44話 ソルトの脚技
次の日、俺達は昨日教えあったスキルをお披露目する為に、ノイシュに行く為のルート確認を兼ねて洞窟ダンジョンの視察に行く事にした。
ダンジョンの視察をしてダンジョン内から抜けるのか、もしくは山越えするかを決めようって事になったのだ。
ルートを決めたら一旦サンビークに戻り、準備を整えてから再出発する感じだな。
そして、今日までに武闘会に参加する際の変身先を決めようと思う。
「ダンジョンに向かう前に、ソルトへプレゼントだ」
「えっ? 自分にっすか?」
「あぁ、受け取ってくれ」
『琥珀のアンクレット』
AGI中UP、脚撃術小UP
をソルトに手渡す。
「わぁ……綺麗っす! アンクレットって事は足首に付ける装備っすね?」
「そうだ、ソルトにピッタリだと思って」
「ありがとうございます、ご主人!」
少しだけ眺めた後に足首へ装備した。
カエデとメイランにもプレゼントしてあるから、ソルトだけ無しってのは違うよな。
本当ならシェミィにも何かあげたいんだが……テイムモンスター用の装備って未だに見た事ないんだよな。
テイムの証になる装備はあるんだから、装飾品だってあると思うのだが。
「なぁみんな、テイムモンスター用の装備品って見た事あるか?」
「この辺じゃ見た事も聞いた事も無いわね……そもそもテイマーって珍しいから」
「そうだよね、私も村と王国にしか行ったことないからご主人様と同じかな」
「あっ、自分見た事あるっすよ!」
ソルトが元気に手を挙げた。
「お、本当か? 何処で見た?」
「自分、サイラ砂漠って所にあるオアシス地帯に出来た街、シャイラって所出身なんすけど、そこにはあったっすね。そこから砂漠を南に超えた先の国や地域にテイマー専門店みたいな所とか、ペットショップもあるっすよ!」
カエデが本当に!?と期待をした顔でソルトに迫る。シェミィのテイム主だからテイマー専門店が気になるのだろうが、俺は別の所に反応している。
そう、ペットショップ!
動物好きな俺が、休みの日にたまに行っていたペットショップ。そこでは触れ合いOKって事で様々な動物と戯れてきた思い出がある。
この世界にもペットショップがあるとはな。凄く興味がある、めちゃくちゃ行きたい!
俺もカエデと同様に期待をした顔でソルトに迫る。
「ペットショップか、興味深いな。サイラ砂漠ってどの辺にあるんだ?」
「え、えっと……すね、トライデント王国から南方向なんすけど、いくつかの街を経由して、大きな湖をも超えて、その先がさっき言ったサイラ砂漠になるっす。ペットショップに行くなら、砂漠を避けては通れないっすかねぇ」
それを聞いた瞬間、俺とカエデは手と膝を地面について項垂れた。
今、俺達はトライデント王国から東へ向かっており、これからは北へ移動する予定だ。要するに王国からは北東方面……サイラ砂漠のある方角からほぼほぼ正反対に旅をしているのだ。
更に砂漠をも越えないといけないとなれば、気軽に行けるようなものでもないのは想像に容易い。
「あぁ、暫くおあずけか……」
「うぅ……シェミィごめんね」
「にゃーう」
シェミィが俺とカエデに擦り寄って頬っぺを舐めてくれる。なんて優しい子なんだ。
俺とカエデはシェミィの顔を撫でまくってショックを癒したのであった。
「えっと……これ、悪い事したっすかね?」
「いえ、ソルトは悪くないわよ。気にしないでいいわ」
「そうっすか」
そうして、俺達はダンジョンを目指して北へ移動を開始。その道中でお互いのスキルチェックをし合う事に。
まずは俺の変身後の動き方の違いを見てもらった。
狼人族に変身し、ナイフを使った近接戦闘と魔法を組み合わせるトリッキーな戦い方。
ドラゴン族に変身し、空中での魔法やドラゴン族固有のブレスや火球、飛び上がってからの物理攻撃という自由度が高めのパワー型な戦い方。
そして通常時の魔法による後方支援と魔法火力による、司令塔や援護に重きを置いた戦い方を披露した。
「なるほど、様々な状況において有利な戦い方を選べるってのは凄く強いっすね。魔法使いがこんな事してきたら、なかなか対処が難しいと思うっす」
「だろ? だけど、戦いはまだまだ初心者だし、この能力にも目覚めたばっかりだからな……この能力を活かせるようになるまでは、なるべく周りには隠しておこうと思ってる」
「その方が良いかもしれないっすね。人前で全力を出せないのはちょっと勿体ない気はするっすけど……」
「そうだよなぁ。まぁ、俺達しか居ない状況だったらバンバン使っていくつもりだし、その辺りは臨機応変にしていくしかないな。どちらでも上手く合わせられるようになっていこうか。それじゃ、次に魔物が現れたらソルトの力を見せてくれるか?」
「はいっす、ご主人!」
暫く歩いていると、遠目にオーク2体を発見。
ソルトは自慢の足を使ってオークの元へと駆けていく。
「ふぅ、身体強化!」
途中で身体強化を掛けて更にスピードを上げて行った。
「ぶおぉぉぉ!」
オークもソルトに気付いたようで、2匹は突進を仕掛けてくる。
さて、ソルトはどうするかな。
ソルトはオークまで後10mといったところで。
「……瞬歩」
姿を消した……と思った瞬間、いきなりオークの目の前に現れる。本当に一瞬だった。
そして膝蹴りでオークの腹部を攻撃、よろめいた所を蹴り上げによってオークを空へ打ち上げた。
「ふっ!」
ソルトは空に上がったオークを追いかけるようにジャンプし、サマーソルトの要領でオークを蹴り落として仕留めた。
「なんて足技だ……そんでもって、あの脚力に機動力まで……カエデだったらあんな感じで動けるか?」
「い、いや、私でもあんな動きは出来ないかな……」
俺はソルトの動きをしっかり目で追い、頭にインプットする。
俺もソルトの砂狼族に変身したらあれをやるかもしれないしな、覚えておかねば。
ソルトは空中でサマーソルトをした後にくるっと反転し、2体目に照準を合わせる。
オークは持っていた棍棒をソルトに投げつけるが、ソルトは棍棒を蹴って軌道をずらして躱す。
「瞬歩」
瞬歩によりオークの背後を一瞬で取り、背面回し蹴りでオークの頭を直撃。
倒れ込んだオークの背中へ膝凸、2体目のオークも息絶えた。
ソルトはオークから耳と魔石を取り出してこちらに帰ってきた。
「ふぅ、こんなもんすね」
「お見事だった。あの脚技凄いな」
「ありがとうございますっす。故郷に師匠が居たんすけど、そのお方が脚技の達人だったっすよね。その師匠から手解きを受けてたんで脚技が得意になっちゃったっす」
「なるほど、師匠が居たのか。なら話は分かる」
師匠と同じ戦い方になっていくのはよくあることだろう。
脚技特化ってのも中々に珍しいところだが、気にしても仕方ないな。
「ねぇソルトちゃん! 私にもあの脚技伝授してくれない? トレーニングとかも教えてくれたら嬉しいんだけど……」
「勿論いいっすよ。ちゃんと教えられるか不安すけど、普段やってるトレーニングならしっかりと教えられると思うっす」
「俺もそれに付き合っていいか?」
「ご主人もっすか? もちろんいいっすよ」
「やった! 頑張ろうねご主人様!」
「あぁ!」
そう約束し、ダンジョンへ向かって再度歩き出した。
その先々で出会う魔物をカエデ&シェミィ、メイランでどんどん倒していく間に、俺は2人と1匹の戦闘の特徴をソルトに解説しながら覚えさせていく。
そんなこんなしている内に3時間経ち、俺達はダンジョンに辿り着いた。
ダンジョンの入口には兵士の駐屯地と宿があり、聞く所サンビークがこのダンジョンを管理しているんだそうだ。
ダンジョンはそれ程広い訳ではなく、半日くらいで反対に抜けられるのだそう。
全4階層と比較的小さめダンジョンで、2階層終わりの3階層へ向かう階段付近で反対入口側との道と合流出来るらしいが、そこから3、4階層に向かうことも可能なのだという。
その合流地点には目印がある為、何処から曲がれば反対に抜けられるかはちゃんと分かるようになっているらしい。
今から入るとするなら、反対に出てくる頃には夜又は深夜になる計算かな。
「まさか宿があるとは思わなかったな」
「そうね。ダンジョンの視察したらサンビークに戻る予定だったけれど、ここに宿があるのなら戻る必要もなさそうね」
「そうだな。それじゃあ……3時間くらいダンジョンを探索してみて、どれくらい危険かを確認しようか。もし危険が少なく向こうに出られそうなら抜けてしまい、反対側で1泊。しっかり1日使って攻略した方が良さげなら引き返し、ここで1泊する感じで行こう」
「そうね」「りょうかーい!」「了解っす」
「よし、じゃあ行くぞ!」
山脈越えダンジョン、その名も山脈の大石窟の中へ足を進めた。
俺からすれば初めてのダンジョンだ。
中がどうなっているのか、少し楽しみだな。
ご覧頂きありがとうございます。




