれてきた。
お読みいただきありがとうございます!!
最初は5話まとめて投稿します引き続き3話も読んでいただけるとありがたいです。
また、面白いと思っていただけのなら評価・レビューいただけたら幸いです。




