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第50話「VS 獣の王」

 ──ギガァァァアアアアアアアア!



 おぞましい叫びとともに猛然と駆け出した『獣の王』。

 そいつは三つの犬の首を持ち、青き炎を纏いし獣。



 ってことは、ようするにあれでしょ。



「ケルベロスって奴かー」


 ドーン!!


 奴が私を見るなり突撃!

 食らいつこうとして、手前に転がっていたベヒモスの死体を思いっきり跳ね飛ばす!


 それだけで、バラバラになる災害指定種よ──!


(ひゅ、ひゅー……な~んてパワー!)


「あのベヒモス自慢の装甲も、一瞬で引き裂くほどの衝撃力とか半端ねーなー」

「ば、馬鹿もーん! 『半端ねーなー』……じゃないわぁぁ! のんびり観察しとる場合かー!」


 プンプンと、

 なにやらルーフデスが宣っているが、これは大事なことなのさ!


「のんびりとはしてないよ! 見なよッ」

「あーん?」


 バラバラと降り注ぐベヒモスの残骸を裂けながら見据えるのは、奴の動きそのもの!


「ほら、あれ! 体があって、物をはじき飛ばせるってことは物理が効くってことでしょ!」

「そ、そりゃーそうじゃが……」


 だったら上等だよ!!


「ルル! 対戦車戦闘用意!!」


 もとい!!


「……対バケモノ戦闘よーーーーーい!」

「あいあいさー!」


 びしーっと敬礼してくるチビな我が子に、答礼しつつ、私も姿勢を低く構える。

 さすがにアレを相手に手持ちの武器だけじゃ心もとない。


 なにせ、敵は戦車にあらず!

     敵はドラゴンにあらず!


     敵はバケモノ!


 千年クラスの封印を施される世界の敵にして、獣の王なり!!


「ならばこっちも聖剣(・・)で対抗じゃあぁぁああ!」


 ──スパァァァア!!


 一挙動で背から引き抜いたのは、もちろんこれ(・・)


 火炎放射器を背負っていたさらに内側。

 とっておきとばかりに担っていたのは、そう聖剣エクスカリバー(刺突爆雷)であーる……!


 ベヒモスの調査と聞いて、これ(・・)を持ってこないはずがないでしょ!


 そして、

「すかさず突撃じゃぁぁああ!」


 うぉらぁぁぁあああ!


「──そこぉぉおおおおおお!」


 ベヒモスを跳ね飛ばしたその一瞬の隙をついて私は聖剣……もとい刺突爆雷を思いっきり突き刺した!!

 安全栓を引き抜いて、先端の首のスタンドオフを確認して──突くべしッ!


「しゃおらぁぁあ!」


 ズドンッ!!


 ……まさかのクリーンヒット!!

 どうやら獣の王は矮小なる人間の攻撃など、気にもしていないようで躱すそぶりすらない。


 なので、すんなりと先端の釘ごと突き刺さったそれは──刹那の時を経て、見事に爆裂!!



  チュバーーーーーーーン!!



「はーっはっはぁ! 命中ぅぅ!」


 爆発の破片が顔の飛び散るのを、腕でガードしながらそのまま背後に飛びすさる私!

 そして、その姿をルーフデスが唖然として見ていーる。


「ん、なぁぁああ! 聖剣が命中じゃとおぉぉ!」


 そのとーり!


「どーだぁぁあ! ドラゴンすら屈服させた刺突爆雷のいりょーーーく!」


 濛々たる煙。

 そして、明々とした刺突爆雷の成形炸薬が爆裂するその明かり──…………って、いや、ちょっとぉ!


「え? えええー!! う、うそでしょ……」

『ギギギギギ……!』


 な、なんと……。


 ミシミシッと、何か筋肉や繊維がきしむ音がしたかと思うと、爆炎の向こうからはほとんど無傷の獣の王が顔を出した。


 それも、明確な殺意を顔に灯した状態で──五体満足のまま!


「んなぁっぁあ!」


 マヂ?!

 たしかに命中したはず──……直撃したはず!!


 ──だのに、どうして?!


 戦車の装甲すら、

 いやそれ以上のベヒモスの装甲すら聖なる(ノイマン)効果のメタルジェットで溶かすはずのそれがぁぁ──……っ!


「……ッ! そ、そうか。このイオンの香り!」


 漂う溶けた金属臭は間違いなく炸裂した刺突爆雷のそれだ。


 だが、利かない。

 さく裂したのに効かない──それはなぜか!


(決まっている!)


 奴の()だ!

 全身を覆う剣山のごとき毛が、空間装甲の役目を果たし、刺突爆雷のノイマン効果を減衰せしめたのだ──!!


「ちぃぃい!」

『ギガァァァアアアアアアアアアア!』


 こぉの!

 全身スラットアーマー(格子状装甲)やろうぉぉぉお!



  ドーーン!!



「ぐはーっ!」


 や、やられた?!


 まるで羽虫でも払うかのように前足で叩き潰されそうになった私。


 その一瞬で視界が暗転し、身動きが……。


「って、え? あれ?」


 い、生きてる。

 それどころか痛くも痒くもない。


 ……そのままなら、多分一撃で死んでいたはず。

 だのに、なぜか生きている────どうし


「って、ル-フ・デーーーーース?!」

「そ、その名で呼ぶな……!」


 な、なんてこと!


 そこにいたのは、私を庇って代わりに潰されたルーフデスであった。

 ここに来ていたただの解説役かと思いきや、なんてことー!


「まさか、アンタに救われるなんて──」

「ぐぅぅ。いっづづづー……! お、お主は無事か?」


 え?

 あ、うん。


「……いや、アンタこそ大丈夫なの?!」


 私を庇って踏みつぶされたルーフデス。


 獣の王はベヒモスクラスの巨体なので、一見して小さな少女にしかみえないルーフデスはぺちゃんこだ。


 だが、そこはさすがは竜人族!


 元はドラゴンなだけあって、いてててで済む程度──。


「──アホゥ! 大丈夫にみえるか?」

「んー、みえない」


 普通なら死んでる。


「だった、他にかける言葉があろう──……ぐはーっ」

「ひぇぇぇえ?!」


 しかし、はやり衝撃はかなりのものだったのか、

 あのルーフデスですら血を吐いて苦悶の表情を浮かべるほどだ。


「ご、ごめんねー! だ、だけど、アンタがなんで私を?!」


 こう言っちゃアレだけど、割と無茶苦茶した自覚はあるよ。


 戦車砲100発ぶち込んだり、

 拳で頭ぶん殴ったり、スコップで頭ぶんなぐったり、つるはしで頭ぶん殴ったり、刀の柄で頭ぶんなぐったり、頭から高所に突き落としたりと──……あれ? 私、結構ひどいな。

 

「ふんっ! 色々と借りがあるでのー」


 あ、ああー。

 そうだったね!


「う、うん! そう言えば金貨1000枚は払ってもらわないとねー」

「いっせ……おま、こんな時に!」


 い、いや、

 だってそれとこれは別だし!


「でも、救ってくれたことはサンキュ!! すこしは、まけたげる!」

「すこ……全部、まけーい!」


 それとこれはべつー!


『──ギガァァアアアアアア!!』


 聞いてられんとでも言ったのか、

 それともルーフデスを潰したことに気を良くしたのか、獣の王が鋭い咆哮を上げる。


 そして、そのままじろりと足元にルーフデスを睨みつけると……口をぐばぁあ!


 あ。

 これ、まずいかも。


「ぬが?! 息、くっさーっ!」

「そりゃね! なんせ、コイツ、今の今からアンタを食おうとしてるからねー!」


 ひぇぇえ!

 く、口の中こわー!


 しかも、およそ千年ぶりクラスの食事でしょー!

 そりゃーうまそうに食われちゃうよー!!


「ルーフデス! そこから出れる?!」


 ぺちゃんこに潰されてるけど、ワンチャン……。


「む、無茶いうでない! それより、構わんから逃げろ──そして、援軍を呼んで来い!!」

「え、援軍たって……!」

 

 そも構わんもなにも、

 いくらアンタでも喰われたらさすがに死ぬでしょ!


「はっ! そう簡単に食われる我ではないわ!」


 ふんがー!!


 そう言うが早いか、ルル顔負けの怪力をみせたルーフデスが、ぐぐぐぐ……と潰されながらも前足を持ち上げる。


「お、おぉー!」


 さすがはドラゴン!

 さすがは竜人族!!


 これには獣の王も驚いたのか、少し顔を逸らす。

 そして、興味をもったのかルーフデスをマジマジと──……あ、そうだ!


「ルーフデス! 援軍より、いい物があるよ!」

「あーん?!」


 そう。

 いいもの(・・・・)あんじゃん!!


「刺突爆雷が効かないなら、こっち(・・・)!!」


 ぶちっ!


「あいだー!」

「ちょっとは我慢なさい!」


 そう。いい物があった。

 ルーフデスの首から下げておいた九九式破甲爆雷だ──!


 そいつを引き千切ると、一挙動で安全栓を引き抜く。

 そして、低く唸る獣の王の前足にむけ、その剛毛をかき分けるようにして──……それを叩きつけた!!


 ──おらっぁあ!


「伏せて!!」

「ぬぅ?! ど、どうやって!」



 ……あ。



 ルーフデスは前足を持ち上げた状態で、ふんぎぎぎ……と硬直状態。

 躱すのは無理!


 なので、


「な、なんとか頑張れ!」

「んなぁぁあ! 無茶なこ



  バーーーーーン!!



 直後、九九式破甲爆雷が炸裂!

 奴の補助装甲のような毛を貫いて、皮膚の近くで爆裂した──これならー!


『ギガァァァアアアアア!』


 ……って、えええ?!

 さ、叫んでる割に、ちょびっとした血が出てないぞ?!


「うっそ! これもダメぇえ?!」

「あっづぁぁあー! む、無茶苦茶すなぁぁ!」


 あ、こっちも生きてた。

 さすがドラゴン。……そして、獣の王!!


「馬っ鹿もんがー! コイツを甘くみるなナガセ!! かつての勇者が倒しきれず、封印するしかなかった化け物ぞ!? 人が作りし武器なんぞ効くか! いくらお主の武器が優秀でも通じぬわ!」

「ぬー!」


 ──だけど、全く効かないわけじゃないしー。


 事実、爆雷を叩きつけた、前足からは少し出血し、汚い血が溢れている。

 しかし、ルーフデスの言うことも事実……というか単純にパンチ力が足りない!


 ならば、


「20ミリだ!! ルルー! そいつで牽制、牽制、牽制!!」


 牽制射撃ぃぃ、

 撃ッちまくれぇぇぇえ!


「あーい!」


 ジャキンッ!


 新しい20ミリ7連発入りの弾倉を九七式自動砲に叩き込むルル。


 そうとも。


 刺突爆雷でも、九九式破甲爆雷でもダメなら、九七式自動砲の20ミリ徹甲弾だー!!


って(撃て)ぇぇええ!」

「ぬがぁぁあ! 効かんというとろうがー!!……あと、我がおるのに無茶するなぁぁぁ!!」



  ドカン、ドカン、ドカン!



 一人、獣の王の前足の近くで身動きの取れないルーフデスが悲鳴を上げる。

 その頭上で次々に炸裂する九七式自動砲の20mm徹甲弾よ!


 次々に着弾し、その余波でルーフデスの赤い髪が焦げてアフロになっていく。

 しかし、それくらいに至近距離でぶち込んでも、なんと、この獣の王のクソ野郎はケロリとしていやがる!


「マ、マヂかよー」


 これもダメ?!

 20mm徹甲弾って言えば、至近距離で直撃させれば30ミリの鉄板でも打ち抜く威力だぞ。

 それは九九式破甲爆雷のそれよりも強いというのに──!


「くっそー! このバケモノめー」


 あ、化け物だったわ!


「だから、あッほう! そんなもん効くかー!! いっとくがチハたんの主砲でも無理だぞ?! もちろん、この化け物にも弱点はあるじゃろうが、上から狙ったところで絶対無理じゃ!!」

「えー、マヂぇ?!」


 20ミリでダメならチハたんだー。思ったけど、どうもそれも無理らしい。

 実際に47ミリを食らったことのあるコイツ(ルーフデス)が言うなら信ぴょう性は高い。


「ぬー。チハたんの47mm砲でも無理なら、現状打つ手なしじゃん!!」

「だから、そうじゃと言ッとろうが!! ええから逃げんか、コイツはなんとか我で時間を稼ぐ! その間に外にでーい!」


 いやいや、待て待て。

 そもそも、外までどうやって無事に逃げるってのよ?!


 今はまだ至近距離での戦闘だから動きが少ないとはいえ、ゴルドの大穴の底まで行けばコイツは縦横無尽に駆け回るだろう。

 その中をウィンチで上まで行って、そこからチハたんで入口までトロトロと行く?……無理に決まってる!!


「最悪外に出れたとしてどーすんのよ!! 援軍たって、誰が来るわけ?!」


 大昔の勇者でも呼べってか?!


「いいから、いけ! あのギルマスなら話が分かる! 最悪ギルドで手に負えんなら、首都の軍を呼べ! それでも、無理なら竜人族がなんとかする!」


 いやいや、

 だから、なんとかできないから封印してたんちゃうんかーい!


「いいよ、もう! どーせ逃げきれないなら、最後の最後まで戦ってやる!!」

「ちょ、おまっ……あいだーッ!」


 ブチッ!


 ルーフデスの背中側にも吊るしておいた九九式破甲爆雷も引きちぎり手にする。

 それと手元にあるのは、もう一個の予備の破甲爆雷で合計二個。


 そして、残るは自衛火器だけ──あとは、ルルの持つ九七式自動砲が手持ちの対戦車火器の全て!


「うぉい! お、お主!? 本気か?!」

「本気も本気!! チハたんの主砲が効かないっていってもさ! コイツだって血を流すし、さっきは爆雷が多少は効いたもんねー!」


 つまり不死身の化け物じゃなーい!

 ただ硬いだけ!


 ──そんなら!!


「やってやれないことはないよ!!」


 いくよ、ルル!!

 続けて牽制射撃開始ぃぃい!


「うてうてうてうてー!!」

「あいあいあーい」


 私が言うが早いか、ドカンドカンドカンッ! と、強力な反動をものともせずに小さな少女が九七式自動砲を撃ちまくる!


 ──その()える姿よ!!


 もちろん、命中弾は時には弾かれ、時には獣の王にめりこみ、時には血を流させる。


 だが致命打ではない。

 効いているようで効いていない。


 しかし、痛覚はあるのか非常に鬱陶しいそうに顔をふるうと、今度はルルに狙いをつけたのか猛然と駆け出す獣の王!


 そのまま、ルーフデスを弾きとばすと、その勢いを駆って九七式自動砲の弾幕を走り抜けた!


 あとは大口をあけてルルに食いつかんとする!



 …………つまり、



「私に背中を見せたなっぁぁあ!」


 うーーーーらぁぁぁ!


 ウチの子を狙ったのが運の尽き!


 その瞬間、

 私もルーフデスも、どっちも無視してルルに食らいつきに行ったその無防備でクソな背中にむかって、私は思いっきり九九式破甲爆雷を投げつけた。


 それも二個重ね(・・・・)の九九式破甲爆雷を、だ。


「どーだぁぁあ! 磁石付きだから、こういう使い方もできるんだよ!!」


 安全栓を抜き、

 二個を束ねて重ねて投げつけたことで単純計算で威力は二倍!!


 それが、放物線を描いて飛んでいき──刹那ッ!



 ダダーーーーン!



『ギャガァァァアアアア──……!!』


 重なった爆音が響き、奴が背中から叩きつけるような衝撃を受けて無様に地面にひれ伏す形となった。


「はーはっはー!」


 そして、吹き上がる背中の爆炎……これは、やったかー?!


「ダ、ダメじゃ! 奴は獣の王ぞ!! 正面も背中も、毛は固く皮膚は分厚い!! そんな少々の攻撃など通らんわー!」

「だよねー!!」


 わかってた。

 ──だけどそれでいい(・・・・・・・・)

 奴の目をこっちに向けさせれば、それでいい──そして、そのまま駆け抜けるのみッ!


「ルル、こっち!」

「ん!」


 ガシャンッ!


 弾切れの銃を放り捨てたルルを小脇に抱えて私は駆ける。


 そして、一気にゴルドの大穴の底を掛けると、

 そのまま、周囲に散らばる骨をかき分け、さっき倒した魔物の残骸をを駆け抜け、つい数分前に食事をしていたその周囲に辿りつくと、即席のバリケードに飛び込んだ!


 もちろん、そこは九二式重機関銃を備え付けたあの陣地だ。


 さっきのまま、キャンピングチェアが転がり、テーブルを横にしただけの簡易陣地だけど、武器は健在。

 当然、これしきで獣の王の猛攻など防げるはずもないが──それがどうした!


「ルル、予備弾持ってきて!」

「んっ!」


 言うが早いか、近くの木箱から予備の保弾板を取り出すルル。

 よーし、再装填ッ!


 ──ジャキンッ!


「おっし、九二式重機関銃は無事だ!」

「たまもあるー」


 オッケ、オッケ!!


 しかもさっき撃ちまくっていたので、動作確認は必要なしッ。いけるいける!


「照準よし!」

「たまよし!」


 度胸と愛嬌よーし!!


「──ならば、あとは撃つだけぇぇえ!」


 ルルが予備弾を取り出し、次の備えて近くに添える。

 あとは引き金を引くだけで九二式重機関銃はいつでも撃てる!!


「よーし、目標正面! キモイ犬ー!」


 指命ッ!


 もはや照準眼鏡を覗くまでもない!

 紺だけ近ければまっすぐ撃てば当たる当たる!


「よ、よせ、ナガセ―! そんな豆鉄砲効くかぁぁあ!」

「いい、いいッ!」


 いーんだよ!!

 効かないくてもいいんだよぉぉお!!


「それよりもこっち向けや、クソ犬がぁぁぁあ!」


 ──うらぁっぁああああ!


 ドゥドゥドゥドゥドドドドドドドオオオオ!


 押し込み式の引き金を射撃すると、

 保弾板特有の独特のきつつきのドラミングのような射撃音を立てつつ7.7mm機銃弾がはじき出されていく。


 それはゆっくりとした足取りでこっちに迫る獣の王に次々に命中する。

 すると、キンッ、カキンッ! と耳障りな反跳音。


 当然だ。


 20ミリで効かない化け物だ。チハたんの直撃よりも威力があるはずの二個重ねの九九式破甲爆雷ですら、擦り傷程度。


 そんな敵に、九二式重機関銃の7.7mmの豆鉄砲が効くはずもない。


 だから、ほぼ無敵の獣の王は、まったくの余裕をみせて悠々とこちらに向かって来る。

 そして、鬱陶しそうに首を振りながらも、ゴルドの大穴の底──その中央に辿りつきくと、ふと……上を見上げた。


 かの遥か頭上に見える明るい空を。


 千年クラスの封印の果てに見る明るい空を──……そして、その先に見える無数の殺戮を夢見て、一瞬止まる。




  行くか、留まるか、




『ギ……』


 ……え?

 そんなの決っているって?

 留まる理由なんて一つもないって?


「あぁ、そうだろうね」


 ニヤリ。

 私は奴の思惑見透かしたように笑う。


 そうさ。


 本来ならば、封印されしこの大穴に、このバケモンのが留まる理由は一つもない……いや、ないこともなかった(・・・・・・・・・)



 ──ジロリ。



「だよねー」


 歩みを止めた獣の王が、視線を落としたかと思えばそのまま私と視線を合わせた。

 まるで、「世界の前に貴様からー」と言わんばかり。


「…………はっ、そう来なくっちゃー」


 上等ぉ。


 そして、

 そしてその時、その一瞬、


「その刹那の隙を私は待っていた!」


 そうさ、待っていたんだよ。


 だから、豆鉄砲で撃った。狙った、挑発した。

 それもこれも、こうして「面ぁ、貸せやぁぁぁあ!」と、そう言えば絶対に足を止めると思ったからだよ!!


 だから、私は笑う。

 そう。勝利の笑みを浮かべて、ニヤリと笑う。


 あとは……。

 ──そうさ、あとは死ねっ。


 今すぐ死ねッ!!




「今更、封印なんて生ぬるいこと言うわけねーだろ」


 ファッ◯・ユー


 ──死ね。





  ズガーーーーーーーン!!





 直後、私が中指を立てると同時に頭上が明々と光った。

 その音と光と衝撃に獣の王が上を見上げたまさにその瞬間ッ!




 その巨体が爆裂した。

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