87話 VS騎士団PT
応援席に戻るとミツキがスマフォンを操作しようとしていたが、俺達が帰ってきた事に気付いた。
「あっ、コウガさん! ちょうど連絡しようと思ってたんですよ、次が出番です!」
「お、了解! 行ってくるわ」
「ご主人様! 頑張ってね!」
「マスター、ご武運を」
「おう!」
皆からの激励を貰ってから控え室に向かい、中に入ると騎士団3名、ノシュタール、ゴリスター、オルガーが既に控え室で待機していた。
「来たね、君達と少し話がしたかったんだ」
そう語り掛けてきたのはノシュタールだった。
「俺達に何か用ですか?」
「コウガ君というよりは、隣に居るドラゴン族のメイラン君。君に聞きたい事があってね」
騎士団のノシュタールが目線をメイランに向けた。
「……私?」
「ドラゴンについての事で、昨日とある情報が届いたものでね。君から話を聞いた後に、この大会に出ているもう1人のドラゴン族の子……確か、エリスタと言ったかな? あの子にも話を聞く予定だったんだ」
「そう。それで、何を聞きたいのかしら?」
故郷の事と言われ、メイランは少々複雑な顔をする。
「君達ドラゴン族には、『覚醒』というドラゴン形態になれる固有スキルがあると文献にある、それは事実かい?」
「……ええ、事実よ」
「事実だな? ならもう1つ、その覚醒したドラゴン族と魔物であるドラゴン……この竜種との違いは何処にあるとかは分かるかい?」
メイラン達のドラゴンと魔物のドラゴンの違い、それは俺もよく知らない。
そもそも俺はドラゴンの魔物にも覚醒状態のドラゴン族にも出会った事がないからな、知りたい気持ちはある。
「……そうね、私達の覚醒によるドラゴン形態の姿は例外なく決まっているの。だから、私達の覚醒によるドラゴン形態の姿以外は全て魔物である……としか言えないわ。魔物のドラゴンの種類なんて多種に渡るし、上位種となれば知性があって会話すら出来るドラゴンもいるからね」
「なるほど。それでは、この大会にも居たエリスタ君のような色違いでも同じなのかい?」
「私達の赤いドラゴンには赤いドラゴンの姿があり、緑のドラゴンには緑のドラゴンの姿があるわ。姿が違う変異種とかも噂ですら聞いた事ないから間違いないはずよ。個人差は多少あるけれどね」
「なるほど……ちなみに、メイラン君は覚醒する事は?」
「覚醒は18歳を境に始まるのだけれど、私はまだ17歳で覚醒の予兆がまだ来ていないの。だから無理だわ」
それを聞いたノシュタールは安堵した表情を浮かべる。
「ふぅ……それを聞いて安心したよ、君は100%違うようだ」
「……? どういう事?」
ノシュタールに詳しく説明を求めようとしたその時……。
「試合終了ー!!」
ウオァァァァァァァ!
歓声が聞こえてきた、丁度試合が終わったようだ。
「おっと……試合が終わってしまったようだ。続きは試合後にしようか」
「……分かったわ、それなら1つ提案があるの」
「ん? なんだい?」
「この武闘会が終わったら、エリスタから故郷であった事件の内容を聞く約束をしているの。貴方達も彼女に用があるのでしょう? 丁度いいから集まって話しましょうよ」
「事件か……ふむ」
少しばかり考えるノシュタール、ゴリスターとオルガーは一切口を挟まずに待機している。
「分かった、そうしようか。それでは、後ほど集合場所等を決めようか」
ノシュタール達騎士団が動き出す、これから俺達は試合しなきゃならない。
「では、先に行ってるからね」
「青年! また戦えて嬉しいぞ!」
「……」
ゴリスターは相変わらずだが、オルガーは無口なようだ。
騎士団達が控え室から出た後、俺はメイランへ目を向ける。
「メイラン、大丈夫か?」
「……問題ないわ。ただ、あの人達が話したいことって、エリスタが話す事に近しい話のような気がするのよね。私は一体何を聞かされるのかしら……?」
本人は問題ないと言っているが、明らかに不安な様子が伺える。
俺はメイランの髪を撫でた。
「何があっても俺達は味方だからな」
「……ええ、ありがとうコウガ様」
メイランを励まし、俺達もステージへ向かう。
先に到着していた騎士団達と向かい合って対峙する。
「さぁ! 準々決勝第3試合始めたいと思います! 個人戦ではゴリスター選手に敗れたコウガ選手ですが、その屈辱を晴らせる事は出来るのか!? 期待です! 両者、構えてください!」
騎士団と俺達はそれぞれの武器を持ち、試合開始の合図を待つ。
「それでは始めたいと思います! レディーーーッ、GO!!!」
「「身体強化!」」
試合開始の合図と共に、俺とソルトは身体強化のバフをかける。
「パーフェクトボディ! ぬうん!」
ゴリスターも前回同様に強化スキルをかけてこちらに迫る。
そしてオルガーはノシュタールの前で盾を構えて、ノシュタールが詠唱を開始する。
「火を纏いし豪矢……」
それを見た俺とソルトは即座に動く。
「スピリム、シャープネス!」
ソルトに速度バフと攻撃力バフを即座にかける。
「瞬歩!」
ゴリスターの横をすれ違うように通り過ぎ、一直線にオルガーの元へと駆け抜ける。
「……ぬぅ!?」
ゴリスターは一瞬ソルトの事を気に掛けて後ろを振り向くが、それでも歩みは止めずに俺とメイラン目掛けて走ってくる。
オルガーはソルトの瞬歩に対応して盾を構え、その後ろではノシュタールが詠唱していた魔法が放たれる。
「ファイアーランス!」
炎に燃える槍がソルトに目掛けて数発放たれた。
「ほっ! よっす!」
ソルトは瞬歩を緩め、ファイアーランスを左右にステップを踏んで避けながらオルガーへ突撃、盾に連続蹴りを見舞う。
「脚技……! 速い!」
オルガーが初めて口を開く、ソルトの脚技に驚いたようだ。
「ぬぅぅぅん!」
ソルトとすれ違ったゴリスターが俺の近くにまで迫るが、後方で詠唱していたメイランの魔法が発動。
「ファイアーボール!」
ファイアーボールが俺の左右から現れ、ゴリスターを襲う。
「っ! ぬおぉぉぉぉ!」
ゴリスターはファイアーボールを撃墜すべく立ち止まり、一つ一つ殴り落としていく。
「アクセルブースト!」
俺はその隙にソルトの援護とノシュタールとの対決に向かうべく、ゴリスターの隣を通過する。
「むっ!?」
「悪いわね、貴方の相手は私がするわ!」
メイランは空からゴリスターへと迫っていく。
「はぁぁぁぁ!」
「ぬぅん!」
メイランの空からの襲撃に拳を合わせにいくゴリスターだったが、拳の当たるギリギリでメイランは身体を逸らして拳を躱した。
「なぬ!?」
そして、ゴリスターの背後を取って数発拳を叩き付ける。
「ぐぬっ!」
「痛っ! かったいわね! 筋肉が防具ってわけ!?」
パーフェクトボディにより強化された身体は、鋼のように硬い。
「ぬおらっ!」
ゴリスターは、腕で振り払うかのように振り返る。
「っ!」
身体を逸らせて振り回してきた腕を回避、そしてバックステップした際に。
「すぅぅぅ……」
息を思いっきり吸い込み、ゴリスター目掛けてブレスを放つ。
「ぬおぉぉぉぉぉぉ!!!」
ゴリスターの身体は、炎のブレスにより燃え上がるのだった。
「ファイアーランス!」
ノシュタールのファイアーランスが俺に向かってくる。
「シェミィ! 力を貸してくれ! 装纏!」
俺はシェミィの魔力を纏い、更なる加速。
一瞬アイスウォールを展開しようかと考えたが、炎と相性が悪い為に断念した。
「ふっ、はっ!」
ファイアーランスをナイフで弾き、躱せる物はステップで躱し、オルガー目掛けて走っているように見せかける。
もしノシュタールが前に出てきてくれればラッキー。出てこなくとも、オルガーにちょっかいだしてソルトが有利になるように動こう。
「させない!」
ノシュタールがオルガーとソルトの横を通過し、俺のナイフに合わせて剣を振るった。
これで1対1になったな、予定通りだ。
「止められましたか」
「コウガ君、随分動きが良くなったな。素晴らしいよ!」
「お褒めどうもですよ! はぁぁ!」
俺は風魔力をナイフへ流し火力を上げて、ノシュタールとの1対1の攻防に入るのだった。
ソルトもオルガーと1対1で戦うべく、周りを見る余裕を与えないよう連撃し続けていた。
「くっ!」
「まだまだっすよ!」
ソルトの脚連撃は止まらない。全てガードされているものの……あまりの連撃の速さに武器も出ない。
ノシュタールが隣を通過していくのが2人には見えていた。
ソルトは連撃を続けつつも口を動かした。
「これで予定通り1対1っす、純粋に勝負出来るっすよ」
「……そういう作戦か」
「っす。さぁ、ご主人のサポートに入りたいんで、さっさと倒させてもらうっす!」
「……やれるもんならな」
再びオルガーと対峙するソルト。
作戦立てた通り、1対1に持っていく事に成功した俺達3人。
このまま1対1で戦って、万が一誰かが相手を倒すことが出来れば……もしかするかもしれない。




