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恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ  作者: トモサン


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恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 22

正造と新造…


 私は家に帰って、ボンヤリと、二人のことを考える。


 同じ兄弟とはいえ、真逆というか、他人に近い…


 父親が同じで、母親が違うせいだろうか?


 いやいや、普通に父親と母親が同じでも、案外似ている兄弟は少ないものだ…


 自分が子供の頃から見知っていた、近所の兄弟も、似ている兄弟は、むしろ少なかった…


 明らかに、誰が見ても、兄弟とわかるほど、似ている兄弟はむしろ少数派だ…


 私は考える。


 ということは、あの正造と新造の兄弟が普通というか、ありがちなのだろうか?


 まあ、気の合う兄弟というのも、あまり聞かないものだ(笑)…


 女ならば、いっしょに、ショッピングに行く、姉妹もいるが、男の場合はありえない…


 そもそも、女と男は、行動形態が違う。


 女は仲の良い姉妹と、共同して、行動するが、男の兄弟の場合は、それはない…


 ありがちなのは、姉が、弟の面倒を良く見る場合…


 今回で、いえば、好子が新造の面倒を見るのが、まさにそう…


 当てはまる…


 世話好きの姉が、弟の面倒を、まるで、母親のように、親身になって見るのは、よく聞く話だ…


 私は考える。


 おそらく、好子にとって、新造は、溺愛するに足る弟なのだろう…


 私も一度会っただけだが、それはわかる…


 新造は、正造よりも、5㎝は背が高いが、なんとなく頼りない…



 ルックスも悪くはないが、どことなく頼りないのだ…


 カラダが悪いと言っていたが、それだけではあるまい…


 要するに、DAIGOなのだ…


 竹下元首相の孫のDAIGOなのだ…


 ルックスは良く、性格も悪くないのだが、どことなく頼りない…


 かと言って、憎むことはできない…


 一度会っただけだが、人柄の良さは、わかる…


 姉の好子は、新造が頼りないゆえに、余計に、新造の面倒を見るのだろう…


 新造の頼りなさが、好子の母性を刺激したというべきか?


 私は考える。


 しかしながら、その好子は、新造を溺愛する反面、新造が毛嫌いする、正造を好き…


 実に矛盾している(笑)…


 それほど、新造を溺愛しているのならば、新造が毛嫌いしている、正造から、距離を置くものだ…


 なにより、新造が嫌う人間を好きということは、新造が激怒する…


 誰でも、そうだが、自分が嫌いな人間は、同じように、周囲の人間に、その人間を嫌いになってもらいたいのが、人情というか、自然の発想だ…


 新造にとっては、いかに好子が自分を可愛がってくれても、その一方で、自分を大嫌いな正造を好きでは、とても納得のいくものではあるまい…


 私は考える。


 しかし、人間は矛盾するものだ…


 新造が、正造を蛇蝎(だかつ)の如く毛嫌いする以上、その正造を好きだということを、当然、新造が嫌がるということは、好子にとっても、わかっていることだろう…


 にもかかわらず、好子は正造を好いている…


 母親が違うとはいえ、正造と好子は兄妹だから、他人がどうこういうことではないかもしれないが、それにしても、矛盾している…


 が、それが、人間なのかもしれない…


 理性と感情は別…


 頭ではわかっていることでも、気持ちは別だということだ…


 好子に言わせれば、好子が正造を好きなことを、新造が嫌がることはわかっているが、それでも、正造が好きなのだろう…


 私は思った。


 思いながら、今度は澄子と直一を考えた。


 好子が直一を嫌いのは、澄子の夫だから…


 自分が嫌いな澄子の夫だから、直一が嫌い…


 これは、矛盾しない…


 論理的に、説明できる。


 それになにより、直一は、正造のライバル…


 父の後継者である、次期社長レースのライバルだから、直一が嫌い…


 これも、論理的に説明できる。


 だが、本当にそれだけか?


 直一はエリートにありがちなひ弱さがある。


 ひ弱さと言うと、イメージが難しいが、要するに、ヤクザやヤンキーの対極にいると考えると、イメージしやすい。


 つまり、いかにも偏差値70の高校や大学に通っているイメージ…


 暴力とは無縁の世界…


 いわゆる、学者のイメージだ…


 好子は、私、高見ちづる同様、小柄で、清楚なイメージ…


 常盤貴子を小柄にしたイメージだ…


 つまり、直一と好子は似た者同士…


 同じイメージを共有している。


 マジメなイメージを共有している…


 しかしながら、それはあくまで、イメージ…


 好子の中身もまた、外見とまるで違うのかもしれない…


 兄の正造同様、まるで、違うのかもしれない…


 極端な話、マジメな東大生がヤクザに憧れる話もないではない…


 まあ、そこまで言わなくても、東大生でも、ヤクザ映画が好きな人間は、例え少数でも確実に存在するだろう…


 要するに、自分とは、真逆の人間に憧れるケースはよくあるものだ。


 私は考える。


 好子は、見るからに清楚で、真面目な印象を見る者に与える。


 しかしながら、本人が、それを毛嫌いしている場合もある。


 なにしろ、私がそうだ…


 子供の頃は、虫も殺さぬ美少女と、周囲の人間から、見られていたが、私自身は、決して、そんな人間ではなかった(笑)…


 あえて、言えば、平凡…


 平凡そのものだった(笑)…


 ただ、自分で言うのもなんだが、小柄だが、ルックスがいいだけ…


 それだけの人間だった(笑)…


 ただ、それだけのことで、周囲の人間が、狂喜乱舞するというと大げさだが、ちやほやした(笑)…


 考えて見ると、実に恵まれている。


 とりたてて、勉強でもスポーツでも、目立つ成績を修めたわけでもないのに、ただルックスがいいだけで、学校や会社で、目立つ。


 そこに、努力はない(笑)…


 ただ、ルックスがいいだけだ(笑)…


 だが、その弊害もある。


 それが、必ず、特定のアンチが存在すること…


 私のルックスを妬む輩が、必ず存在することだ…


 これは、どんな美人も同じだろう。


 が、同時に親衛隊といえば大げさだが、熱心な男のファンも存在した。


 そして、私を妬む女は、必ず、男がいるところでは、私の悪口を言わない。


 男から、自分の評価を下げられるのを恐れるのだ…


 とりわけ、思春期の中学・高校時代は、そうだった…


 また、もうひとつの弊害は、ずばり目立つこと…


 どこに行っても、目立つゆえに、人一倍、勉強でもスポーツでも、一所懸命にやらなければ、ならない…


 それをしなければ、余計に顔だけの人間と思われてしまうからだ…


 自分磨きといえば、聞こえはいいが、勉強でもスポーツでも、それなりの成績をキープするための努力は大変だった(笑)…


 私は考える。


 話を戻そう。


 好子が、直一を毛嫌いしている理由は、自分と同じ匂いをする人間かもしれないということだ…


 あるいは、好子は自分が嫌いなのかもしれない…


 私は唐突に思った。


 自分の優れた容姿を嫌いなのかもしれない…


 これは、経験した者でなければ、なかなかわかりづらいものだが、要するに、自分の容姿が重荷なのだ…


 道で振り返っても、


 「…なんて、キレイなコ!…」


 と、通りすがりの人間に感嘆というか、驚かれるほどの美貌は、ときに、本人にとっては、重荷でしかない…


 なぜなら、自分には、その美貌しかないからだ(笑)…


 頭がいいわけではなく、スポーツができるわけでもない…


 ただ、顔がいいだけ…


 それは、ときに、本人に重荷になる。


 また、目立ちたくないにも、かかわらず、どこにいっても目立つのは、苦痛でしかない…


 これが、一番困る…


 私は思う。


 私は好子が、直一を嫌う理由は、案外そんなところかもしれないと考えた。


 そのときは、それだけだった。


 が、風雲急を告げるといえば、大げさだが、好子が、なぜ、あの日、私、高見ちづると会いたいと言ったとのか、理由がわかった。


 それは、週刊誌が発端だった。


 週刊誌の記事に、好子が載っていた。


 「…深窓の令嬢に、不倫疑惑…」


 目の部分に、黒い線を入れ、顔をわからないように、しているが、それは、紛れもない米倉好子だった。


 好子の美貌は、目の部分に黒い線を入れただけでは、隠せない…


 見る者が見れば、わかる…


 相手は、妻子ある、企業経営者だった…


 私は仰天する。


 先日、会ったばかりの、好子に不倫の匂いは感じられなかったからだ…


 不倫に匂いがあるかと問われれば、無論、そんなものはなにもないのだが、女が恋をしていれば、なんとなくわかるものだ…


 どことなく、浮かれていると言うか、華やいだ気分になる。


 これは、年齢は関係ない…


 女子高生でも、50歳の女でも同じ…


 恋をしていれば、傍から見ると、なんとなく、わかるものだ…


 と、同時に、米倉の正体がわかった。


 いや、米倉の正体と言うのは、間違いで、米倉家の正体がわかったと言うのが、正しい。


 記事によると、好子の素性の説明に、戦前から続く、財閥の系譜を引き継ぐ、名門と書かれている。


 たしかに、あの豪邸に住む一族だ…


 お金持ちであることは、わかっている。


 また現に、私の勤務先の商社の取引先である、会社の溝口部長から、米倉は、当社の大株主だという説明を受けている。


 しかしながら、この記事を見るまでは、こう言ってはなんだが、なんとなく実感が湧かなかった…


 たしかに、あの豪邸に足を踏み入れ、実際に、そこに住む一族と接触してみたものの、今一つ実感が湧かないというのが、正直な感想だった。


 これは、やはり、私の中で、米倉が有名でないからだろう…


 例えば、日本中が誰も知っている木村拓哉=キムタクの自宅に招かれれば、やはり、違う…


 私は当然、キムタクに面識はないが、キムタクのことは、日本中誰もが知っている。


 その有名な芸能人のキムタクに自宅に招かれれば、やはりテンションが上がる。


 米倉の家は、当然、キムタクの自宅より、大きいに違いないが、これが無名となると、やはり、いかに招待されても、キムタクの家に招かれたほど、テンションが上がらない…


 しかしながら、今回のように、米倉の素性が、週刊誌で、明らかになったとなると、話は別…


 戦前からの財閥の流れを汲む名家…


 その説明が、女心をくすぐるというか、響く…


 ずばり、納得する(笑)…


 世間に知られた名門の大金持ち…


 その素性がわかったことで、米倉の名前が、私の中で、急上昇した。


 かといって、私と米倉が恋仲になるわけでもない…


 私が米倉に頼まれたのは、米倉の家の誰かが、会社の金を使い込んでいるから、探ってもらいたいと、頼まれたに過ぎない…


 それまで、面識のなかった米倉に、そんなことを頼まれたのは、不思議だが、私はその依頼を受けた。


 退屈していたからだ…


 日々の生活に退屈していたから、その依頼を受けた。


 それだけのことだ…


 米倉とは、恋愛関係でもなんでもない…


 確かに、米倉は爽やかな、イケメンだが、いかんせん、周囲の評判が悪すぎる。


 実の父親からも食わせ者と評される人物…


 確実に、性格に裏表があるのは、明らか…


 わかっている。


 しかしながら、それがわかっていて、私、高見ちづるは、米倉の依頼の元で、米倉の家庭を探ろうとしている。


 これは一体どういうことだ?


 私は自問自答する。


 恋かもしれない…


 私の脳裏に、とっさに、そのフレーズが浮かんだ…


 これが恋かもしれない…


 いや、


 これこそ、恋かもしれない…


 食わせ者とわかっている米倉正造に頼まれて、動いている。


 自分になんの得もないことに、心を砕いている。


 これが、恋でなくて、なんだろう?


 見返りを求めず、誰かのために動くのは、その人間を好きだから…


 これが、同性ならば、そうではないが、異性ならば、恋とも呼べる。


 私は日々退屈だから、米倉の依頼を受けたと自分自身に何度も言ったが、それは違うかもしれない…


 本当は、自分でも気づかない間に、米倉の爽やかなルックスに惹かれていたのかもしれない…


 私は今さらながら、気付いた。


 自分自身を無意識に偽っていたのかもしれない…


 恋愛偏差値ゼロ…


 唐突に、そんな言葉が、私の脳裏に浮かんだ…


 恋をしたことがない、私に、恋の説明をすることはできない…


 33歳の今の今まで、恋をしたことが一度もなかった…


 それは、なぜか?


 どうしてか?


 単純に、自分の心が動かないからだ…


 他人に憧れることがない…


 どんなイケメンに会っても、カッコイイとか、素敵とかいう感情は芽生えるが、それだけ…


 そのイケメンと付き合いたいとか、結婚したいとか、思わない…


 人を通じて…あるいは、直接、私と付き合いたいと言ってくる男は、学生時代から、多かった…


 山のように多かった(笑)…


 それは、私が単純に美人だから…


 それだけの理由に過ぎない…


 昔、私に良く似た小柄で美人の叔母が私に言ったことがある。


 「…2000人から3000人…」


 あるとき、唐突に、叔母が呟いた。


 「…2000人から3000人の若い女のコを見れば、そのうちの1人ぐらいは、キレイなコと思う…決して、5000人じゃない…」


 叔母が説明する。


 要するに、わかりやすく言えば、東大や京大に合格できる頭脳がある人間は少数…


 その頭脳をルックスに置き換えればいい…


 2000人から3000人の若い女のコを見れば、キレイだなというコが、確実に存在する。


 しかしながら、自分の周囲を見渡せば、当然、誰もが、そんなキレイなコは、いない…


 東大や京大に進学できる頭脳の持ち主が、周囲にいないのと同じ…


 そう考えれば、納得が行く。


 いわば、希少価値…


 絶対数が少ないから、憧れる。


 これが、10人に1人が美人ならば、ひとは、それほど憧れないに違いない…


 見渡せば、周囲にいるからだ…


 私は考える。


 私が学生時代からモテたのは、そういう理由…


 こう言っては、傲慢に聞こえるが、私に匹敵する美人が、私の周囲にいなかったに過ぎない…


 現実に、好子さんが、私の同級生ならば、男の半分は、私ではなく好子さんに憧れるだろう…


 そういうことだ…


 私は考える。


 同時に、さきほども言った、好子がなぜ、突然、私に会いたいと言ったのか、その謎が解けた気がした。


 好子が私に会いたいと言ったのは、私に直一・澄子夫妻ではなく、正造・好子兄妹の味方になってもらいたいから…


 私は、あの日、そう思った。


 しかし、違ったのかもしれない…


 本当は、好子が、なにか、密かに動いている可能性がある…


 それゆえ、なにか私に伝えたかったのかもしれない…


 単純に、妻子ある男と不倫しているに過ぎないのかもしれない…


 が、そうとも思えない…


 なぜなら、タイミングが良すぎるからだ…


 米倉が私に会社の不正をしている人間を家族から探してくれと言われて、まもなく、この醜聞が出た…


 これは、やはりなにか関係があるとしか思えない…


 それがなんだかは、まだわからない…


 だが、いずれにしろ、物事が動き出した…


 米倉に頼まれた、会社の不正に関与した人間を探してくれと言われて以来、初めて、動き出した…


 そんな予感がした…


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