86話 作戦会議
カエデとシェミィに癒されている間にも試合は進み、やはり騎士団の3名が勝ち上がって俺達の対戦相手は騎士団に決まった。
メイランの鬱憤晴らしも終了して戻って来ていた。
「やっぱり勝ち上がってきたっすね」
「だな……来て欲しくなかったが、仕方ない」
もふもふっ。
「パパ、あの3人の対策考えないと」
「そうだな……」
もみもみ、もふもふっ。
「コウガ様」
「……ん? 何だ?」
もみもみ、もみもみ……。
「……カエデが茹で上がりそうなくらいに顔を真っ赤にしながら、声が出そうなのを我慢してるわよ?」
「……あ、やり過ぎたか」
パッと尻尾から手を離して解放する。
「……ふぁっ、はぁ……はぁ……」
椅子の背もたれに身体を預けて、肩から息をするくらいに出来上がったカエデ、身体が軽くピクンピクンとしている気がする。
さすがDEXがAだ、尻尾を撫でたり揉んだりするだけでカエデが蕩けてしまった。
本来の姿状態のDEXのA+でないのでまだマシだとは思うが……Aでも充分な火力をしている。
メイランがカエデに近付いて耳打ちする。
「お疲れ様、カエデ。ちょっとコウガ様連れていくから、暫く休んでなさい……」
「んんっ、ふぁい……」
メイランの息がかかりピクンとさせたカエデだったが、内容は聞き取れたのか、手を小さくヒラヒラとさせていた。
「コウガ様とソルト、ちょっと外で作戦会議するわよ」
「分かった。ミツキ、また連絡頼んでいいか?」
「分かりました。次の試合まで後3試合なので、案外早い可能性ありますよ?」
「了解、それまでに何とかするよ。セシル、少しカエデを頼む」
「了解した」
カエデの事はセシルに頼み、俺とメイランとソルトで外に出て作戦を立てる。
ちなみにシェミィは俺の影に潜んで周りを警戒してくれている、影からでも周囲の様子は見えているらしい。
「さて……あの3人をどうやって倒しにかかる?」
「そうね……ゴリスターはまず1体1にしてはダメね、タイマンでは勝ち目が無いわ」
「そうっすね、避け続けるだけならまだマシっすけど……まともに打ち合えば100%打ち負けるっすね」
あのゴリスターは見た目から分かるように超重量級のパワー型だ。
俺のアブソリュートフローズンでも少しの間は持ち堪えたが、奥義により打ち砕かれるくらいだ……あれはまともに打ち合う訳にはいかない。
それに、魔力を圧縮させずに上級魔法を使うと、魔力消費量が凄くてすぐガス欠になる。
多分、まだ上級を使うくらいのレベルや魔力量に至っていないのだろう。魔力圧縮という裏技で発動させているに過ぎないのだ。
「ご主人、ゴリスターの対処どうするっすか? ご主人の氷で数秒でも足止めするっすか?」
「んー……アイスウォールでは間違いなく足止めすら出来ない、アブソリュートフローズンなら暫くは持ち堪えるが……あれは魔力練り上げないと発動した瞬間にガス欠になるから使えないぞ」
「まぁ、そうっすよね。だとしても、避け続ける余裕なんてないと思うっすよ。ノシュタールやオルガーからの妨害だってあると思うっすから」
確かに、1対1ならともかく3対3だ……1人だけ相手にし続ける訳にはいかない、周りからの妨害もあると見た方がいい。
「いや、ガス欠なら回避方法はあるんじゃない?」
「え?」
メイランがそう言いながら俺に近付いてくる、そして俺の背後に周り影の近くに座り込む。
「シェミィ、いるんでしょ?」
「ん、居るよ」
シェミィが影からニュッと出てくる。
「確か、今コウガ様と魔力が繋がってるのよね?」
「んっ」
「なら、シェミィからの魔力を借りればガス欠問題は多少解決じゃない?」
「ん、確かに私の魔力を使えば1回使ったくらいではガス欠にはならないと思う。でも……相手は3人、ガス欠を免れたとして、少なくなった魔力の中であの3人に勝てるとでも?」
「そ、それは……」
ごもっともだ。風刃や魔法には魔力を使う、そしてカエデの技達も魔力を消費させる技が多いのだ。
なので、アブソリュートフローズンを使うと戦いに使う魔力が足りなくなってくる。
「そうだな、シェミィの言う通り魔力が足りなくなる。だからアブソリュートフローズンは魔力を練り上げる時間がない限り、暫く封印だ」
「なるほど……ならゴリスターの攻撃は避け続けるしか無いわね……」
きついが、そうするしかないだろう。
「避けるを主軸にするなら、空中からの遠距離攻撃が出来て回避の特訓をしたメイランが適任な気がするな」
「まぁ……そうねぇ、そうするしかないわね。地上戦はこちらが不利だもの」
メイランは渋々ゴリスターの相手を引き受けてくれた。
「なら後はノシュタールとオルガーっすけど……オルガーは守護神で、試合を見る感じ積極的に来る感じではないっすね。ノシュタールは近距離遠距離、近接攻撃に魔法とバランスよく戦えて安定して強い部分があるっす、この2人をどう崩すか考えるっすよ」
「だな。多分オルガーなら俺のアイスウォールでも対処は可能だとは思うが、ノシュタールはどうだろうなぁ……」
ノシュタールが本気を出したらどうなるかまでは分からないが、ゴリスターのような怪力化け物って訳でもないはず。
ただ試合では火魔法も使っていたはずなので、氷との相性としては最悪なのが問題か。
盾役で火力控えめになりがちなオルガーと俺が対峙するのが1番バランスがいいだろうが……個人戦第一位であるノシュタール相手にソルトがついていけるかどうかも問題だ。
ノシュタールとオルガーを俺が食い止めている間に、ソルトとメイランでゴリスターの相手してもらうか……ノシュタールが強くて手に負えないなら、俺はノシュタールを主軸に狙い、オルガーにはソルトをぶつけて、メイランは遠距離攻撃でゴリスターを削ってもらうのも視野か。
今考えついた案を2人に提案し、どうしたいか聞いてみる。
「んー……なら、自分はタンクのオルガーに喰らいついてみるっす。タンクで移動スピードもあまり無いみたいっすから、邪魔を入れられないくらいにちょっかいかけつつ、2人をサポートに回るっす」
「そうだな。強さが未知数なノシュタールは、俺が引き受けるとしよう」
「これで役割分担はOKね。でも、ゴリスター相手にどう戦おうかしら……? 物理が効きにくそうよね」
「効きにくいのもあるが、そもそもあの破壊力があるのに接近戦はまずい。エクスプロージョンノヴァで吹き飛ばすくらいしか思い付かないぞ」
あの筋肉に俺の身体は常に危険信号を出していた。
近付くのは危険すぎる。
「なら、詠唱時間を稼ぐしかないわね。飛行しながら詠唱も可能は可能だし、何とか発動させてみせるわ」
「了解。それじゃあ俺とソルトであと2人を引き付けて、邪魔が入らないように立ち回りつつ、1対1になるようにしよう」
「了解っす」
これ以上考えても仕方ないので、作戦タイムもこれで終了だ。
この戦いの鍵は、俺とソルトがノシュタールとオルガーに喰らいついていけるかどうかと、ゴリスターへの遠距離攻撃が上手くいくかどうかが鍵になる。
誰か1人でも打ち破る事が出来れば数の有利へと変わっていく。
「よし、頑張ろうか」
「そうね、若干不安だけどなるようにしかならないわね」
「うっす! 頑張るっす!」
根本的な解決は一切していないが、仕方ない。
相手との実力差が違う、だからこそ自分達ができる事をやる……それだけだ。
ミツキから連絡はないので、まだ試合まで時間があると思うので応援席へ戻ったのだった。




