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第47話「九九式破甲爆雷」

「いやいやいや。待て待て待て!!」

「おー、似会う似合う」


 ぴったりだねー。

 パチパチパチ♪


「ど~こがじゃあ! つーかなんじゃこれ(・・)はぁぁぁあ!」

「なにって? 紐?」


 飼い犬みたいに首のあたりにある紐をプラプラさせて、地団太を踏むルーフデス。


 むー。

 ある程度拘束を解いてやり、動きの自由も確保してやったのに、この言いぐさ。


「そりゃ、逃げないように紐くらいはつけるに決まってるでしょー」

「いや、紐って! 我は犬か!」

「犬のほうがいいなー」


 あっちは癒されるし、可愛い。

 口の悪い、硬いガキはいらね。


「そう言う意味ではないわ! 紐もそうじゃが、これじゃこれ(・・)──この紐の先のやつじゃぁぁあ!」


 あーん?

 これ(・・)ぇ?


「──あー『九九式破甲爆雷』のこと?」


 ルーフ・デスのいうこれ(・・)とは、コイツの首の前後にぶら下げておいた日本軍の対戦車兵器、九九式破甲爆雷のことであった。


 投げてくっつけて戦車の装甲を爆破する兵器だね。

 亀のような見た目をしているが、強力なくっつき磁石付きの爆弾で、威力は折り紙付きだぜー。


「そうじゃ! それじゃ!! なんじゃぁぁあ破甲(・・)爆雷って……こ、こわぁぁ! 殺意マシマシで我の装甲ぶち抜く気満々じゃねーか!」


 そりゃそうでしょ、

 そのための対戦車爆雷だ。


「しゃーないじゃん、地下に降りるんだし。いざって時に両手や足が使えないとアンタも危ないっしょ?」

 さすがに全身グルグル巻きで連れ歩くわけにもいかないしね。

「その代わり、逃げたら紐が伸びて、ピィン♪ と発火栓が抜ける仕組みじゃねーか!」


 それはそう。

 あとはそのままボーン!! と、ね。


 装甲20mmをぶち抜く爆薬でなら、いかにドラゴンの装甲が固くとも、沈黙させられるであろう~。


「いや、沈黙させられるであろう~……──じゃねーんだわ! こっわ!! 沈黙どころかそのまま永遠に眠りについてしまうわーい!」

「だから、そのつもりで仕掛けてるんだから当然でしょ」


 あれだけのことしといてなんで無条件で信用してもらえると思ってんだ、このガキは。

 だいたい、子供の姿してるけど、正体は5m級ドラゴンでしょうに。


「ぬー……まさか、リアルで首輪爆弾つけられるとは思わなんだぞ」

「逃げなきゃ大丈夫よ、いいから早く乗って──」


 なんかぶつぶつ言ってるけど、無視無視。


 それよりも、ルーフデス用にチハたんには追加装備の『歩兵用掴み綱』をつけて置いた。

 さすがにこの斜面とスロープをむき出して降りていくのは危険すぎる。

 ほかにも暗そうなので暗視装置を一応。


 なので今はこんな感じ──。


  ブーン……。


 ◇ ◇ ◇


スキル:【せんしゃ】

能 力:任意の場所に召喚可能。

    世界中のありとあらゆる『せんしゃ』(※)が選択できる。


戦 車:九七式中戦車・改


   『改造オプション』

    追加装甲Lv1: 購入済み

    補助装甲(シュルツェン)Lv1:  5ポイント

    増槽50L  :  5ポイント

    土嚢     :  2ポイント

    鉄条網    : 購入済み

 (追加)歩兵用掴み綱: 購入済み ← 新規で買ったよ!


 (追加)歩兵用装備 :100ポイント(NEW!)


    対空機関銃  : 購入済み

    煙幕発射器  : 15ポイント

    排土板(ドーザーブレード)   :  3ポイント

    拳銃穴(ピストルポート)    :  2ポイント

    新型砲塔Lv1: 購入済み

    新型砲塔Lv2: 65ポイント

    暗視装置   : 購入済み ← 新規で買ったよ!

    アンテナ強化 : 購入済み

    牽引トレーラー: 購入済み

 (追加)工兵器材  : 購入済み


備 考:(※)表記はカタログあり。


 ◇ ◇ ◇



 また、なんか追加のオプションが増えたね。

 そして、またまたポイントがどんどん消えていくぅー。


 確かに溜まるのも早いけど、消費も激しくてなかなか戦車の買い替えとかできないねー。

 まぁ、チハたんで十分なんだけど。


「っていうわけで、さっさと乗る!」

「むー。こ、ここに掴まればいいのか? ぅぬぬー、我も内がいいのー。外が見えるとちょっと怖いぞ」

「やだよ。中に乗れるのは身内だけだよ」


 そう言う意味ではルルはとっくに身内だね!


「つーか、外が怖いって、あーたドラゴンでしょうが。それに中で竜化とやらをされても困るし」

「ぬー。そう言われるとしょうがないのー」

「でしょ? ま、アンタは道案内もするんだし、外の方がいいって。んじゃキリキリ乗った乗ったー」

「わ、わかったわい」


 しぶしぶ砲塔の紐に捕まったルーフデス。

 それを見届けてから、私は車内無線でルルに準備オッケーを出す。


「アローアロー。こっちは準備いいよ。ルルはー」

『こっちもー♪』


 ジャキンッ!

 うんうん、前方機関銃準備良しだね!


 よーし、いっちょ奈落の底の見学に行くとしましょうかー!





「戦車、前へ!」




※ ※ ※



 キュロキュロキュロ!



 轟音を立てて地下へ地下へと慎重に降りていくチハたんと私たち一行。

 周囲はドンドン暗闇に落ちていくので、すでに前照灯をつけなければ前が良く見えないほどだ。


「うーわ、くっらー」


 上を見ても天井がなんか遠いし。

 遠近感が狂ってくるほど。


「ここはすでにダンジョンじゃからのー。一見、世界と地続きに見えて、まったくの別の次元じゃ」


 へー。

 それで陽の光が届かないのか。


「魔物が湧くのもそれが所以(ゆえん)じゃと言われとるの」


 あー。どーりで。

 たしかに、こんな不毛の穴倉に、魔物がいるのは変だと思ったけど、その不思議パワーのおかげってことね。


「なるほどねー。アンタ、割と物知りじゃん」

「ふふん! とーぜんじゃ。なんたって、我はドラゴンじゃからのー!」


 んがーははははは!


「屋根を壊すほうのな」

「もう、それええじゃろ?」


 やかましわ。


「それより、これどのくらい下るの? ずっとこのままだとさすがに帰りが心配かも──……」

「さて、どうじゃろの? そろそろだとは思うが……」


 身を乗り出したルーフデスが下を覗き込むのに合わせて、私も肩越しに覗き込む。



  ……ひゅぉぉぉぉお。



「ふーむ。もう少しといったところかの」

「見えない」


  カンッ!


 電源を入れて、砲塔備え付けの数百カンデラ程度のチハたん用の探照灯で地下を照らすが……まさに漆黒の闇って奴だ。


 暗視装置も効かないし……。


「無駄じゃ無駄じゃ。ダンジョンでは通常の物理法則は通じんぞ」

「マジかー」


 空気はあるんだし、石ッコロも落ちて行ったから見えない壁があるとかではない様子。

 ただ、不思議なことに、視野の先が閉ざされているのだ。……意図的に視界が制限されている感じかな?


(なんていうか──ローグライク系ダンジョンでいうところの、先の通路や部屋が見えないみたいな感じにも見えるねー)


 ん?

 だとしたら……。


「じゃ、なんでアンタはもうちょい先だってわかるのよ?」

「何となくでじゃ。風が底にあたる気配があるのー」


 ホントにぃ~?


 ちょっと疑わしいけど、他に判断材料もない。

 ルーフ・デス曰く、もう少しだというなら、信じるほかない。


「オマケにほれ、見い」

「んー?……げ!!」


 な、なんじゃこりゃ!


「み、道が……」

「ふむ。人ひとりが精々通れる程度じゃの」


 ん、なんてこった。

 ルーフデスの言う通り、通路が制限されている。


 少し転回できるくらいに広くなったかと思えば、その実──先をみると、なんと急に先細りしていくスロープがあった。

 幅は……人がギリギリ立って通れる程度だ。


 まるでこれ以上先にチハたんを行かさないぞーとでもいう意思を感じるほど。むしろ、帰れとでも言いたげに感じた。


「まいったなー。……これじゃ先にいけないや」


 今回のクエストは調査。

 なので、底まで行ってさらに異変の有無を確認せねばならない。見てきました──通れませんでしたー……では、通らない(・・・・)


「んー。いっそ、こんなスロープならベヒモス通れないし、いなかったでよくない?」

「アホじゃのー。ベヒモスなら、多少の手がかりがあれば壁くらい上りよるぞ? そして、我の勘では、ここは当たりじゃ」


 げー。


 ってことは、評議会が懸念していた通り、ここがベヒモスの発生源ってこと? 他の候補地もあるって言ってたけど、最初から当たりをつけていたのかー。


「一応、ギルドでも危険視はしとったみたいでの。定期的に駆除隊を編成して送っておったみたいじゃぞ。……まぁ、せいぜい入口までじゃろうがの」

「それはそう」


 だって、ここ、降りるだけで精いっぱいだもん。


「うーん。ならここから無差別に砲をぶっぱなすとかどうかな?」


 いい感じにスロープが下を向いているし、俯角(ふかく)(※大砲を下に向けること)は取れそうだ。

 ベヒモスがいるか知らんけど、いたら100発くらい撃てば当たるでしょ。


「底に横穴があったらどうすんじゃ」

「む、たしかに……」


 ズルはだめらしい。

 しゃーない。


「降りるしかないかー」

「そういうことじゃ! ほれ、我を解放せい。さすれば矮小な人間に我が力を思い知らせてくれるわ! 具体的には、紅蓮の炎で貴様ごとこのダンジョンを焼き尽くしてくれようぞ──かーっかっかっか!」


 げしっ。


「んだぁぁああああああああああああーーーーぁぁ……?!」


 あ、しまった。

 つい、イラっときて……って、おーーーーーーーーい!


「ルーーーーーーーーフ・デーーーーーーーーーース!!」


  きらーんっ♪


 闇に落ちていくルーフ・デス。

 彼女との思い出がよみがえって……こないな。


「なんかいってるよー」

「あ、ほんとだ」


 ずずーん! とか、下の方で落着音がして、土埃が立つのが見えた。


 どうやら、20mくらいっぽい。

 これならいけるかも。


「(って、アホかーーーーーーーーー! 死ぬかと思ったわ!!)」

 生きとるやんけ。

「やー。めんごめんご! 燃やすとかいうから、つい」


 てへ。


「(冗談に決まっとろうが……こ、こわぁぁ! 貴様、こわぁぁ!)」


 わははは。

 TPOを弁えろといったでしょ。


 しかし、さすがにアイツを一人放置するわけにもいかないな。

 首輪の紐も思わず手放しちゃったし、自由にさせるのはよろしくない。


「しかたない。ルル──器材とって」

「これ? こーへーきざい?」

「うん。それそれ。ウィンチ(巻き上げ機)だよ」


 役に立つかなと思って、トレーラーの中にあった奴をチハたんに取り付けて置いた、これが今役立つときが来たっぽいね。


「あとは……チハたんを置いていく以上、いくつか武器がいるな」


 調査なので戦う必要はないんだけど、護身武器はいる。

 ベヒモスがいる可能性を考えると、聖剣エクスカリバー……もとい『刺突爆雷』は当然として、自衛火器なんだけど。


「んー。機関銃だけじゃ心もとないなー」


 私自身はいつもの刀に拳銃。

 四四式騎兵銃として、一応対空機関銃の九七式車載機関銃もウィンチで下に降ろそう。


 だけど、7.7mmの豆鉄砲がベヒモスだのルーフ・デスに聞かなかったので、ほとんど気休めだ。

 でも、他に武器って言ってもなー……。




 あ、まてよ、

 そう言えばさっき、ステータスを見たときに、なんか追加されてたな。





「あ! あったあった!」

 これだー。


「なにー?」

「うん! いいの見つけた!」

 具体的には追加オプションの……。



 (追加)歩兵用装備 :100ポイント(NEW!)



 これだ!


「ちょっと高いけど、今度のことも考えたら、必要だね」

 どうやら掴み綱を追加したことで、タンクデサントや随伴歩兵用のそれらも戦車に追加できる仕様になったらしい。

 チハたんの拡張性やべーな。


 『鉄条網』→『歩兵用掴み綱』→『歩兵用装備』……かー。


 もしかして、他にも装備を増やしたら、でてくるのかな?

 そういえば工兵器材も、トレーラーを追加したら出てきたんだっけ。

 その辺の検証も今度するとして──……。


「よしっ! 奮発して、買うぞー!」

「おー!」


 んよぉぉぉし、行けっ!

 我がポイントよ。


 100ポイント使用して、

 『歩兵用装備』の追加購入じゃぁぁああ!



  ドーン!



「で、でたー!」


 おぉぉ!

 これが歩兵用装備!


 戦車の後部にデーンと追加されたのは、器材箱。

 それも結構でっかい奴がまるまる一個。


「ほほーう。これがかの有名な三八式歩兵銃かー」


 中を開けると著名なあの銃がでてきた。

 美麗な仕上げだけど、口径は6.5mmの豆鉄砲ってやつだ。

 そのかわり命中率の良さと、反動の軽さはぴか一らしい。


 他にも軽機関銃に手りゅう弾多数に……。

 他には、


「ながせーこれ(・・)もっていく?」

「ん? それって──……うぉぉ!! で、でっかー!!」



 な、な、な、




 なじゃそりゃぁぁぁあああああああああああああ!!





 なんと、ルルちゃんが「これー」と掲げているのは、超巨大な銃……っていうか、大砲としか表現できない、ビッグでロングなライフルがあった。


 その名も、





「きゅ、九七式自動砲じゃん……!!」

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