第51話「一式砲戦車」
ドカーーーーーーーン!!
「はーっはっは!」
命中ぅぅう!
いえー!
「いえー♪」
上機嫌な私に、ルルもスキップジャンプでハイタッチ。
やったやった!
「見事命中~!」
あっはっは!
バーカめぇ。
ただ何も考えずに重機関銃で挑発したと思ったか!
「違うね! アンタがそこに留まる隙と理由を作ってやったのさー!」
矮小なる人間に挑発されて黙って去るような魔物じゃないのは明白だ。
なら、煽りに煽るのは、とーーーーぜんのことぉ
「ば、ばかな!? お主、一体何をした?!」
濛々と立ち込める爆炎に、茫然としたルーフデスが思わず零す。
は!
何をしたかって?
そんなの、決まってんでしょ!
「砲撃だよ!」
「な、なにを?!……チハたんの主砲では絶対に効かないはず──」
わなわなと震えるルーフデス。
彼女の視線の先には、頭上の陽の光の元──たなびく硝煙をまとわりつかせた長大な砲身を見せる戦車のシルエットが見えていたことだろう。
そして、それに気づいた彼女の視線と表情は勝利の喜びというよりも、古の化け物を消滅せしめた火力が今にも自分に向いた時のことを考えているのかもしれない。
なにせ、今の今。まさにこの瞬間に、かの古の魔物は滅び、獣の王の伝説はたった今ここで潰えたのだから──……って、
「う、嘘でしょー?!」
なんと、勝利に沸いていた私とルルがピタリと止まる。
思わず声が裏返る。
だって、
勝ったと思ったその視線の先では、なんと──!
『ギ、ガ、ガ、ガ……』
「マ、マヂ?」
うめき声っともに、ぐぐぐ……と、爆炎の先の影が動く、動く。
たしかな生命の息吹を感じさせるように、シルエットが動いているではないかー!
「……じょ、冗談でしょ? な、75ミリ砲を叩き込んだんだよ?!」
それでも、まだやんの!?
つーか、まだ生きてんの?!
まだ?!
これにはさすがに驚愕するしかない。
実際、少し晴れてきた爆炎の先には……なんとまぁ、背中が大きく抉れた獣の王が、血の涙を流しながらフラフラと立ち上がっていくではないか。
「さ、さすがは古の魔物──」
さすがは獣の王といったところかー……!
「いや、だけど、すげーなおい」
まさかまさかの「やったか?!」からの、生存フラグ! だが、これはある意味当然というべきなのかもしれない。
「……まー、千年以上も生きているんだもんねー」
そりゃー、これくらいではくたばらないか。
──だったら!
「これ以上食らったらどうなるか見てみようじゃないのぉ!」
パチンッ!
指を鳴らしてからの再装填ッ!
「さーて、一発で致命傷なら、あと何発耐えられるかな?」
悪いけど、
こっちは魔法使いじゃないんだ。
「私は長瀬あかり──ただのガソスタ店員っ」
そしてぇぇ!
「ぶっぱなすのは大砲であって、コイツは極大魔法でもなければ古代魔法でもなーーーーーーーい!」
つまぁり、
ただの人が作りし武器に過ぎないよッ!!
「もっとも、この武器の威力は魔法なんかよりもはるかに強いけどねぇぇぇえ!」
いけッ!
轟け主砲、
ぶっとばせ主砲!
「トドメの主砲をぉ、」
──ってぇぇぇぇぇぇえええええええ!
刹那ッ、
頭上で、バクーーン! と凄まじい発砲音が響き渡り、ゴルドの大穴全体が震える!
すると、一瞬で空間を航過した砲弾が満身創痍の『獣の王』に命中し、今度こそ直撃、着弾! 爆裂!!
ドカーーーーン!
と、必死で起き上がろうとしていた獣の王に砲弾が降り注いでいく。
それも一発、二発ではない!
「そう、まだまだー!!」
そう、まだまだだ!
……もう、油断などするものか!
……もう、やったか! などというものか!
……もう、あとは、あとは、あとは──……あとは、撃てぇぇぇえー!
「撃って、撃って!」
撃ちまくれぇぇぇえええええ──!!
「新砲塔Lv2、一式砲戦車の75mm砲の連射を食らうがいいわっぁぁあああ!」
その振動と叫ぶ私の眼前に、そのステータス画面が燦然と輝いていく。
そこに踊る文字列は、当然、さっき購入したばかりのそれ!!
……そう!
ブーン!
◇ ◇ ◇
スキル:【せんしゃ】
能 力:任意の場所に召喚可能。
世界中のありとあらゆる『せんしゃ』(※)が選択できる。
戦 車:九七式中戦車・改 → 一式砲戦車(ホロⅠ)(NEW!)
『改造オプション』
追加装甲Lv1: 購入済み
補助装甲Lv1: 5ポイント
増槽50L : 5ポイント
土嚢 : 2ポイント
鉄条網 : 購入済み
(追加)歩兵用掴み綱: 購入済み
(追加)歩兵用装備 : 購入済み
対空機関銃 : 購入済み
煙幕発射器 : 15ポイント
排土板 : 3ポイント
拳銃穴 : 2ポイント
新型砲塔Lv1: 購入済み
新型砲塔Lv2: 購入済み ← これだよ~♪
新型砲塔Lv3:150ポイント(NEW!)
暗視装置 : 購入済み
アンテナ強化 : 購入済み
牽引トレーラー: 購入済み
(追加)工兵器材: 購入済み
備 考:(※)表記はカタログあり。
◇ ◇ ◇
「これが新型の『一式砲戦車』の威力だっぁぁぁあっっ!」
頭上で75mm砲を連射している戦車こそ、
チハの車体に「75mm」という大口径の『九〇式野砲』を改造した主砲を載せた日本軍の自走砲である、またの名を一式七糎半自走砲、ホニⅠッ!
通称が、『一式砲戦車』であーーーーーーる!
「あーっはっはっは! 見ぃぃたかぁぁぁあ! この大口径を! それもこれも、アンタの手下を山ほど倒したからポイントざっくざく!」
おかげ購入できましたーーーーーーー!!
ありがとうございまーーーす!
なので、死ね!!
御礼に死ね!!
ただ死ね!
死ね!!
「死んで消えてなくなれぇぇぇえええええええ!」
獣の王ぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!
ドゥカーーーン!
75ミリが命中し炸裂。
そこに、はらにさらに命中し炸裂。
一発、2発でなく、
ドカン、ドカン、ドカン! と───!
発射、命中、爆裂、
発射、着弾、爆裂、
発砲、直撃、爆裂、
まるで、砲撃音楽。
そのオーケストラの指揮者のごとく、砲火の指揮棒をふるう私は、最後のフィナーレを飾るがごとく、砲撃に次ぐ砲撃をブチかます!
そうとも。
これが、75ミリ!!
これが、砲撃!!
これこそが、砲撃と砲撃と砲撃と砲撃と砲撃、あと砲撃だぁぁあ!
一瞬でも奴が足を止めればそれで上等! 勝てて当然!
最大俯角15度で、ゴルドの大穴の底を高所から管制しているからこそできる技なのだ!!
「はーっはっは! トドメの砲撃をどうぞー! 〆の砲撃もどうぞー! そして、最後の砲撃はいかが―!」
ついでに、砲撃のお替りわぁぁぁあ!
「あとはダメ押しの砲撃じゃぁぁあああああ!」
チュバーーーーーーーーーン!!
難十発ぶち込んだかわからないが、これで生きてたらビックリだわ。
なにせ、もう濛々たる爆炎でさきがな―――んも見えない。
「いやー。だけど、マヂでギリギリ!」
マヂであぶねー
マヂで死ぬかとおもったー……。
勝つ自信はあったけどね。
実際のところチャンスはか細い針の穴を通すほどのものだったし、一歩間違えれば、反撃する暇もなく潰されていただろう。
──だが、勝った!
「そして、さすがにもうー死んだでしょう!」
結局、撃ち続けること山のごとし──……じゃなくて、数十発。
まさに地面という地面につるべ打ちだ。
破片が飛んできてこっちも危ないくらい。
オマケにダメ押しとばかりに欠片も残さないつもりで榴弾も数発叩き込んでおいた。徹甲弾だけじゃ、まだまだ動くかもしれないし、爆裂しておくのだー。
「ふぅ、やれやれ……。ようやくやったよ、ルル」
「いえー♪」
今度こそ、ハイタッチを決める私たち。
実際、濛々たる爆炎が晴れた後にはグッチャグチャになった獣の王だった残骸と、ぽっかりとあいた爆撃孔。
しかも、うーーわ……バラッバラ。
こりゃーもー、いくらなんでも生きてないっしょ…………って、
「あれ? ひーふー……み?」
お、おかしいな。
身体はバラバラのグッチャグチャだし、
頭部だって吹っ飛んで、1、2…………さ、3? あっれっれー?!
「おっかしいよー。コイツ、確か頭が三つだったはず──」
たしかケルベロスって三つ首の番犬だよね?
んー。砲撃で潰れちゃったのかなー?
まいっかー……。
「──ながせ!」
「へ?」
珍しく焦った声のルルに私は思わず振り返った私。
しかし、その直後、あまりの光景に反射的にこの子を庇い身体で隠そうとするが、一歩遅しッ!
ッ!
「し、しま──」
『ゴァァァアアアア!!』
──んなあぁぁ?!
驚く私の眼前で、突如地中がさく裂!
もりあがった地面から出現したのはなんと頭部だけになった獣の王ッッッッッッッ!
どっぱーーーーーん!
「じ、じーーーーざーーーーーーーーーす!!」
コ、コイツ首だけで動きやがった?!
オマケにその首だけになった『獣の王』が、グワバッ! 口をあけて私とルルをひと飲みにせんとする。
「ちぃぃぃ……」
ほぼ反射的に腰に手が伸びる。
そこにあるのは信号弾、そして、拳銃……いや、どっちも間に合わない!!
ならば!!
「んなろぉぉ!」
シャキーーーーーーン!!
からの
ガキーーーーーーーン!!
「うぎぎぎ……!」
ほ、ほぼゼロ距離で腰の軍刀を抜刀ッ!
それでいて奴の食らいつきをギリギリの所でなんとか防ぐ……ッ!
「こ、このぉぉ」
『ギガァァァアアアア!』
至近距離で受ける咆哮に思わず足が竦みかける。
だけど!!
「う、うらぁぁあ!」
ガキンガキンガキンッ!
首だけのくせにやたらと好戦的なそれが目の前で何度もかみ合わされるのを前にして、私も負けじと軍刀で押し返そうとする。
しかして、パワー不足!
辛うじて押さえこむも──……くっそー、力も強度もなにもかが全然たりなーい!
「うににににぃぃ……」
ギチギチギチ……。
みしみしみしっ。
雑な作りの軍刀が、嫌な音を立てて軋んでいく。
だけど、背後にはルル。このままいなすこともできない。
「ぐぁぁああ、まずいまずいまずい……」
(こ、これはマヂ死ぬかも)
慌てて、武器を探るも、手持ちは拳銃のみ。
そして、損なのがコイツにきくはずも──……あ、やべ!
メキンッ
嫌な音を立てて軍刀が曲がる。
破片が飛んで頬をきる。そして、そのままメリメリメリと──……。
あ、
あ、
あ、
「あわわわわ──か、刀が……折れる!」
パキィーーン……!
「くっ!」
万事休す。
あとは、
……そのままびっしり生えた歯によって、ブシュー! と噛み切られて、ジ・エンド──長瀬あかりの次回作にご期待くださ
「詰めが甘いんじゃ、お主は」
ドシュ
「へ?」
最期の瞬間を覚悟して、目を閉じた私に降り注ぐのは冷たい声。
「あー、るーふですだー」
そして、いつもどおりのルルのトーンに恐る恐る目を開けばなんと、なんと……。
「ア、アンタ……」
「ふんっ。これで貸し借りなしじゃからな」
そういって、剣を手に立ち尽くしたルーフデスが、それを肩にしながら不敵な笑み浮かべていた。
その切っ先には、あの巨大な頭部がある……ってことはー。
「え? た、助かった?」




