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恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ  作者: トモサン


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79/100

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 79

なにかが、間違ってる…


 あるいは、


 誰かが、ウソを言っている?


 さらに、あるいは、


 誰かが、誤解している…


 その可能性がある。


 数式ではないが、入力した数字が違えば、当然、出る答えも異なる…


 私は、そう思った。


 テレビに映った、米倉好子は、小柄だが、その美しさは、まさにテレビ映えしている…


 女優然としている…


 「…色々、ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした…」


 と、頭を下げた、米倉好子といったら、その美しさから注目度は、半端ではなかった…


 同時に、これこそ、米倉好子がもっとも、望む登場の仕方なのではないか?


 私は、思った…


 米倉の凋落が話題になり、水野との合併…


 水野透(とおる)との婚約…


 そんな諸々のことが、話題になっている最中には、一切顔を見せない…


 ちょうど、政治家が、汚職や女がらみのスキャンダルで、病院に入院するのと、同じ…


 都合が悪くなったときには、入院して、世間の目から逃れ、騒動が過ぎたころ、何事もなかったように、世間に顔を出す…


 いや、


 米倉好子に限って言えば、騒動があった最中には、すでに入院して、世間の目から逃れ、肝心のときには、姿をくらまし、米倉の凋落や、正造の登場などで、最高に舞台が盛り上がったときに、登場した…


 いわば、満を持して、登場したようなものだ…


 米倉好子が、世間に登場するに際して、最高の舞台を提供したことになる…


 が、


 これは、偶然なのだろうか?


 あるいは、


 演出なのか?


 それが、わからない…


 いや、先日、電話のあった米倉好子は、明らかに、以前、私が接した米倉好子とは、違っていた。


 これは、一体、どういうことだ?


 清楚で美しく、その反面、臆病な小心者…


 それゆえ、プレッシャーに弱く、酒に溺れた…


 それが、米倉好子だったはずだ…


 だが、テレビで見る、米倉好子は、明らかに、それとは、異なる…


 これは、一体、どういうことだ?


 私は考える。


 が、


 考えても、当然、結論は出ない…


 当たり前だ…


 しかし、米倉好子の登場と、ほぼ同時に、さまざまなことが動き出した。


 その一つが、米倉と水野の合併だった…


 合併がご破算かと思いけや、合併は、継続した…


 今すぐにではないが、米倉と水野が、共通して、合併協議会のようなものを立ち上げて、合併に向けて、正式に動き出すとアナウンスした…


 つまり、とりあえずは、合併に向けて、動き出すということだ…


 そして、その合併の協議会のメンバーには、当然というか、米倉正造と、正造の姉、澄子の夫の直一の姿があった…


 二人とも、平造の後継者であり、社長候補だった…


 片や、水野からは、社長の水野ではなく、息子の水野透(とおる)が、合併協議会のメンバーに名を連ねていた…


 おそらくは、水野良平は、あえて、自分ではなく、息子の透(とおる)を、メンバーに選出したのだろうと、考えた。


 将来の水野を背負って立つ、勉強の場と考えたのだろう…


 私は、それをテレビや新聞、そして、ネットで知った…


 もはや、私と米倉、水野双方とは、連絡が途絶えていた。


 元々、一般人である、私、高見ちづると、お金持ちの米倉、水野とは、接点がない…


 それが、偶然、あの溝口が、私を米倉正造に紹介したことをきっかけにして、知り合ったに過ぎない…


 本来は、私とは、縁もゆかりもない人間たち…


 だから、連絡がなくなるのは、ある意味当然だった…


 残念ながら、それが現実だった…


 私は、ここ数か月、夢を見ていたのかもしれない…


 ふいに、そんなことを考えた。


 33歳になり、年々会社には居づらくなっている…


 いつ、リストラされるか、わからない…


 ゆえに、内心ビクビクしている…


 そして、結婚の予定もない…


 すでに、33歳になり、子供を産むことを考えれば、結婚を決断しなければ、ならない…


 しかしながら、今はおろか、学生時代に遡っても、好きになった男はいない…


 自分でいうのもなんだが、ルックスは良かったから、頻繁に男から、声をかけられたが、心が動かなかった…


 人を好きになることができなかった…


 学生時代に、そんな人生を送ってきた女が、会社に入ったところで、人を好きになるはずがない…


 結婚相手というか、男を選ぶ場において、学生時代と、会社員時代を比べれば、誰もが、学生時代の方が相手を選ぶ過程において、有利…


 それは、単純に、同世代の異性が多いからだ…


 会社に入ってしまえば、さまざまな年代の男女がいる…


 結婚相手としてみれば、圧倒的に選択肢が少なくなる…


 これは、男女とも大半が同じ意見だろう…


 だから、私に結婚相手を探すのは無理…


 しかしながら、一度だけ、心が動いた…


 それが、水野だった…


 あの水野財閥御曹司、水野透(とおる)だった…


 だが、それも束の間…


 少しすると、醒めた…


 まるで、風邪かなにかを引いたように、少しの間は、夢中になったが、それもあくまで少しの間…


 風邪が治るように、恋も冷めた…


 やはり、私は元々、冷たい女なのかもしれない…


 恋をするということは、他人を好きになるということ…


 これまで、33年生きてきて、恋をしたことのない私は、やはり、本質的に、冷たい人間なのかもしれない…


 恋ができない=心が冷たい人間なのかもしれない…


 そこまで、考えて、ふと、気付いた…


 あの米倉好子さんもまた、私同様の美人だけれど、恋をしたことがないと、米倉正造が言っていた…


 美人で、お金持ちの米倉好子…


 すでに、三十路を過ぎているにもかかわらず、男と付き合ったことがないと、正造は、言っていた…


 そして、その理由は、お金持ちで、美人だから、うっかり、ロクでもない男に引っ掛かって、米倉の名前に傷をつけたりしたら、困ると、好子さんは、考えていると、私は思った…


 美人で、お金持ちゆえに、男は星の数ほど言い寄って来るが、その挙句、男を選ぶことができない…


 その選んだ男が、米倉の名前に傷でもつけたら、困る…


 そう考えるゆえに、臆病で、慎重になる…


 私は以前、そう考えた。


 だが、違うのではないか?


 単純に、私同様、ひとを好きになることができない冷たい人間なのではないか?


 ふいに、そんな考えが脳裏に浮かんだ…


 そして、もし、それが、真実としたら、どうだ?


 これまで、私が考えていた、米倉好子という人間の評価が、まるで、違ってくる…


 人物像が、まるで、違ってくる…


 これまでは、臆病で、慎重だから、恋もできなかった…


 そう考えていたのとは、まるで、違ってくる…


 単純に、ひとを好きになることができない冷たい人間…


 それゆえ、うまく、他人を…自分以外の人間を利用できる…


 現実に、米倉正造は、入院中の好子さんに代わり、マスコミの注目を浴びた…


 だが、好子さんが、マスコミに姿を現すと、マスコミの前から、姿を消した…


 これは、一体どういうことだ?


 普通に考えれば、スポットライトを浴びる場所を好子さんに譲ったということだ…


 正造はあくまで、前振り…


 ショーでいえば、前座に過ぎない…


 主役は、好子さん…


 そして、今、米倉と水野の合併の協議が本格的に始まる…


 その先には、当然のことながら、米倉好子と水野透(とおる)との結婚話が持ち上がる…


 避けては、通れないことからだ…


 つまりは、この先に置いて、米倉と水野の合併に際し、主役は、いつも米倉好子ということになる…


 それまで、お金持ちだったが、世間的には、まったくの無名だった米倉好子…


 その美貌が、世間で話題になることはなかった…


 だが、それが解禁される…


 満を持して、世間に登場する…


 米倉好子にとって、これ以上のインパクトのある登場の仕方はない…


 私は思った。


 ならば、考えようによっては、すべての黒幕は、米倉好子なのかと、私は思った…


 黒幕というと、大げさだが、自分に似た、私、高見ちづるを、溝口を窓口と言うか、入り口にして、米倉正造と引き合わせる…


 最初は、溝口から、お見合いと称して、私を正造と引き合わせる。


 要するに、なんらかの口実を設けて、正造といっしょに、米倉の家に来てもらう…

 

 自分に似た、女に、米倉の家に来てもらうのが、目的だ…


 では、なぜ、自分=米倉好子に似た、女を、家に招く必要があったのか?


 それは、米倉正造が、米倉家を継ぐため…


 それまで、爽やかな見た目と違って、あっちの女、こっちの女と、女遊びを繰り返してきた、正造が、心を入れ替えて、正式に、結婚して、米倉家を継ぐ。


 そのためには、派手な女遊びを繰り返して、派手な女が好みだった、正造が、心を入れ替えたのが、よくわかるように、これまでとは、真逆に、清楚で、おとなしい外観を持つ、私、高見ちづるが、打ってつけだった…


 しかも、私の印象は、米倉好子と、同じ…


 顔こそ微妙に違うが、二人とも、女優の常盤貴子を小柄にしたような美人…


 米倉好子は、父親の平造のお気に入り…


 平造のお気に入りの、好子さんと、似た外観の私を、将来の結婚相手と紹介することで、確実に、正造は、平造に気に入られるに違いない…


 そのために、私が必要だった…


 高見ちづるが必要だった…


 私は、そう考えていた…


 そして、当然のことながら、その発案は、米倉正造が考えたもの…


 正造が、実は、血の繋がってない、平造から、米倉を引き継ぐために、考え出したことだと、思っていた…


 しかし、もし、それが、正造の発案ではなく、好子さんの発案だとしたら、どうだ?


 正造の陰には、好子さんがいたとしたら、どうだ?


 平造に気に入られるには、自分に似た女を探すのが、一番だと、アドバイスというか、入れ知恵をしたとしたら、どうだ?


 今となっては、その可能性も考えられる。


 正造を安心させるために、わざと正造にそんな入れ知恵をした…


 それはなぜか?


 正造を安心させるためだ…


 そして、自分の目的を隠すためだ…


 一方、正造は正造で、好子さんの意図に気付いていた…


 そう考えられるのは、なぜか?


 それは、最初、会った時、誰かが、この米倉の家で、不正を働いている…


 それが、誰だか、探す手伝いをしてもらえないか? と、正造は、私に頼んだ…


 お見合いは、口実で、実は、米倉の裏切り者を私に探して欲しいと頼んだのだ…


 普通に考えれば、ありえないバカバカしいこと…


 なぜ、バカバカしいかと言えば、いっしょに暮しているわけでもない、週末に訪れるだけの赤の他人に、そんなことができるわけがないからだ…


 ちょっと、冷静に考えれば、子供でもわかる話だ…


 しかし、それを真顔で、正造は私に言った…


 だとすれば、その真意は一体なにか?


 それは、米倉の家の人間を、必要以上に、観察させるためではないか?


 私は思った。


 ただ、普通に、米倉の家に出入りしていても、あの豪邸に圧倒されるだけで、あの家にどんな人間が住んでいるのか、それほどは、考えない…


 誰もが、上っ面だけで、どんな人間か、見るだけだ…


 しかし、もし、正造が言ったように、この家の誰かが不正をしているから、それが誰だか、見つけて欲しいと言われたら、どうだ?


 目を皿のようにして、米倉の家の人間を観察するのではないか?


 ふいに、そんなことを思った…


 仮に、好子が黒幕として、自分に似た、私を米倉家に出入りすることを、発案したとしても、それに気付くように、正造もまた、私に、米倉の人間を観察するように、仕向けたのではないか?


 そうも、考えられる。


 つまりは、正造もまた、好子に操られているフリをしているだけで、その実、好子の意図に気付いているのではないか?


 そんなことを思った。


 つまりは、あの米倉の家に住む、人間は、皆バラバラで、それぞれの意図で、自分勝手に動いているのではないか?

 

 私は、思った。


 そして、米倉好子…


 好子さんの人間性について、以前、水野が言っていた…


 「…あの女は、オレを下に見ていると…」


 だから、嫌いだと…


 それが、米倉好子の本性なのではないだろうか?


 今となっては、考えられる。


 つまりは、米倉好子は、自分以外の人間をうまく使って、米倉の家を自分のものにしようとしたのではないか?


 そう思った。


 しかし、


 しかし、だ…


 その米倉の家も、破産したはずだ…


 いや、


 違う…


 傾いたのは、米倉の経営する大日産業で、あって、米倉家ではない…


 会社と個人の資産は別…


 あるいは、すでに、米倉平造は、そのことを見越して、米倉の資産を守ってる可能性も高い…


 平造は、大日産業の社長…


 自分の経営する会社が傾けば、それとは、別に、自分の持つ、米倉の資産を守ろうとするだろう…


 いわゆる、会社は会社…


 米倉は米倉…


 そう思ってるはずだ…


これは、中小企業経営者ではできないことだが、米倉ぐらいの大金持ちになると、あらかじめ、弁護士や公認会計士に相談して、個人の財産を守ることができる。


 では、なぜ中小企業の経営者では、できないかというと、彼らの場合は、大抵が、自分の土地や建物の不動産などを担保に金融機関から、お金を借りているからだ…


 だが、米倉ぐらい大きくなると、そういったことはしないし、仮にしたとしても、焼石に水…


 仮に、一千億の赤字だとすれば、普通に考えれば、不動産を処分しても、五十億もしないだろう…


 だから、自らの持つ資産を担保にすることは、ありえないということだ…


 しかし、だとすれば、米倉家には、依然として、莫大な資産がある可能性がある…


 それをすべて、あの米倉好子が手にするのだろうか?


 私は思った。



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