↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ  作者: トモサン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
57/100

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 57

その夜、私は家に帰ってから、米倉新造に電話をした。


 普通、男のひとに、電話をかけるときは、内心ドキドキしたりするものだ…


 いきなり、電話をかけて、相手がどう思うか、考えると、やはり、電話をするのが、躊躇われる。


 しかし、米倉新造の場合は、それがなかった…


 一言でいえば、安心できる相手…


 恋愛対象外といってしまえば、それまでだが、気軽に学生時代の友人に電話をするようや、気安さというか、安心感がある。


 「…もしもし、米倉新造さんですか?…」


 私は相手が電話に出たのを、確かめてから、言った…


 「…どなた様ですか?…」


 相手が電話に出た。


 「…高見…高見ちづるです…ご無沙汰しています…」


 私は告げる。


 「…高見…さん?…」


 新造さんは、驚いたようだ…


 まさか、私から電話があるとは、思っていない感じだった…


 「…実は、新造さんにお話があって…」


 私は用件を切り出した。


 「…オレに用事?…」


 「…週末の土曜日に、そちらに伺って、よろしいでしょうか?…」


 私が尋ねると、


 「…」


 と、沈黙があった…


 私は、戸惑った。


 「…無理でしょうか?…」


 私は、訊いた。


 いきなり、電話をしても、誰もが都合というものがある。


 それを思ったのだ…


 「…今、家がゴタゴタしていて…」


 申し訳なさそうに語る、新造の声が、電話の向こうから、聞こえてきた。


 「…正造が家を出て…姉貴が入院しているところへ…」


 新造さんが、声を振り絞るかのように言う。


 「…アイツが、正造が、家を出て行ってくれたのは、ラッキーだったけど…」


 「…けど?…」


 「…けど…タイミングが悪すぎた…会社の方もゴタゴタして…」


 新造さんが、言いづらそうに、言う。


 私は、さもありなんと、思った…


 米倉平造は、自分の会社、大日産業を、水野と合併させようとしている。


 当然のことながら、米倉正造に、会社で居場所はないに違いない…


 米倉正造は、次期社長候補だった…


 それが、なくなったのだ…


 そして、父親と思われていた米倉平造との、血の繋がりも否定された。


 もはや、家庭にも、居場所がないに違いない…


 さらにいえば、正造の姉、澄子と、その夫の直一…


 直一もまた社長候補だった…


 直一は一体どうするのか?


 直一は、見るからにエリート然としていたが、上昇志向はないように思えた…


 エリート然はしているが、例えは悪いが、昔の公家のような感じで、ギラギラした上昇志向は、まるで感じない…


 豊臣秀吉ではないが、ギラギラした上昇志向の持ち主は、非エリートといってはなんだが、学歴が低い人間の方が多い…


 むき出しの欲望を隠さないというか、隠せないというか…


 いずれにしろ、エリートでない人間に多い気がする。


 だから、普通に考えれば、直一は、社長になれなくても、大日産業で、社長に次ぐ地位で、仕事に励んでも、おかしくないが、妻の澄子が、平造の実の娘ではないとわかった以上、それも難しいかもしれない…


 私は考える。


 「…それで…今、高見さんに来てもらっても…」


 新造さんが、言う。


 「…わかりました…ご迷惑をおかけして、申し訳ありません…」


 私は言って、電話を切るつもりだった…


 新造さんの言うことは、わかる…


 なにしろ、米倉がゴタついている…


 私も水野良平に頼まれて、新造さんに、電話をしたが、普通に考えれば、今は、それどころではないはずだ…


 あらためて、自分のバカさ加減に、気付いた…


 「…いや…でも…」


 電話の向こうから、新造さんが続けた。


 「…でも、高見さんなら、会社の方へ…」


 思いもかけない言葉だった…


 「…家ではなく、会社ならば…」


 新造さんが、続ける。


 「…会社ですか?…」


 「…大日産業の方ならば、高見さんが行っても…」


 新造さんが言った。


 私は新造さんの発言に戸惑った。


 私が米倉に接しているのは、あくまで、プライベート…


 パブリック=公(おおやけ)ではない…


 見方によっては、公ではないから、一般人である、私、高見ちづるも、米倉と接することができる…


 これが、パブリック=公(おおやけ)ならば、私は、一般社員…


 仮に、大日産業に勤めていても、社長候補の米倉正造は仰ぎ見る存在…


 対等に接することなど、不可能に違いない…


 よしんば、身近に接するとすれば、秘書ぐらいだろう…


 そして、その秘書の可能性も限りなく低い…


 普通、大きな会社で、秘書に選ばれるのは、それなりに、学歴が高い人間が多い…


 私は、一般人…


 大学も中堅校止まり…


 大した学歴もない…


 そして、身長…


 あのテレビでよく見る、スーツの似合う秘書に必要なのは、タッパ=身長に他ならない…


 いくら美人でも、背の低い女はダメ…


 恰好がつかない…


 ちょうど、水着になるようなもの…


 変な話、水着審査に出る女で、低身長の女はいない…


 どうしても、身長が低くては、スタイルが悪くなる…


 だから、まずは、身長が、高くなくてはいけない…


 最低でも、やはり165㎝は欲しい…


 まして、秘書は会社の顔となる要素が否定できない…


 要するに、社長が、他社に出向いたりするときに、隣にいる女がブスでは困る…


 言葉は悪いが、ある意味会社を代表する存在…


 できれば、モデル並みの肢体を持ち、アイドル並みのルックスを持つのが、理想だ…


 それが、会社を代表するということだ…


 大会社の社長が誰でも黒塗りのベンツに乗るように、高身長のキレイな女が、近くにいるのがいい…


 これは、不公平と思うかもしれないが、当たり前のことだ…


 この場合、ルックス=能力となる。


 現実に、派遣社員の募集でも、公にはならないが、派遣元が、女の場合は、ルックスを審査される…


 派遣先の企業が、ルックスのよい女を求めることがあるからだ…


 秘書もまた、会社を代表する以上、どうしても、ルックスは否定できない…


 差別と言われるかもしれないが、それが現実だ…


 私は考える。


 そして、私、高見ちづるは、その秘書の条件に当てはめた場合、なにより、身長がなかった(涙)…


 身長が155㎝では、どんな格好しても、きまらない(涙)…


 そういうことだ…


 だが、なぜ会社なのか?


 私は思った。


 いや、そもそも、私は新造さんに会いに、あの米倉の豪邸に行くのだ…


 新造さんから、どうして、好子さんが、水野を嫌うのか、教えてもらいたかったからだ…


 それが、ミッションというか、水野の父の水野良平から、依頼された、私の使命…


 会社の命令でもなんでもないから、無視することはできるが、あの水野の父親に頭を下げられて、頼まれた以上、それを無視することはできない…


 また約束した以上、当然、それを履行する義務が、私にある…


 私は、そう思った。


 いずれにしろ、新造さんに会って、なぜ好子さんが、水野を好きでないか、教えてもらいたい…


 本当ならば、入院中の好子さん本人に訊くのが、一番いいのだが、好子さんは、まだ意識不明だろう…


 いや、それはわからない…


 すでに、好子さんの意識が戻っているかもしれない…


 「…好子さんは…」


 私は言った。


 「…好子さんの意識は戻ったんでしょうか?…」


 「…まだです…」


 新造さんが、答える。


 …やはり、まだか?…


 私は、思った。


 「…高見さん…オレに用事って…」


 新造さんが、訊いた。


 当たり前のことだ…


 「…実は、新造さんにお聞きしたいことがあって…」


 「…オレに訊きたいこと?…」


 「…ハイ…」


 少しの沈黙があった。


 「…一体なに?…」


 「…実は…」


 私は電話で言っていいものか、どうか、迷ったが、


 「…好子さんが、水野さんと婚約報道がありましたね…」


 「…ええ…」


 「…あの直後、私は好子さんに、水野さんとの婚約報道の真偽を尋ねると、ないわ、と素っ気なく言われました…でも、なぜ、ないのか、知りたくて…」


 「…なぜ、ないって、どういう…」


 「…いえ、好子さんの言葉から、好子さんが、水野さんをあまり好きじゃない気がして…」


 「…それは、どういう…いや、高見さんは、どうして、そんなことを訊くんですか?…」


 「…それは…」


 私は、一瞬、悩んだが、


 「…実は、水野さんの父親に頼まれて…」


 と、正直に告白した。


 「…水野の父親に頼まれた?…」


 電話口の新造さんが絶句した。


 予想もしていないことだったのだろう…


 「…私も驚きましたが、数日前に、私が、会社から自宅に戻る途中に、待ち伏せされていて、それで、頼まれて…」


 「…そんな…」


 新造が、文字通り、言葉も出ない様子だった…


 あまりに、意外な言動に声が出ないというか?


 呆れたというか?


 私が、これ以上、なにも言わず、新造さんの言葉を待っていると、


 「…それで、今日、高見さんが、オレに電話をくれた理由がわかりました…」


 と、ようやく声を出した。


 「…わかりました…高見さん…家に来て下さい…」


 「…でも、家の方は今ゴタゴタしているんじゃ…」


 「…それもあるけど、これは、外で話す話じゃないから…」


 新造さんが、言った。


 …外で話す話じゃない?…


 私はその言葉に、若干引っかかった…


 「…壁に耳あり、障子に目ありという言葉があるけど、外で話すと、誰が聞いているかわからないから…」


 新造さんが、言う。


 当たり前のことだった…


 私は納得する。


 「…では、今週末の土曜日に伺います…」


 私は告げた。


 「…高見さん?…」


 「…なんでしょうか?…」


 「…ウチの場所はわかりますか?…」


 「…場所って?…」


 「…高見さんは、いつも家に来るときは、正造のクルマで、来たから、歩いて、来れるかなと思って…」


 …すっかり、忘れていた…


 私は、自分の迂闊(うかつ)さに気付いた。


 「…オレが迎えに行きますよ…」


 新造さんが、言った。


 「…新造さんが?…」


 思ってもみない提案だった…


 「…高見さんの自宅に迎えに行くことはないけど…ウチの最寄りの駅ならば…」


 私は、新造さんの提案に、一瞬、悩んだ…


 つい最近、知り合ったばかりの私が、そんなに甘えていいものどうか、考えたのだ…


 私が、考えていると、


 「…どうしますか?…」


 と、新造さんが、訊く。


 「…ご迷惑でないならば…」


 私は言った。


 「…そんな迷惑なんて…」


 新造さんが、呟いて、週末に、あの米倉の豪邸に再び、訪れることが決まった。


 週末…


 私が、指定された米倉家の最寄りの駅に行くと、すでに、新造さんは、待っていた…


 駅の出入り口で、ホームに入ったり、出たりした人たちを、見ていたのだ…


 小柄な私が、駅の改札口を出ると、


 「…高見さん…」


 と、すぐに声がかかった…


 「…新造さん…」


 私は、答える。


 米倉新造は、三十歳…


 兄と思われていた、米倉正造よりも、十歳以上、若い…


 また、正造は、身長が170㎝だが、新造は、正造よりも、5㎝は高い…


 また、顔も雰囲気も、まるで、違う…


 血が繋がってないからといえば、それまでだが、正造が、見るからに爽やかな雰囲気で、一目で、誰からも、信頼される人物であるのとは、対照的に、新造さんは、一目見て、頼りないというか…


 しかしながら、人柄の良さは、すぐにわかる…


 そして、それが、兄と思われた、正造との違い…


 米倉正造は、誰が見ても、信頼できる爽やかな雰囲気の持ち主だが、実際は、真逆…


 ところが、この新造は、見た目通り…


 見るからに頼りがいはないが、一目で、信用できる人物で、実際、その通りの人間だっ

た…


 また、顔立ちもまるで、違う…


 実際のところ、顔立ちは、新造さんの方がいい…


 正造に比べ、目鼻立ちが整っている…


 なにより、目の細い正造よりも、目が大きくて、澄んでいる…


 ところが、全体のイメージでは、新造は、正造の足元にも、及ばない…


 残念な結果だ…


 私は、目の前の米倉新造を見て、つくづく考えた。


 そして、その人間の持つ、雰囲気がいかに大事か考えさせられた…


 雰囲気さえなければ、新造さんの方が、正造よりも上なのだ…


 しかし、実際問題、正造の方が上…


 誰もが、信頼できる爽やかな雰囲気を持っている…


 「…お久しぶりです…」


 私は、立ち止まり、頭を下げて、礼を言った。


 新造は、私が、わざわざ、頭を下げたのに、照れたのか、


 「…止めましょう…高見さん…こんなところで…」


 と、言って、早く頭を上げてくれといわんばかりだった…


 私は、新造さんの、そんな人柄にホッとするというか、癒された。


 「…クルマを待たせています…」


 新造さんは、言って、私を待たせたクルマに誘導させた。


 そこには、タクシーが、待っていた。


 私は、驚いた。


 「…ホントは、オレが運転すれば、いいんだけど、オレは、ぜんそく持ちで、最近、調子が良くないから、クルマの運転は…」


 新造さんが、申し訳なさそうに、呟く。


 …そうだ…


 …すっかり、忘れていた…


 …新造さんは、カラダが弱いんだ…


 以前、正造が、新造さんに、


 「…どうして、働かないんだ?…」


 と、怒ったときに、新造さんは、自分のぜんそくのことを言っていた…


 私は、それを思い出した。


 それなのに、今日は無理をして、わざわざ私を迎えに来てくれた…


 私は新造さんの優しさに、触れた思いだった…


 「…さあ、行きましょう…」


 新造さんが言った。


 私は新造さんと、歩いて、タクシーに向かった…



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。