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恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ  作者: トモサン


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恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 8

米倉が連れて来た四人を私は見た。


 男が二人に、女が二人…


 男は、米倉の姉の夫と、米倉の実の弟に違いない…


 女は、米倉の実の姉と妹…


 それぞれを一目で、言い表すと、米倉の姉の夫と思われる男は、背が高いが、メガネをかけた神経質そうな男…


 米倉の実の弟と思われる男もまた背が高いが、なんとなくひ弱なイメージの男…


 この二人の男と、二人の女は真逆…


 なにが、真逆かといえば、男たち二人が、背が高いのに、比べ、女たちは、背が低いのだ…


 男たち二人は、身長が、175㎝くらい…


 しかし、女たち二人は、姉の方が、150㎝よりも少し大きい程度で、妹の方は、私、高見ちづると同じくらいの155㎝程度と見た…


 要するに、姉の方は、自分が、身長が低いから、身長の高い男を夫に選んだのだろう…


 私はそう思った。


 私、高見ちづるもまた身長が、155㎝と小さいから、姉の気持ちがわかる…


 夫婦で、二人とも小柄だと、なんとなく嫌だし、また自分が、背が低いから、背が高い男に惹かれる気持ちもわかる…


 誰もが、自分にないものを相手に求める典型だ(笑)…


 これが、小柄な男ならば、やはり、同じように、大柄な女を求める傾向が強いらしい…


 男女とも、自分にないものを、求める、わかりやすい事例だ…


 ただ、四人の中で、ひときわ目を引いたのは、妹だった…


 なぜなら、私、高見ちづると同じようなタイプの美人だったのだ…


 私は彼女を一目見て、米倉の母親が、私を見て、


 「…おキレイね…」


 と、言ったのが、ウソだと思った。


 自分の娘が私と同じタイプの美人なのに、私を美人と思うわけがない…


 なにより、自分の娘の方が、私より、若かった…


 つまり、仮に容姿が互角だとしたら、若い方が勝つ…


 女は年齢が若い方が、世間で、もてはやされる…


 当たり前のことだった…


 ゆえに、私と米倉の妹を比べれば、米倉の妹の勝ちだった…


 要するに、米倉の母が、私に言った、


 「…おキレイね…」


 と、言った言葉は、お世辞に過ぎないと、わかった。


 反対に、姉の方は、メガネをかけていて、悪くはないが、取りたてて、これといった特徴のない顔の女だった…


 全体に小柄で、可愛らしいのだが、特徴がない…


 姉と姉の夫はメガネをかけていて、余計にそれが、顔を隠しているというか、わからなくしている…


 私が、ここまで、考えたとき、米倉が、それでは紹介しますと言って、四人それぞれを紹介した。


 「右から、姉の夫、弟、姉、妹の四人です…」


 と、至極簡単な紹介をした。


 その内訳は私が思った通り…


 「…それでは、簡単な自己紹介を…」


 と、米倉が四人に振る。


 「…直一(なおかず)です…」


 と、姉の夫。


 「…正造の弟の新造です…」


 と、米倉の弟。


 「…正造の姉の澄子です…」


 と、米倉の姉。


 そして、私とよく似た小柄な美人が、


 「…正造の妹の好子です…」


 と、言った。


 いずれにしろ、ひどく簡単な自己紹介だった…


 もっとも、初対面で、長々と、自己紹介されても、到底覚えることはできない…


 そう考えれば、ベストな自己紹介といえる。


 私は考えた。


 「…高見ちづると申します…この度、正造さんとお付き合いさせて、頂くことになりました…よろしくお願いします…」


 私は席から立ち上がって、腰を曲げて、自己紹介した。


 同時に、四人が、私に頭を下げる。


 私もまた頭を下げたわけだが、その頭を上げたときに、四人の私を見る目が冷ややかであることに、気付いた。


 一瞬だが、明らかに、冷ややかな視線を私に投げた。


 侮蔑というわけではない…


 侮蔑ならば、また、金目当ての女がやって来たと、思ったと、考えれば、いい…


 しかし、その視線は、むしろ、憐みに近かった…


 ぶっちゃけ、ありていに言えば、今度はこの女か? というような視線だった…


 ということは、もし、私が感じる通りならば、米倉は、これまで、何度となく、今回の私のように、付き合った女を、家族に紹介したのではないか?


 そんな疑問が真っ先に脳裏に浮かんだ。


 とすれば、さっき、米倉の父親が言った、


 「…正造の言葉を真に受けてはいけません…アレは食わせ者です…」


 の言葉の意味がわかる…


 つまり、この豪邸を見せ、結婚を餌に、女を食い物にしてきたということだ…


 いや、食い物という言葉は誤り…間違っている可能性が高い…


 なぜなら、女に金を貢がせ、自分が利益を受けているからこそ、女を食い物にしているということができる…


 米倉の場合は、金持ちだから、女に、金を貢がせている可能性は低い…


 ゆえに、普通に考えれば、結婚を餌に、あっちの女、こっちの女と関係を結んでいたのではないか?


 私は、こう推測した。


 なにしろ、米倉は、イケメン…


 大勢の人間がいても、パッと見て、わかる、目立つ存在だ…


 普通に考えれば、そのルックスだけで、女にモテモテ…


 それに、この屋敷が加われば、鬼に金棒…


 米倉が、あっちの女、こっちの女と、手を出し続けていても、驚くに値しない…


 私は考えた。


 が、これは、まだ私、高見ちづるの推測に過ぎない…


 今の時点では、妄想のレベル(笑)…


 証拠がない…


 いずれにしろ、米倉には、気を付けなければならない…


 もしかしたら、私に言った探偵ごっこも名目に過ぎず、本当は、私、高見ちづると関係することを狙っている可能性も高い…


 私は思った。


 その後、私は、米倉と、その両親、そして、この四人を含めた、合計八人で、お茶を飲みながら、世間話をした。


 高見さんは、今、どんな仕事をしているのですか?


 とか、


 ご両親は?


 とか、


 兄弟はいますか?


 とか、いう当たり障りのない質問だった。


 私はその質問、一つ一つに、丁寧に答えた。


 仕事は、中堅の商社の営業所で、事務をしていること…


 両親は健在…


 兄弟はいない…


 ということを、だ…


 あまりにも、当たり障りのない質問であり、答えもまた平凡だったので、正直、場が盛り上がらなかった…


 ただ、質問の終わりに、


 「…高見さんは、これまで、どんな男の人と付き合ってきたんですか?…」


 というのがあり、


 私はちょっと考えてから、


 「…この歳まで、あまり男性には、ご縁がなかったので、個人的にお付き合いした男性はいません…」


 と、正直に告白したときだ…


 私によく似た、小柄な美人の米倉の妹の好子の目がキラリと光った。


 言葉は発しないが、そんなはずはないと言いたげな視線だった。


 「…ホントにお付き合いしたことは、ないんですか?…」


 姉の澄子が聞いた。


 「…ハイ…ホントに、ご縁がなくて…」


 私は答える。


 私の答えがウソだと思ったのだろう…


 その場に気まずい沈黙が流れた。


 私は、


 「…ホントに、ホントなんです…」


 と、言いたかったが、それを口にすれば、藪蛇になりかねないことはわかっていたので、黙っていた。


 あたりに、白けた空気が流れた。


 「…もしかして、理想が高いのかしら?…」


 妹の好子が初めて口を開いた。


 私は、好子の顔を見た。


 まるで、私、高見ちづるが、生まれながらの敵のように、怖い表情で、私を睨み付ける。


 「…そう言われたことは、一度や二度ではありません…」


 目の前の好子がやっぱりというような顔をした。


 「…ですが、心が動かないんです…」


 私が続ける。


 「…心が動かないということは、どういうことですか?…」


 米倉の義兄の直一が、口を開いた。


 「…言葉通り…ひとを好きになったことがないんです…」


 私の告白に、周囲がシーンとなった。


 「…ひとを好きになったことがない?…」


 直一が唖然として、言った。


 「…それは、どういう…」


 「…昔…学生時代は、男の子に、よく誘われました…ですが、いっしょに、映画を見に行こうとか誘われても、正直、気が乗らないと言うか…そんなことの繰り返しで、いつのまにか、歳だけ取ってしまって…」


 私は告白する。


 私の告白に、一層、周囲がシーンと静まった…


 「…それは、あるかもしれませんね…」


 直一が言う。


 「…言葉は悪いけど、ひとを好きになれないという気持ちはわかります…っていうか、もしかしたら、高見さんは、物事を大きく考えてしまうんじゃないかな?…」


 「…大きく考える? …どういう意味でしょうか?…」


 「…例えば、映画に誘われ、映画を観終わった後、どうするか? とか、考えますね…どこへ行こうとか? 言葉は悪いけど、変な下心はないかとか? そんなふうに色々考えてしまうと、行動はできない…違いますか?…」


 「…それもありました…」


 私は言った。


 「…ですが、やはり、心が動かなかった事実が一番大きいです…このひとに誘われたから、行きたいと思う気持ちが、これまで、33年生きてきて、一度もなかった…それが真実です…」


 私は言った。


この場にいる全員の視線が私に注がれたのが、わかった。


どう言っていいのか、わからなかったのだろう…


やはりというか、正造の妹の好子の視線が、とりわけ、厳しかった…


オマエは嘘つきだ!


と、言わんばかりに、物凄い視線を、私に投げかける。


あたりが、凍ったように、静まり返ったので、またも直一が、


「…好子さんは、その点違うね…」


と、声をかけた。


私とよく似た外観の好子を引き合いに出すのが一番と思ったのだろう…


 「…好子ちゃんは、学生時代から、男のコにモテモテで、それが、楽しいといっていたから…」


 と、周囲を笑わせようとした。


 その場の全員が、直一の言葉に、表情が緩んだ…


 いや、例え、直一の言葉が面白くなくても、苦笑したに違いない…


 それほど、この場の空気が重いものだったのだ…


 が、肝心の好子の反応は意外なものだった。


 直一をキッと睨み付け、


 「…お義兄さん…それをここで言うことはないでしょう…」


 と言うなり、激怒して、この部屋から出て行ってしまったのだ…


 残された、全員が唖然とした。


 私より若いとはいえ、30歳近い女が、こんなことに激怒して、部屋を出て行くとは、思わなかったのだ…


 発言の主である、直一が、


 「…すいません…」


 と、その場に残された全員に詫びた。


 その場を盛り上げようとした直一の発言が、空回りした…


 なにより、直一だけが、血縁者ではない…


 こんな発言をした直一に私が申し訳なく思っていると、


 「…お姉ちゃんは、兄貴が好きだから、結婚したら、高見さんに兄貴が盗られると思ったんだよ…」


 と、新造が、口を出した。


 「…私に米倉さんを盗られる?…」


 「…お姉ちゃんはブラコンだから…」


 と、新造が言う。


 「…ブラコンですか?…」


 私は言った。


 思いもかけない言葉だった。


 「…お姉ちゃんにとって、兄貴は理想の男性なんだよ…」


 新造が続ける。


 「…爽やかで押し出しが良く、いかにも、信頼できる男…いや、そういう外見を持つ男だから…」


 新造の言葉には、毒がこもっていた。


 …そういう外見を持つ男だから…


 この言葉を額面通りに受け取ると、あくまで、そういう外見を持つ男だからとなる。


 つまり、中身は違うというわけだ…


 と、なると、どう違うのか?


 誠実に見えるから、誠実ではないということか?


 では、誠実ではないとすると、それは一体なにに対して誠実ではないのか?


 女に対してか?


 それとも、事業=ビジネスに対してか?


 女に対してならば、単なる女好き…


 誠実に見えるが、女が好きで、女の尻をいつも追いかけ回してる…


 そう考えるだけ…


 事業=ビジネスに対してならば、それこそ、今回、金を横領している犯人が、実は米倉本人となる…


 が、そこまで、いかなくても、いわゆる、仕事をしそうな人物が、いつも上司の気付かないところで、仕事をさぼっている、要領の良い=ずる賢い人物だということは、ありがちだ…


 そういうことか?


 いずれにしても、米倉が見かけとは違う人物であることは、間違いがない…


 なにしろ、米倉の実の弟が言うのだ…


 さらに、この評価は、米倉の父親もまた、同様の評価を別の言葉=食わせ者という表現で、口にしている。


 いずれにしろ、この二人の表現から、米倉が信頼できない人物であることは、間違いない…


 なにしろ、血の繋がった親と兄弟が言っているのだ…


 私が、そこまで考えたとき、米倉が、


 「…新造…オマエ、口の利き方に気を付けろよ…」


 と、言った。


 ある意味、当然だった…


 実の兄が付き合い出した彼女を初めて家族に紹介したときに、弟が、兄の悪口を言うなんて、ありえない…


 米倉が怒るのも、当然だった…


 が、新造はどこふく風だった。


 「…兄貴も日頃の自分の行いをよく考えることだよ…」


 「…どういう意味だ?…」


 「…別に…言葉通りの意味だよ…」


 新造は、そう言うと、ふらりと、その場から去った…


 残された者全員に後味の悪さだけが残った…


 気まずい沈黙が流れる。


 「…高見さん…気分を悪くしたら、謝る…新造は、昔からああいう男で…」


 米倉が必死になって、言った。


 私はなんと言おうか、悩んだが、なにも言わないことが、一番だと思った。


 黙って、正造の言葉に頷くように、首を縦に振った。


 いずれにしろ、好子と新造が、席を立ったことで、この場の雰囲気が気まずくなったのは、誰の目にも明らかだった…


 正造の父が、


 「…それでは、正造が、せっかく彼女を連れて来たんだ…高見さんと二人きりにしてあげましょう…」


 と言って、席から立ち上がった。


 それを合図に、同じ部屋にいた私と米倉を除いた全員が、席を立った。


 部屋には、私と米倉だけが残された…


 少なくとも、私、高見ちづるの目には、この部屋に入って来たときと、米倉を見る目は、

明らかに変わっていた…

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