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恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ  作者: トモサン


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恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 38

水野…


 やはり、あの男が気になる。


 私は、パソコンの画面をボーッと見ながら、考える。


 あのお調子者の水野の本性に思いを寄せる。


 水野か…


 果たして、今後、私にどうでるのか?


 それが、今目下、私の最大の関心事だった…


 水野…


 私の心は、いつのまにか、水野の存在で占められていた。


 いや、占められていたというのは、大げさで、いつも頭の片隅に水野の存在があったというべきか…


 が、


 それも束の間の出来事…


 なぜなら、その数日後、水野は、好子との婚約を発表したからだ…


 いや、発表ではない…


 前回、同様、メディアで、スクープされたのだ…


 が、今回は、週刊誌ではなく、テレビ…


 テレビだった…


 しかし、なぜか、今回も、水野の姿は、あまり映さず、好子のみ、映像に映った…


 題名は、深窓の令嬢の恋、というものだった。


 私は唖然として、その映像を見た。


 好子の顔が、遠目からも、はっきりと映像に映っていた。


 小柄だが、芯の強そうな顔…


 キレイだ…


 あらためて、思った…


 好子の美しさを再発見したと言ってもいい…


 しかし、その隣の男の姿は、なぜか映像でボカシていた。


 スラリとした長身で、あることは、映像から、わかる…


 だが、肝心の顔の部分は、モザイクで、ボカシていた。


 …なぜ?…


 映像を見る、私の心に問うた…


 自分自身に問うた…


 なぜなら、答えは、自分が知っていたからだ…


 水野…


 水野財閥の力…


 私の脳裏に、その言葉が浮かんだ…


 週刊誌に、好子と水野の姿が写され、不倫と世間で騒がれたときもそう…


 あのときも、今回と同様に、好子の姿のみ、写された…


 そこに、水野の顔はなかった…


 あくまで、すらりとした長身の男性が隣にいるのみ…


 私同様、小柄な好子の隣に、長身の痩せた男性がいるのみという構図だった…


 私は、この映像を見ながら、考えた。


 好子は、水野を頼ったという…


 しかし、その姿は、前回同様、水野の顔はボカされ、好子の姿のみ、鮮明に映されている。


 つまり、前回同様、この映像の主役は、好子…


 好子に他ならない…


 好子が、不倫をしている、いないに限らず、あくまで、映像の主役は、好子…


 これは、一体どういうことか?


 考える。


 誰が仕組んだのか?


 考える。


 これは、普通に考えれば、誰かが、スクープしたものを、水野が、その政治力を駆使して、水野の姿のみ、映像から消したと、考えるのが、正しい…


 が、


 本当にそうか?


 それが、答えか?


 考える。


 この映像の主役は、好子…


 好子に他ならない…


 ならば、どうだ?


 逆に考えられないか?


 この映像は、好子が売り込んだと考えられないか?


 私は、これまで、好子は、脇役だと考えていた。


 今度の騒動でも、好子が、腹違いの兄の正造を追い出すために、水野に泣きついたと思っていた…


 言葉は悪いが、より大きな力を持つ、水野に力を借りようとしたと、考えていた。


 だが、それは、真逆…


 すべて、好子の計算だとしたら?


 好子の掌の上で、踊っていたと言えば、言い過ぎだが、好子の目論見通りだとしたら…


 可能性はなくはない!


 ある!


 だが、その目的がわからない…


 あえて、自分の姿を世間に晒す目的がわからない…


 不倫をしていた、いないに限らず、好子がこの報道で、不倫をしていたと、世間で見られるのは事実…


 好奇の目に晒されるのは事実だ…


 その危険を承知で、あえて、自ら、自分の不倫報道を世間に発信するとしたら、その目的はなにか?


 私はパソコンの画面を睨みながら、考えた。


 不倫?


 誰と不倫?


 誰=水野…


 水野は、水野財閥後継者…


 そして、好子は、水野とホテルで、密会した…


 これは、なにを意味する?


 もし、好子が、水野と男女の関係であるにしろ、ないにしろ、誰もが、好子と水野は、親密な関係であると考える…


 好子と水野が、親密な関係…


 この場合のメリットはなに?


 好子が、水野を後ろ盾と思わせることではないか?


 では、誰に思わせる?


 それこそ、正造ではないのか?


 好子の腹違いの兄の正造に見せつけているのではないのか?


 つまり、好子の行動は、正造に対する示威行為…


 己の力を誇示するためではないか?


 私は、そう見た!


 私は、そう考えた!


 だが、だとしたら、米倉の次期当主の行方はどうなる?


 好子が、水野の力を借りれば、好子の勝ち!


 正造をあの豪邸から、追い出すことができる…


 そうなれば、当主は誰がなる?


 澄子の夫である、直一がなるのではないか?


 好子と澄子は仲が悪い…


 お互いが嫌ってる…


 頭は切れるが、外見が凡庸な澄子は、好子が嫌い…


 なぜなら、好子は、美人だから…


 凡庸な外見の澄子は、外見で、好子に勝てないから、悔しくて仕方がない…


 だから、好子をいじめる…


 そして、好子は、澄子には、勝てないから、おとなしい澄子の夫の直一にあたる…


 直一は、澄子の婿養子だから、面と向かって、好子に不満を言えない…


 それをいいことに、今度は、好子が、直一に不満をぶつける…


 それが、あの米倉一族を見て、わかったこと…


 そして、好子は、直一が嫌いなのではない…


 直一が、澄子の夫だから、嫌いなのだ…


 好子は澄子と正造に、あの豪邸から、出ていって、もらいたいだけ…


 つまり、好子は、直一が、米倉の次期当主でも構わないということ…


 だが、だとすると、どうだ?


 好子は、あらかじめ、あの直一と今度の件について、打ち合わせていたのではないか?


 そんな疑惑が私の心に広がった…


 好子とて、バカではない…


 仮に澄子と正造をあの豪邸から、追い出すと仮定すれば、その後はどうなる?


 誰が、米倉の会社、大日産業の経営をする?


 正造と直一が、次期社長を争っていて、その両方が、社長レースから、消えるわけにはいくまい…


 正造を追放するとすれば、直一が残る…


 だとすれば、あらかじめ、好子が直一となんらかの取引をしていると考えるのが、普通…


 そう考えるのが、普通だ…


 それとも?


 それとも、まさか、好子は、本当に、水野と結婚するのか?


 好子が、水野と結婚すれば、米倉は、水野と合併することになるのではないか?


 案外、それが、落としどころというか、狙いではないか?


 いや、


 それが、一番単純だが、ありうる展開…


 好子が、水野と結婚すれば、すべてうまくゆく。


 だが、水野は妻帯者ではなかったのか?


 すでに、水野は結婚していると、正造が私に言っていた…


 それは、ウソか?


 いや、今や離婚はありふれている…


 水野が結婚していたとしても、離婚して、好子と結婚してもおかしくはない…


 私は考える。


 私の脳裏にさまざまな考えが浮かんだ…


 が、どれも決定打に欠ける。


 すべてが、可能性に過ぎない…


 それは、証拠がないからだ…


 証拠…


 証拠が欲しい…


 決定的な証拠が欲しい…


 私は考える。


 いずれにしろ、近いうちに、あの米倉の豪邸を訪れてみたい…


 好子に会ってみたい…


 好子と話したい…


 好子の目的が知りたい…


 好子がなにを狙ってるのか、知りたい…


 私は考えた。


 同時に、水野のことを思った。


 水野が好子と婚約したのは、事実なのか?


 それとも、単に報道によるガセか?


 考える。


 そして、なにより、水野は、私の勤務する会社、金崎実業の出入り業者として、顔を出している。


 好子よりも、水野の方が、コンタクトしやすい…


 会いやすい…


 ならば、直接、水野と、話せばいい…


 水野が好子と本当に、婚約したのか、訊いてみればいい…


 私は思った。


 が、水野は、やって来なかった。


 いつもならば、週に一回は、必ず、顔を出すのだが、姿を現さなかった…


 水野の代わりに、別の若い男がやって来た…


 「…水野さんは、今週はどうしたんですか?…」


 私が訊く前に、同じ営業所の若い女のコが、水野の代わりにやって来た男に尋ねた。


 水野は柳沢慎吾のような、おちゃらけた人気者…


 水野が会社にやって来ないのが、寂しいのだ…


 「…水野さんは、今週はちょっと…」


 水野の代わりにやって来た男の歯切れが悪かった…


 質問した若い女のコもまた、その男の歯切れの悪さに気付いた。


 「…まさか、水野さんは、会社を辞めたんじゃ…」


 男の歯切れの悪さに、気付いた女のコが質問する。


 「…それは、ないと思いますが…」


 どこまでも、男の歯切れが悪かった…


 「…だったら、どうして?…」


 「…それは、自分もわかりません…上司に訊いても、ただ、今週は来れないというだけで…」


 その言葉で、質問した若い女のコは黙ってしまった…


 それ以上、なにを訊いても無駄だと思ったのだろう…



 私も同じだった…


 言葉は悪いが、誰よりも、水野に会いたかった…


 会社の若い女のコは、おちゃらけた水野が会社にやって来ないのは、寂しいだけだが、私は違った。


 水野が、本当に、好子と婚約したのか、知りたかった…


 それが、事実か知りたかった…


 変な話だが、水野が好子と婚約したのか、誰よりも知りたかった…


 恋に落ちた!


 とっさに思った。


 33歳にもなって、初めて、男のことで、ここまで心がモヤモヤするとは、思わなかった…


 しかも、その相手があの水野!


 お金持ちであることを、除けば、とんでもなく軽いお調子者…


 まさか、私が、あの水野のことで、こんなにも悩むなんて…


 もはや、笑っていいのか、怒っていいのか、わからなかった…


 笑う?


 一体、誰に対して、笑う?


 怒る?


 一体、誰に対して、怒る?


 いずれも、自分に対して…


 高見ちづるに対してだ!


 しかも、その相手が、あの水野!


 お笑い芸人の水野だ!


 これは、泣くべきなのか、笑うべきなのか、わからなかった…


 ただただ、自分の心のありように、驚いた。


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