45話 山脈の大石窟
初めて入ったダンジョン、山脈の大石窟を進む俺達。
中は若干薄暗いが、壁の素材であろう鉱石が発光しており、視界は割とクリアだ。
「ダンジョンって初めて入ったけど、こんな感じなんだな」
「ご主人様の想像してたダンジョンってどんな感じなの?」
「例えば……真っ暗だからライトの魔法や松明が必須とか、何十階層もあって最下層にはまだ未到達、だとかそんなイメージがあったからさ」
「それって前にご主人が言ってた想像の物語ってやつっすか?」
「そう。俺の生きていた世界にはこんなのは一切なかったからな」
「っ! みんな止まって。何か音がする」
カエデが立ち止まり、耳をピコピコと動かしながら周囲を探る。
ゆっくりと道を進んでいくと、先には真っ直ぐの道と横に曲がる道があり、曲がり角の近くでカエデが停止の合図を出した。
カエデと俺はゆっくりと曲がり角から横の道を覗き込むと、そこにはゴーレムの姿があった。
「ゴーレムだね」
「あれがゴーレムか。砂と石で出来てるようだが……物理は効くのか?」
「普通のゴーレムなら問題ないっす! 身体強化していれば、自分でもカエデでも砕けるはずっす」
「そうか、それなら安心だな。カエデ、頼めるか?」
「了解! 身体強化」
身体強化を掛けたカエデが、曲がり角の壁に背を向けて張り付く。
そして俺がゴーレムの動きを監視し、タイミングを測る。
「今だ!」
「てりゃぁぁぁ!」
不意打ちの一撃により、まともに喰らってよろけるゴーレム。
しかし流石ゴーレムだ、1撃じゃ倒れない。
「まだまだいくよ!」
カエデの連続パンチにより、ゴーレムの身体がどんどん砕けていき、魔石のある核が見えるようになってきた。
不意打ちで混乱したゴーレムは、カエデの連撃により反撃が取れずにいた。
「見付けた! これを一点突破で……叩く!」
カエデの見事な連撃により拳が核へと到達。
核をひと殴りするとが壊れ、同時にゴーレムの身体はガラガラと音を立てて崩れ去った。
「いやー、硬いね。少し手が痺れちゃった」
カエデが手をブンブン振りながら帰ってきた。
「お疲れカエデ。手は大丈夫か?」
「うん大丈夫! 刃物だとあれは刃こぼれしちゃいそうだから、魔法か打撃系主体の方が良さそうだね」
「それなら変身せずにこのままがよさそうだな。さぁ進むぞー!」
「「「はーい」」っす」
このダンジョンに出てくる1層の魔物は大体把握出来た。
ゴーレムにアジットスライム、ロックアルマージにスパイダーと言った具合だ。
薄暗い所を好みそうな魔物と、岩や石関連の魔物が多めだな。石窟と言われるだけあるかも。
1階層をどんどん進む。
そう言えば罠が見当たらない気がするが……この世界のダンジョンには罠がないのか?
「コウガ様、そんなに周りをキョロキョロしてると変質者に見えるわよ?」
「え、そんな変に見える?」
「そうっすね、変質者は言い過ぎっすけど……挙動不審に見えちゃうっす。何か気になることでもあるんすか?」
「あぁいや、罠とか無いのかなって思ってさ」
「え、罠? 誰かが仕掛けていくんすか?」
「えっ?」
「「えっ?」」
なんの事やらとメイランとソルトは首を傾げる。
「もしかして、この世界のダンジョンには罠がないのか?」
「ダンジョンに罠……? 罠ってどういう意味か分からないっすけど、モンスター部屋とか宝箱に化ける魔物のミミック位しか怪しい物はないっすよ? 基本魔物が現れるだけっすね」
「そ、そうなんだ」
モンスター部屋にミミックくらいか、何だか前世のゲームみたいな世界観だな。
例えば、某不〇〇のダ〇〇〇ンとかを連想させるね。
「モンスター部屋は扉が無い限り入る前から分かるっすし、まず不意討ちされる事は無いと思っていいっすね。ミミックも宝箱つついたりすればすぐ分かるっす」
「なるほどな、勉強になる」
魔物を倒しながら進み、2回程行き止まりルートを当ててしまいつつも進んでいくと、2階層へ上がる階段を発見。
「あっ、ご主人様! 階段あったよ!」
「お、これで1階層は終わりか。みんな、疲れてないか? 大丈夫か?」
「私は大丈夫だよ!」
「私も問題ないわね」
「自分も大丈夫っす! ただ、階段傍は魔物が極端に少ないエリアな事が多いっす。実際階段傍では魔物はあまり見ないっすし、少しだけ休憩するのも良いかもっす」
「そうだな、ダンジョン初挑戦で無理する事もないし、休憩にしよう」
階段に全員腰掛ける、俺は水魔法で水を呼び出し全員に水分補給してもらう。
「んー! ご主人様の出す水、冷たくて美味しいね!」
「飲み水にしてもよし、生活水にしてもよし、便利だよな水魔法」
「自分も魔法使えたら良いんすけどねぇ。土属性の適正はあるのは分かってるんすけど、スキルが覚えないんすよ」
「俺もそうなんだよなぁ……ま、諦めず頑張ろう」
「っすね」
20分程休憩してから、階段を上がって2階層へ進出する。
すると、とんでもなくキラキラした物が横切って曲がり角を曲がっていくのが見えた。
「ん!? ちょい止まって」
「え、どうしたのごしゅっ」
「しっ! 静かに」
俺は咄嗟にカエデの口を手で塞ぎ、足音を立てずに曲がり角をしゃがみながらチラっと覗き込む。
そこには銀色でテカテカキラキラした丸い物が見えた。
「アレってまさか……メ〇ル〇〇イム!?」
「もごもごごご!?」
顔を赤くしたカエデが、俺に口を手で塞がれてもごもごしていた。
「あっ!? 悪い、つい」
「んもービックリしたよ……で、何を見つけたの?」
「あれを見ろ、あれ」
「……?」
カエデはしゃがんでる俺の上から覆い被さるように覗き込む、頭にふにゃっとした感触があった。
まぁ胸当てしてるから片胸だけだけど、柔こうごさいました。
「あっ!? あれってレアメタじゃない!?」
「「えっ!?」」
ソルトとメイランもレアメタって言葉に反応し、俺の背中から覗き込むように体重を掛けてきた。
「うっ!? ちょ、まっ……うおっ!」
「きゃっ!」
「あっ!」
「うわっ!」
俺が1番下になって3人が重なるように倒れ込む。その音に驚いたのかレアメタは超スピードで逃げ出して行った。
「いったった……みんな、大丈夫?」
「じ、自分は大丈夫っす……」
「私も大丈夫よ、コウガ様は……あっ」
3人に押し潰され、んおぉ……と声を漏らしながら、片手は地面を叩いていた。
「あぁっ! ごめんご主人様!」
「早くどかないと、ソルト早く!」
「ちょ、ちょっと待つっすよ!」
ソルト、メイラン、カエデの順に慌てて起き上がり、俺を起こしてくれた。
3人の体重が乗ったのはなかなかに重……いや、幸せだったぞ……。




