↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ  作者: トモサン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
50/100

恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 50

「…好子さん…水野さんとの密会は?…」


 私はあらためて、好子さんに訊いた。


 要するに、好子の水野との密会はなんだったのか?


 あらためて、聞きたかった。


 以前、米倉好子は、澄子と正造を追放するために、水野の力を借りようと、ホテルで、相談していたと、私に言った。


 それが、週刊誌に、深窓のご令嬢の不倫というタイトルでスクープされたと…


 それは、本当なのか、訊きたかった。


 なぜなら、アレがあったから、その後の水野との婚約報道が流れたと思ったからだ…


 「…ああ、アレね…」


 好子が、気安く、答えた。


 「…アレは、父よ…」


 「…お父様?…」


 「…そう…父から、水野さんに、相談すれば、いいと、勧められたの…」


 「…」


 私はあまりに、意外な展開に絶句した。


 「…今、思えば、父の策略にまんまと乗せられたんだと思う…」


 好子が苦笑する。


 「…お父様の策略…ですか?…」


 「…父は、私を水野さんと、会わせて、結婚させようとしていた…だから、私に水野さんに、相談させるフリをして、水野さんとの密会をセッティングした…」


 「…」


 「…つまり、これを契機に、水野さんと親密になり、米倉と水野の合併の象徴にしようとした…」


 目の前の好子の言葉に力がこもった。


 「…でも、私はなにも知らされてなかった…なにも…」


 好子が悔し気に言う。


 つまるところ、好子は、父の平造に、使われたというか、利用されたわけだ…


 いかに、自分を溺愛している父親でも、自分が利用されるとなると、話は変わってくる。


 許せないに違いない。


 ということは、仮に米倉正造が、水野と好子さんとの密会を週刊誌に流して、水野と米倉の合併を潰そうとしたとしても、その効果はないどころか、逆になったのではないか?


 真逆に、水野と好子さんとの結婚を後押しすることになったのではないか?


 考える。


 水野と好子さんの不倫騒動が、世に出れば、マイナス…


 しかしながら、その後、水野と米倉好子との婚約が発表されれば、プラスになる…


 「…ああ、だから、ホテルで、密会していたんだ…」


 と、なる。


 そして、その後、水野と米倉の合併が発表される…


 すると、一転、水野と好子さんとの不倫騒動が、プラスになる…


 世間が納得し、あの不倫騒動が帳消しになる…


 と、なると、どうだ?


 米倉正造は、水野と好子の密会を暴露して、スキャンダルにして、水野と米倉の合併を潰そうとした…


 しかし、


 平造は、その真逆…


 水野と好子の密会が暴露されたのを、逆手にとって、二人の婚約報道を流した…


 つまり、同じ密会を利用して、水野と米倉の合併を世間にどう印象づけるか、考えた…


 その結果の行動…


 最初は、正造が勝ったかに見えたが、すぐに、平造に逆転された…


 そして、これこそが、正造と平造の差…


 力の差だった…


 さらに言えば、こんなことで、平造に勝てない正造に、自分の後継者の座は任せられないと、平造は考えたのではないか?


 私は思った。


 考えた。


 「…好子さんは、これから、どうするつもりですか?…」


 「…わからない…」


 好子は言った。


 「…なにを…どうすれば、いいか、わからない…」


 好子が繰り返す。


 私はあらためて、自分の愚かさを思った。


 この先、なにをどうすればよいか、わからないから、私に会いに来たと、さっきも、私に言ったではないか?


 それを、何度も、好子さんに、口にさせるとは?


 我ながら、自分の愚かさを、考える。


 「…高見さんは?…」


 「…ハイ…なんでしょうか?…」


 「…水野さんに会ったようね…」


 「…」


 「…水野さんに訊いたわ…」


 「…」


 「…高見さんは、水野さんを、どう思うの?…」


 私は、好子さんの直球の質問に、動揺した。


 「…どうと言っても…」


 「…好き?…」


 「…」


 「…それとも、嫌い?…」


 私は好子さんの直球の質問に考え込む。


 「…答えて…」


 好子さんが、繰り返した。


 「…好きか、嫌いか、問われれば、好きです…」


 私はゆっくりと考えながら、答える。


 「…というか、気になる男です…」


 私は、正直に言った。


 「…気になる男?…」


 「…そうです…私はこれまで、33年生きてきて、あんな男は見たことありませんでした…だから、気になります…」


 私は好子さんに、説明しながら、以前、同じことを、好子の兄?の正造に言ったことを思い出した。


 血が繋がってないと、わかったにも、かかわらず、兄妹で、同じ質問をしている。


 そう考えると、内心、苦笑した。


 「…高見さんの気持ちはわからないわけじゃない…」


 目の前の好子もまた、考えながら、ゆっくりと話した。


 「…たしかに、水野さんには、魅力がある…もっとも、これは、兄…いえ、兄じゃない、正造も同じね…」


 「…正造さんと?…」


 「…二人とも、イケメンだけど、ただ、それだけじゃない魅力というか、惹かれるものがある…人間、顔だけじゃ、ダメね…」


 好子さんがしみじみ言った。


 好子さんも、30歳は超えてる。


 いかに、顔が良くても、それだけでは、なんの意味がないことがわかる年齢だった。


 男も女も顔がいいに越したことはない…


 これは、誰もが、否定できない…


 しかしながら、相手を引き留めておく、魅力がないと、たやすく相手が離れてゆく。


 それが、わかる年齢だということだ…


 なにより、私も好子さんも、正直、ルックスがいい…


 それゆえ、ルックスがいいだけでは、ダメだということを、身をもって知っているといえば、大げさか…


 私は思った。


 思いながら、この米倉好子は、孤独な人間だと思った。


 美人で、お金持ち…


 30を過ぎた、この歳まで、何不自由なく、育ったに違いない…


 しかしながら、私にこんな相談を持ちかけてくる…


 私に会ったのは、今日で四回目…


 わずか、四回目だ…


 それなのに、アレコレ、私に相談する。


 おそらく、友達がいないのだろう…


 私が、米倉好子同様、美人だから、腹を割って、美人ならではの悩みを互いに打ち明けることはできると、考えた。


 事実、以前、好子に会った時、それをした。


 こう言ってはなんだが、美人には、美人の悩みがある。


 そして、それを他人に打ち明けることはできない…


 どうしても、傲慢にうつるし、その相談をした相手が、第三者に漏らして、あの女は!と周囲の女の嫉妬を呼ぶということになりかねない…


 女の敵は女…


 むやみに相談できない…


 それゆえ、自分と同じタイプの美人の私、高見ちづるに、相談というか、胸の内を吐露したのは、わかる…


 しかしながら、それを抜きにしても、好子さんには、相談できる相手がいないのではないか?


 私は今さらながら、思った…


 米倉好子は、美人でお金持ち…


 たたの美人ではない!


 それゆえ、孤独なのではないか?


 お金は、人を孤独にする。


 どうしても、お金目当てに、他人が寄ってくる。


 それが、わかっているから、余計に、他人を寄せつけなくなる…


 その結果、孤独になる。


 まさに、孤独の悪循環…


 人間関係の悪い見本…


 金持ちの悪い見本だ…


 私は考える。


 「…高見さん…なにを考えてるの?…」


 好子が訊いたことで、私の思考が中断された。


 「…いえ、別に…」


 私は言う。


 私の返答に、好子がニヤッと笑った。


 意味深な笑いだった。


 「…高見さんに、正造が惹かれたのは、わかる…」


 「…正造さんが、私に惹かれた?…」


 実に意外な言葉だった。


 考えたこともない言葉だった。


 「…いえ…正造だけでなく、水野さんも…」


 好子が言う。


 「…高見さんを見ていると、私と決定的な差があることがわかる…」


 「…決定的な差…ですか?…」


 「…なんといっていいか、わからないけど、高見さんといると、安心できるのね…」


 「…安心?…」


 予想外の言葉だった。


 「…なんというか、子猫が、母猫の元にいるといえば、いいのか…高見さんといると、安心できる…ホッとできる…それが、高見ちづる、最大の魅力ね…」


 思いもかけない言葉だった…


 だが、思い当たることもある。


 たしかに、男女を問わず、私に寄り添うというか、仲良くなる人間は、おとなしい人が多かった…


 私にやすらぎを求めるといえば、大げさだが、確かに、その傾向はあるに違いない…


 とりわけ、男に至っては、私に母性というか、自分の母親のような役割を求めたのかもしれない…


 私は思った。


 そして、そう考えた、私の内心を見透かすように、


 「…正造も、水野さんも孤独な男…だから、高見さんの近くにいると、ホッとできるというか…安心できる…」


 「…水野さんが、孤独な男?…」


 米倉正造はともかく、あの水野まで、孤独な男とは?


 「…驚いた? …そう驚くわね…あのおちゃらけた水野さんが、孤独な男なんて…」


 好子が、私をからかう。


 「…でも、事実よ…」


 好子が真顔で言った。


 「…どうして、水野さんが、孤独なんですか?…」


 「…訊いた話だけど、水野さんは、たしか、今の水野財閥総帥のお父様の愛人の子供らしいわ…水野さんのお父様には、子供がなくて、それで、養子縁組をして、引き取ったとか…本当は、認知もされるかどうか、微妙な立場だったらしい…」


 「…あの水野さんが?…」


 私は、好子さんの言葉に、文字通り、絶句した。


 「…人間、誰しも、どんな恵まれた環境に、生まれようと、苦労しないで、生きてきた人間なんて、だれ一人いない…」


 目の前で、好子さんが、一語一語、言葉に力を込めた。


 噛みしめるように、言った…


 「…誰もが、生きるのに、苦労する…それが、一見して、わかるのか、わからないかの違いだけよ…」


 好子が言った。


 事実、当たり前のことだった…


 しかしながら、目の前の米倉好子の口から、そのセリフを聞くと、考えされられた。


 美人で、お金持ち…


 なにひとつ不自由のない環境で、育ったに違いない、米倉好子の口から、そんな言葉が飛び出すとは、思わなかった…


 と、同時に、好子もまた、生きるのに、苦労しているんだと、思った…


 当たり前のことだった…


 生きるのに、苦労しない人間なんて、誰ひとりいない…


 目の前の米倉好子がしない苦労は、ただ一つ生活の苦労に違いない…


 生活=お金の苦労は、米倉好子にはない…


 しかしながら、それ以外の苦労は、みんなと同じ…


変わらない…


 人間は、一人では生きれない…


 生きてゆく上で、人間関係の悩みは、嫌でも生じるし、それを避けて生きてゆくことは誰もできない…


 病気もそうだ…


 お金持ちであれ、そうでないであれ、誰もが平等に、病気になる危険はある。


 ただ、病気に関して言えば、お金持ちは、良い病院で治療できるし、貧乏人はできない…


 その差だ…


 米倉好子の悩みはなんであるか、わからないが、生きてゆく上で、悩みがあるのは、当然だった。


 私は思った。


 その後、私と好子さんは、とりとめのない話をしていたが、じきに、会話が続かなくなった…


 当たり前だ…


 まだ、出会って、四回目だった…


 共通の知人も多数いるはずもなく、話題が尽きた。


 そろそろ潮時だと思ったのだろう…


 好子さんが、


 「…なんていうか、高見さんと、話していると、胸の中がスーッと落ち着いてきた…」


 と、言った。


 事実、憑き物が落ちたといえば、大げさだが、今日、最初会ったときよりも、スッキリとした表情に変わった…


 「…そうですか…それは、よかったです…」


 私は答える。


 「…私も、正造や水野さん同様、高見さんのファンになりそう…」


 好子さんが、冗談を言う。


 私は、苦笑するしかなかった。


 「…いずれにしろ、今日はありがとうございました…」


 好子が、頭を下げて、礼を言った。


 「…いえ、とんでもありません…」


 私も、頭を下げる。


 そして、米倉好子の姿を見たのは、それが最後だった…


 数日後、好子さんが、自殺したことを、テレビのニュースで、知った…



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。