48話 友達
山脈の大石窟を抜けた俺達は、ノイシュ側出口で野宿する事になった。
4人入れる大きいテントを張り終わってカエデと一緒に一息ついていた所、カリナさんに声を掛けられた。
「コウガさん、お1つ聞きたい事が」
「はい、何でしょう?」
「ノイシュに来ていただく事になりましたが、元々はどちらに行かれるご予定だったのですか?」
あぁそうか、ノイシュに案内してとは言ったが、元々からノイシュに行く予定だったって事は話してなかったな。
「あぁ、すみません。そういえば話してなかったですね。俺達は元々ノイシュを目指して移動していたので、ちょうど良かったんですよ」
「そうだったのですね。もしかして、武闘会にご出場なさるのですか?」
「はい、その予定です」
「同じですね! 実は私達も団体戦で出場する予定なのですよ」
「そうだったんですか! 組み合わせ次第では敵として当たるかもしれませんね」
「ふふ、助けて貰ったご恩はありますが、手加減はしませんよ?」
カリナさんはウィンクしてこちらを見た、可愛らしい奥さんだな。
カリオンさんが惚れるのもわかる気がする。
「望むところです!」
カリナさんと握手を交わし、恩があるとか関係なく正々堂々戦うことを約束した。
しかし、カリナさん達が団体戦に出場してくるのか、これはなかなかに厄介だ。
ダンジョン内で各個人の強さや連携を見ていたが、見事な物だった。
カリオンさんのタンク性能、恐らくジルさんに近い。そしてその硬いタンクの後ろでサリーナさんの魔法による蹂躙……それも中々な威力をしていた。ミラさんには及ばないものの危険である事には変わらない。
ダンジョン内で見たサリーナさんの魔法は属性的に2種類、水魔法と火魔法だ。まだ見せていない魔法もあるかもしれないが……。
そしてカリナさん、彼女の支援魔法も多彩だ。
攻撃力を上げるシャープネス、守備力を上げるプロテクター、素早さを上げるブースト、知力を上げるインジェネーションと、基礎ステータスを上げる魔法を網羅しており、更にはエリアサークルという範囲回復まである。
かなりレベルの高いヒーラーなのだろう、俺もこういう支援魔法を使えた方がいいんだろうか。
「さぁ、夕飯にしましょうか」
カリナさんが後ろを見るような仕草をするので見てみると、カリオンさんがバーベキューのセッティングをしていた。
焚き火台のような物を2つあり、サリーナさんが火魔法で焚き火を起こしている。
カエデがそれを見て「ご主人様、お肉! お肉食べたい!」と、俺の腕を掴みながら連呼。メイランが落ち着きなさいと言いながらカエデを落ち着かせにかかる。
勿論、カリナさん達に負担の掛からないようにこちらもお肉等の材料は出すけども、カエデがあの様子だと結構食べちゃうよなぁ。
カリナさん達の負担にならないように気を付けなきゃな。
そして待ちに待った夕飯、焚き火台を全員で囲みバーベキューの開始だ。
「カリナさん、俺達も肉や野菜を提供するので、皆さんで食べてください!」
俺はブラックモウの肉やワイルドボア肉、ピグ肉や野菜等を取り出し提供。
「あら、モウ肉にボア肉まで! ありがとうございます、コウガさん。少し頂きますね」
「是非どうぞ!」
計7人+1匹のバーベキューはワイワイと騒がしく楽しく時間が過ぎていった。
カエデとサリーナさんが意気投合したのか楽しそうに会話していたのだが、そこにメイランとソルトも乱入し、4人は終始笑顔ではしゃいで楽しんでいた。
こういうの良いね。武闘会では敵になるが、それ以外ではこうして仲良くしていきたいものだ。
お腹が膨れてきたので少し皆とは離れ、倒木に腰を下ろして食休みをしていると、カリオンさんがこちらに来た。
「隣、いいかな?」
「はい、どうぞ」
カリオンさんが隣に座る。少しの間無言でバーベキューを楽しむ皆を眺めていたが、カリオンさんがゆっくりと口を開いた。
「サリーナは、姉のカリナよりだいぶ歳が離れていてね。君達と似たような年齢だ。こうして年代の近い子と遊ぶ機会が少ないから、こういう機会が有難いんだ」
「そうなんですね」
「結婚して、冒険に出る時も私も付いて行く!と聞かなくてね。一緒に冒険に出たはいいが、同年代の友達がなかなか出来なくて……冒険者だから仕方ないと言えば仕方ないのだがね」
「ですね。冒険って事は街とかにも長居はしないでしょうし、友達も作りにくいですよね」
ソルトやメイランは故郷に帰れたとしたら親しい仲の人も居るだろうが、カエデは故郷を失っている。
村と、ごくたまにトライデント王国にしか行ったことしかないカエデにとっては、メイランやソルトを除けば初めての友達になれるかもしれない存在かもしれない。
「なのでね、君達にお願いがあって……サリーナと友達になってもらえないか? 仲良くしてやって欲しいんだ」
「みんなも喜んで受け入れるとは思いますが……武闘会を終わった後、自分達は旅を続けなくちゃいけません。それでもいいですか?」
「勿論だとも。何、旅で離れ離れになろうとも絶対に会えないって訳じゃない。また再会することがあれば、そこでも仲良くして貰えると嬉しい」
「そういう事でしたら、喜んで」
「ありがとう。代わりに、私達に出来そうな事があるなら是非言ってくれ。いつでも力になろう」
「ありがとうございます」
こうして力になってくれると言ってもらえるのは本当に有難い。
周りを頼らざるを得ない事が起きないのが1番だが、いざって時に頼れる人が居るのと居ないのとじゃ全然違うよな。
もし何かあった時は頼るとしよう。俺の変身も見ているんだし、誤魔化す必要がないのも大きい。
って、そうだ。俺の変身を口止めしておかないと……。
「あ、そうだ。カリオンさん達に1つだけお願いがあるんですが」
「ほう、何かな?」
「えっとですね、ダンジョン内で見たと思うんですが、俺がドラゴン族になった事でお話が……」
「あぁ、助けて貰った時のあれだね。不思議に思ってはいたんだが、聞くのは不味いかと思って聞かなかったんだ。きっと特別な物なのだろう?」
「はい。緊急事態だったので仕方なく行使しましたが、普段は隠して旅をしているんです。出来れば誰にも話さず隠しといてもらえると助かります」
「もちろんだ。コウガ君達は命の恩人だからな、隠し通すなら喜んで協力しよう」
「ありがとうございます!」
こうしてカリオンさんとの話が終わった後もワイワイと食事を楽しみつつ、カリーナさんと友達になる件も全員に説明した。
カエデは「もう既に友達だもんねー?」って言って、カリーナさんも同じように「ねー!」と返していた所を見て、もうそんなに仲良くなってたのかと驚いた。
まぁ、カエデってコミュニケーション能力高いし人見知りする訳でもないから、気が合えばすぐに仲良くなるのは必然だったのかもしれない。
夕飯を終えて片付けを手伝った後、野営の番のローテーションを決めてから就寝した。
ローテーションで火の番をして一夜を過ごす。
魔物が現れることなく時間も過ぎ、全員体調万全で朝を迎えたのだった。
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